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コラム

「こづゆ」や「ざくざく」が定番!お雑煮を食べない”餅なし正月”を楽しむ地域が日本にあった

【日常酒飯の「つまみめし」レシピvol.9】「お酒の締めにお米を食べようとすると、お腹がいっぱいで食べられない」。そんな声を聞くことがあります。ならば、お米を食べながら、お酒を楽しむのはどうでしょう?思わずお酒が呑みたくなるようなお米料理。つまり、「つまみ」になる「めし」。名付けて「つまみめし」。お米(ごはん)とお米(日本酒)のペアリングで、楽しい“日常酒飯”の食卓に。お酒の肴になるだけでなく、子どももおいしく食べられる「つまみめし」を、お米ライター柏木智帆がお米のコバナシとともにお届けします。

お雑煮を食べない“餅なし正月”

夫と結婚して福島県会津地方に住み始めましたが、最初の正月を迎えたとき、お雑煮を食べる慣習がないことを知って驚きました。

関東出身の私は、大根や人参、里芋などを入れたすまし仕立ての汁に、焼いた角餅を入れて三つ葉や柚子の皮などをのせたお雑煮を食べるのが正月の定番でした。そして、日本各地でそれぞれお雑煮のつゆが味噌仕立てだったり、魚介を入れたり、餅の形が丸かったり、餅を焼かずに煮たりと、定番の味が違うことも見聞きしていました。しかし、まさか正月に餅を食べない地域があるとは思ってもみませんでした。

会津地方の「こづゆ」と「ざくざく」

福島県会津地方の正月の定番のおつゆと言えば、お雑煮ではなく「こづゆ」です。こづゆに欠かせないものは、玉子ボーロ大の大きさの「豆麩」と呼ばれる焼き麩と、干し帆立の貝柱。毎年12月上旬頃からスーパーに並び始めます。ちなみに、豆麩や銀杏、干しキクラゲや干しワラビなどの具がセットになった、「こづゆキット」のようなものも売っています。

他の具材は家庭ごとに違います。たとえば、義母のこづゆは、里芋、人参、大根、椎茸、キクラゲ、姫竹、ちくわ。義母の母(義祖母)のこづゆは、義母と同じ食材に、糸こんにゃくとウドも入っていました。ちなみに、干し帆立の貝柱を入れない場合は、こづゆではなく「ざくざく」と言うそうです。

「こづゆ」という名前からは汁物の印象を受けますが、「お平(おひら)」と呼ばれる平たい朱色の会津塗の器に少量のつゆとたくさんの具が盛られているので、汁物というよりは汁気の多い料理という印象です。

餅を楽しむのは正月だけじゃない!

正月には餅を食べませんが、年末に鏡餅を作る時に食べるのが「汁もち」。その名の通り、つき立ての餅を汁に入れた料理です。義実家では「汁もち」と呼んでいますが、他の家庭では「つゆ餅」と呼ぶようです。

汁もちもつゆ餅も「醤油仕立ての汁」である点と「つき立ての餅」を入れる点は同じですが、家庭によって具材が違います。ある家庭は、鶏肉とごぼう。他の家庭は、鶏肉とごぼうと三つ葉。一方で、義実家では、油揚げと大根だけ。聞き回ってみると、鶏肉とごぼうの組み合わせのほうがポピュラーで、義実家以外はほとんどの家が「つゆ餅」と呼んでいました。義実家の近隣の集落では、名前はつゆ餅でありながらも、鶏肉は使わずに油揚げと大根と、たまにごぼうという家庭もありました。

先に説明した「こづゆ」は具の種類が多いので作るのは少々手間がかかりますが、「汁もち」の材料は、餅、大根、油揚げの3つだけ。味付けも出汁と醤油だけで、非常に手軽で簡単です。

お雑煮よりも手軽な「汁もち」

年末以外にも、さなぶり(田植えの終わりを祝う行事や食事のこと)や、かっきり(稲刈りの終わりを祝う行事や食事のこと)、節句の時など、1年を通して餅をつく機会は多く、その時には決まって汁もちを食べるのが義実家の定番です。

汁もちを作る時は必ずつき立ての餅を使っていますが、切り餅しかないという場合は、焦げないように弱火でじっくりと焼いてから汁に入れ、軽く煮てから食べても良いと思います。ちなみに、試したことはありませんが、切り餅を水に入れて電子レンジにかけるとつき立てのような餅ができるそうです。正月の切り餅が余ったらぜひ普段の食事で作ってみてはいかがでしょうか。

残った汁もちをあとで再加熱して食べようとすると餅が溶けて汁がどろりとしてきます。見た目はイマイチかもしれませんが、これがまたおいしい!私も夫もどろりとした汁もちをおかずに白ごはんを食べるのが好きで、汁もちをわざと残しておくようにしています。

柏木智帆

お米ライター。元神奈川新聞記者。お米とお米文化の普及拡大を目指して取材するなか、お米農家になるために8年勤めた新聞社を退職。2年にわたってお米を作りながらケータリングおむすび屋を運営した。2014年秋からは田んぼを離れてフリーランスライターに。お米の魅力や可能性を追究し続ける、人呼んで「米ヘンタイ」。

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