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僕の勝ちごはん:簡単なのに料理上手と思われる不思議な「タリアータ」

スポーツキャスター 荻原次晴さん:爽やかでウィットに富む人柄で幅広い層からの支持を受けている荻原さん。世界各国を転戦する中で出会った料理をご自宅で再現してみたり、友人をフルコースでおもてなしするのも大好きとのこと。現役引退後も持ち前のチャレンジ精神で、さまざまな活動に挑戦される荻原さんに「勝ちごはん」を伺いました。

取りあえず、肉を食っておけば元気!という発想

現役時代に食事の面で気をつけてこられたことはありますか?
「今の選手は栄養士などの専門家の指導を受けながら、結果を残すための食事を意識していると思うんですが、僕らの時代はまだまだ精神論的な発想が残っていて、勝ちたいならトンカツ、飛びたいなら鶏肉、粘りを出すためには納豆と良く言われていましたね。『取りあえず、肉を食っておけば元気!』 みたいなそういう時代でした(笑) よく考えると、激しいスポーツの前には胃に負担がかかるようなものは、極力食べない方がいいんでしょうけれど、『お肉=パワー』みたいな発想が残っていたんですよね。

ノルディック複合の場合、ジャンプする上で瞬発力や跳躍力を生み出すためには筋肉が必要だが、どうしても重くなってしまい飛べなくなってしまうというジレンマがありましたね。ジャンプだけの選手と違って、僕らはクロスカントリーもあるので持久力も必要です。そういう意味でバランスのよい食生活は心がけていましたね。ただ、時にはガッツリした脂っこいものも食べてましたけどね。やっぱりおいしいですよね(笑)

現役時代は特にエネルギーの源になる炭水化物をしっかり食べてましたね。特にクロスカントリーは持久力が勝負で、マラソンよりもきついと言われることもある競技です。食べるのもトレーニングのひとつだと思って、とにかく量を食べてましたね。子どもの頃なんかは食事の取り合いしていましたし、夕飯のために炊いたご飯をたらふく食べるので、釜の飯がなくなるなんてしょっちゅうでした(笑)」

まずやってみる!好奇心が新しいものを知るキッカケに

荻原さんにとっての「勝ちごはん」とは?
「勝ちごはんといえるのかわかりませんが、『タリアータ』ですかね。
僕は標高1200メートルの山の中で育ちました。鮮魚に恵まれていたわけでもないですし、草津は火山の街でもあるので、畑が広がっていて農作物が豊かに収穫できるという場所でもありませんでした。そんな田舎で、高校を卒業するまでは母親の料理しか知らずに育ったので、大学に入学するために東京に出てきた時や、合宿や遠征で海外に赴いた時には、色々なものを食べて、食の知見が広がりましたね。

大学卒業後から一人暮らしが長かったので、自炊は好きですね。引退してからは自宅に友達を呼んで、おもしてなし料理をサーブするのも好きですね。全部用意してからみんなで食べるスタイルではなく、レストランのように温かいメニューは温かいまま食べて欲しいので、前菜からフルコースで提供することもあります。だいたいお酒に合うつまみみたいな料理が多いんですけどね(笑)

おもてなしの時によく作っていて、人に喜ばれるのが『タリアータ』ですね。海外遠征に行って初めて食べた料理なんですが、決して高級でもないし、簡単なのに人が集まった時に出すと反応がいいんですよね。焼いた肉を薄切りにしてルッコラを添えて、お肉とルッコラを一緒に食べるのが最高ですね。ちょっと高級感を出すなら、お肉の上にパルメザンチーズをスライスして散らしたり。脂身の少なめの部位にして、たっぷりのルッコラと食べることでヘルシーですよね。ちょっとだけ料理上手と思われる不思議なメニューですね(笑)それに外国の料理って下ごしらえがない豪快なものが多いので、男性にも向いている気がするんですよね。

ヨーロッパ、特にイタリア遠征に行った時には、オリーブオイルやチーズ、パスタなんかを山ほど買って帰ってきてました。現地のレストランでおいしいメニューがあれば、キッチンに入ってスタッフにレシピを訊ねることもよくありましたね。自宅に帰ってきてから再現して作ってみるんです。色々試行錯誤するのも楽しいですし、似た味になると嬉しいですし、安上がりですよね。何より自分にとって新しい発見がある。

決して高価なものを食べているわけではないですが、まず食べてみることが大切ですよね。何事もまずやってみること。現在も登山をしたり、サーフィンをしたりと新しいことへのチャレンジは続けています。食に対しても好奇心は旺盛でありたいですね。」

簡単なのに、おしゃれな一皿。そして、実は健康的なお肉レシピ

スポーツ栄養アドバイザー石川三知さんの栄養解説
“タリアータ”とは、薄く切った、と言う意味のイタリア語です。焼いて薄切りにした肉料理全般を指します。その中でも、最もポピュラーなものが荻原さんもお薦めの「牛肉のタリアータ」。このレシピは、牛肉の美味しさと、栄養素の優れた部分を存分に生かして頂くことが出来る、運動をする人はもちろん、健康的な体作りを目指す方にぴったりのレシピです。

牛肉の中でも、ももやヒレの部位は脂肪分が少なくヘルシー。しかも、エネルギー産生や体作りに欠かせないビタミンB群も多く含まれます。また、脂質代謝と関連性の高いL−カルニチンも同様です。

更に、タリアータの調理方法には、身体に嬉しい理由がまだまだあります。

  • 生でもなく加熱し過ぎでもない→たんぱく質の消化吸収が良い
  • 塊のまま焼く→美味しさが逃げない

あくまでも平均値となりますが、国産牛と輸入牛では100g当たりのエネルギーやタンパク質量に差(脂肪量の関係で国産牛がエネルギーが高め)があります。単に選ぶ部位だけではなく、体調や他のレシピとの組み合わせで選ぶ肉を変えてみるのも良いですね。もちろん、荻原さんが仰っているように、緑の野菜もたっぷりと一緒に召し上がって下さい。

おすすめのレシピはシンプルだけど、存在感抜群!塊り肉はなかなか難しそう、と思わずに試してみて下さい。旨みがしっかりと凝縮されて赤身の部分でも豊かな味わいです。付け合わせの野菜は、食べ慣れているものでOK。たっぷり頂きましょう。

石川三知さんのおすすめレシピ

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スポーツキャスター 荻原次晴

幼少の頃から双子の兄 健司と共にスキーを始め、2人で切磋琢磨しノルディック複合で日本を代表する選手となる。1994年からワールドカップに参戦。1998年長野オリンピックでは個人6位、団体5位と入賞を果たす。長野オリンピック終了後引退を表明。ウインタースポーツ普及をライフワークとし、メディアや講演などの活動を通してその楽しさを伝えている。

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