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インタビュー

梅宮アンナさんが語る、父・梅宮辰夫さんの「家族へ遺した秘伝レシピ」

芸能界屈指の料理上手として知られた梅宮辰夫さん。生前にレシピを書き留めた20冊以上の料理帖から、娘・梅宮アンナさんが選りすぐったレシピを掲載した『梅宮家の秘伝レシピ』が11月15日に発売されました。監修を担当したアンナさんに、この本に込めた思い、父から受け継いだレシピノートによって目覚めた、料理についてのお話を聞きました。

父が料理する姿を見て、料理恐怖症に

――今回、お父さまである梅宮辰夫さんが書き残したレシピノートをレシピ本として発売することになったきっかけを教えてください。

父は、亡くなる直前までレシピノートを書いていました。「終活的なことはやっておいてね」と伝えていたのですが、亡くなった後に、いつも書いていたノートを開いてみたらお料理のことがぎっしり書かれていて、「うそでしょ!?」と声が出ました(笑)。きっと父にとって、レシピを書いている時間はすごく幸せな時間だったんですね。体がしんどいからこそ、ストレス発散のように書いていた気がするんです。父は料理の本を出したことがなかったから、「もしかしたら本を出したかったのかな」と感じました。このレシピを本にして、みなさんに見ていただけたら父は喜ぶんじゃないかなと思ったのが本を作ったきっかけです。

――このレシピ本の中にも書かれていますが、アンナさんが“お料理恐怖症”だったというのが意外でした。

私の場合、お料理が嫌いなのではなくて恐怖心があったんです。もちろん、原因は父です(笑)。小さい頃の私は、食材は築地にしか売っていないと思っていたんです。父に「よし! ご飯を作るぞ! お前も一緒に買い物に行くか?」と連れていかれるのは必ず築地。父は、食材だけではなく、キッチンペーパーやビニール袋まで築地で購入していました。そして、食材を調達したら、そこから3日ほどかけて料理を作るんです。そんな父の姿をずっと見てきたので、「お料理ってすごく大変!」というイメージができてしまったんです。中学生の頃、お友達の家に遊びに行き、友達のお母さんが作る、いわゆる家庭料理の夕飯を見て、「うちと全然違う」と思ってびっくりしたのを覚えています。

――お料理は大変! が恐怖に繋がっていたんですね。その恐怖症を、『梅宮家の秘伝レシピ』を作るにあたり克服されたんですよね?

お料理って、実は難しくないということがやっとわかってきました。私は、父のごはんの炊き方によく文句を言っていたんです。「30分も浸さなくてもおいしくできるよ! そんなことに時間を費やすなんて信じられない!」と。父は、「何を言ってるんだ。お米というのは、ちゃんと水分を含ませたほうがふっくらするんだ」と言っていました。

父が亡くなった後にふと、「お米って、こだわったらそんなに味が変わるのかな?」と思って、土鍋で炊いてみたんです。そしたら、おいしいし、おこげができるのがすごく楽しくなって、炊飯器を使わなくなりました。タイマーをセットしたら、お米を水に浸して、30分後に火をつけるのが楽しいんです。大変だと思っていたことを、実際にやってみたら「楽しい」と感じるようになりました。もっと早く始めたらよかった、と思うくらいです。

――お父さまのレシピ本には、これまでお料理をしたことがない人や興味がなかった人を目覚めさせる力があるかもしれませんね。

私がそうだったからわかるんですが、お料理ができる人は、料理本を見ると書いてあることの意味が分かると思うのですが、お料理をやらない人からすると料理本って何を言っているのかがわからないんです。「お塩少々」の「少々ってなに?」って (笑)。

そういう方にとっても、この本が料理をはじめるきっかけになったらいいなと思っています。私もこれまで、スーパーに行っても、何を買って何を作れば良いかがわからなかったんです。少しずつ料理に挑戦するようになって、作れるようになったら生活が変わるんだろうなと感じています。

父・梅宮辰夫さんとの思い出が詰まったレシピ

――お父さまが遺されたレシピノートには、何品のレシピが載っていたのでしょうか。

2000以上のレシピがありました。そのうち、半分以上は私が食べたことがないものだし、父も全部を作ったわけではないと思います。外食も大好きだったので、お店で食べると写真を撮って、お店の人に作り方を聞いていたりしたので、そういうものも入っているんじゃないかな。父のレシピを見ていると、作ってみたいなという気持ちになるんです。そうすると、もっとちゃんと聞いておけばよかったなと思うことがたくさんあります。

――作ってみたいなと思ったレシピはなんですか?

レタス丼」です。母はよくリクエストをしていたけど、私は1度しか食べたことがないんです。なのに、父がいなくなってから無性にレタス丼が食べたくなって、ちゃんと味わっておけばよかったなと。実は、3日前に自分用に中華鍋を買ったんです。それが嬉しくて、嬉しくて(笑)。その中華鍋で「レタス丼」を作ろうと思っています。シンプルなお料理だけど、お水が出ちゃう前に引き上げないといけないからササっと作るとか、お醤油をたらすタイミングとか意外と難しいので、父の味を再現できるように頑張ります。

――2000品以上もあるレシピの中から、『梅宮家の秘伝レシピ』に掲載するレシピはどのようにセレクトしたんですか?

編集の方から、「アンナさんの思い出があるレシピじゃないと、この本は活きない」というお話をいただいたので、私の思い出に残っているもの、印象深いものを選ばせてもらいました。あと、「父は喜ぶか、喜ばないか……どう思うか」ということをベースに決めました。

――お父さまが作ってくれたお料理の中で一番好きなもの、思い出深いものを選ぶとしたら?

中学、高校の6年間、父が作ってくれたお弁当です。父が作るお弁当はのり弁で、おかずは牛ヒレステーキと卵焼き、焼きたらこ、紅ショウガ。6年間、一度もこの内容が変わることはありませんでした。人は、どんなにおいしいものでも、毎日って食べられないものです。ある日、隣の席の子のお弁当を見たら「イシイのミートボール」が入っていて、「食べてみたい!」と思ったんです。思わず、「私のお弁当とトレードしない?」って聞いたら、すごく喜んでくれました。次の日は後ろの席の子、また違う子……と、毎日学校の誰かとトレードして、最後は先生ともトレードしていました。一生食べなくていいと思っていたくらい飽きちゃっていたけど、父が作ってくれたお料理と言えば、お弁当が浮かびます。

――のり弁のこだわり方がすごいですよね。

父の作るのり弁は、白米、お海苔、白米、お海苔、白米、お海苔と3段のミルフィーユのようになっているんです。お海苔は、築地の「丸山海苔」と決まっていて、それを1枚をペタッと置くのではなく、一口サイズに切って、しょうゆをつけて1枚ずつごはんの上に並べていくんです。お箸を入れても、ぺろっと海苔が1枚めくれないように、という想いが詰まった愛情弁当なんです。

パパの愛情のり弁

のり弁

材料

温かいごはん…適量
焼きのり…適量
しょうゆ…適量

作り方

1.お弁当箱の下半分に温かいご飯を敷き詰める。

2.焼きのりを2cm四方に切り、1枚ずつしょうゆをつけて、ごはんの上に端から並べる。

3.もう一段、同じにようにごはんと焼きのりを重ねる。

だし巻き卵

材料

卵…3個
だし汁…大さじ4
みりん…大さじ1
薄口しょうゆ…小さじ1と1/2
サラダ油…適量

作り方

1.温かいだし汁にみりんを入れて混ぜる。

2.ボウルに卵を割りほぐし、1と薄口しょうゆを加えて混ぜ合わせる。

3.卵焼き器を熱して油を薄くひき、2を1/5量流し入れて広げ、半熟状になったらふくらみを菜箸でつぶし、端から巻いていく。

4.3の卵を片側に移動させ、空いているところにペーパータオルで油を薄くひく。空いているところに卵を3と同量流し入れて同じように巻く。

5.34を数回繰り返して焼き、食べやすい大きさに切り分ける。

梅宮家で受け継がれていくレシピ

――本の中の、「子どもの頃から自分の食べたいものは自分で決めて、そこになければ自分で調達する」スタイルという“梅宮家のちょっと変わった食卓”についてのお話が印象的でした。

父は、「これを作ったから食べなさい」という親ではなかったんです。自分の好きなものを作っているから楽しくてしょうがない。家族がそれに賛同しなくても別に良いんです。父と母は食の好みが全く違うので、キッチンも2つあって、お互いが好きなものを作って食べていました。食の好みが合わないのによく結婚できたなと思います(笑)。

――亡くなった後も、「父の味」を食べられるようにレシピを遺してくれたお父さまに対して感じることは?

レシピノートは、元々は私が結婚したときに嫁入り道具として渡されたものなんです。離婚が成立した日に、父から「あのレシピノート返して」と言われて、「使ってないし」とすぐに返したんです。「これが、どれだけすごいものだと思っているんだ」と言われたけど、あの時の私には理解できていなかった。父がいたときは料理をしようと思わなかったし、作ることもなかったから。もし今、父が生きていたら、土鍋でご飯を炊いている話で盛り上がれたんだろうなと思ったことがあったけど、父がいなくなったからこそ私は料理をはじめたんだと複雑な気持ちになったことがあります。もっといろんなことを聞いておけばよかったなと思います。歳を重ねてきたからこそ気づけたレシピノートの重みを感じています。

――娘の百々果さんは、どう思っていますか?

本を見せたら、「これ作りたい」と言っているレシピがいくつかありました。百々果は、父の次にうちの家族の中で料理をするんです。海外で生活しているので、メキシカンとかフィリピンの料理とかも得意で作るんですよ。父もエスニックが好きだったから似ているのかも。

――お母さまはどうですか?

母は変わらないですね。あくまでも食べる側のスタンスを変えません(笑)。父は、韓国料理も大好きでよく作っていました。ママがよくリクエストしていたパジャンを表紙に載せたんです。母がお友達とパリに旅行に行くときにも作ってもらって、ジップロックを何重にもして持って行っていたものです。

――今、料理に目覚めたアンナさんを見て、お父さまはどう感じていると思いますか?

父は、「おせーよ! 俺が死んで分かったの?」とか、そんな感じのことを言ってるんじゃないかな。素直じゃないので、褒めてくれるかわからないですね(笑)。

でも、父が大事にしていた真鶴の家に私が住むことになったことは嬉しがっているんじゃないかなと思います。父が使っていたキッチンで、今私が料理をしているのも不思議です。今回、父が遺してくれたレシピノートが本になることになってから、なんだか、いつもそばにいる感じがするんですよね

(TEXT:上原かほり)

梅宮家の秘伝レシピ』(主婦の友社

「お料理初心者の方にも簡単に作ってもらえるもの、真似してもらいたいものを選りすぐって掲載しました。私も、少しずつ練習をしています。この本を読むと、梅宮家が垣間見れると思います。そして、ぜひ、好きな人や大事な人、家族やお子さんに父の料理を作ってあげてもらえたら嬉しいです」(アンナさん)

遺言書は残さず、2000品以上のレシピを書き残した梅宮辰夫さん。そのレシピノートを受け継いだ梅宮アンナさん。『梅宮家の秘伝のレシピ』は、ただのレシピ本ではなく、梅宮家の歴史がたっぷり詰まっています。親から子へ、食を通じて与えられる愛情の深さを感じることができる1冊です。

梅宮アンナ

モデル・タレント。1972年8月20日生まれ、東京都出身。O型。父は男優の梅宮辰夫。母はタレントの梅宮クラウディア。『JJ』の看板モデルとして活躍後、女優に転身。1994年のドラマ『カミング・ホーム』で女優デビュー、親子共演を果たす。

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