食と健康のエキスパート・管理栄養士の藤橋ひとみさんが「腸活」に関する豆知識をお届けする連載。「腸」は美容・健康の鍵を握る臓器。様々な心身のトラブルの解消のために日々の食生活の中で継続して実践できるメンテナンス術を分かりやすくご紹介していきます。
健康志向の高まりから、大豆ミートやソイプロテインなどさまざまな大豆製品が出回りはじめ、注目を集めていますが、最近話題のニューフェイス「豆乳・大豆ヨーグルト」をご存知でしょうか。少しずつコンビニやスーパーなどで見かける機会が増えましたが、まだ試してみたことがない方も多いことと思います。今回はネクストブレイクと私が予想している、豆乳・大豆ヨーグルトの魅力をお伝えしていきたいと思います。
従来のヨーグルトは、牛乳を発酵させて作られますが、豆乳ヨーグルトは名前の通り、牛乳ではなく大豆を絞った豆乳を発酵させて作る食品です。メーカーによって製造方法は異なりますが、主に乳酸菌を使って豆乳を発酵させて作ります。 特に私がオススメしたいのが、最近話題の大豆ヨーグルト。大豆から豆乳を絞ると、食物繊維が豊富なおからが取り除かれてしまいますが、特殊な技術を使って大豆丸ごとから作られる大豆ヨーグルトには、おからの栄養素も含まれているのが大きな魅力の1つです。腸活の際に積極的にとりたい食物繊維をとれることから、美腸ライフ的には大豆ヨーグルトが一推しです。
私がこのように大豆ヨーグルトをお勧めすると、よく質問されるのが栄養価の違いです。従来のヨーグルト、豆乳ヨーグルト、大豆ヨーグルトそれぞれに含まれている、気になる栄養素について調べてみました。まだ日本(文部科学省)の食品成分表には豆乳・大豆ヨーグルトの栄養成分の記載がないため、豆乳・大豆ヨーグルトの売り上げシェアが多いメーカーの商品情報を参照しています。
【100gあたりの比較】
「-」 :データなし
※上記は全て無糖の場合
※従来のヨーグルトは「日本食品標準成分表(2020年版),ヨーグルト/全脂無糖」を、豆乳および大豆ヨーグルトは流通シェアが高い商品(A社, B社, C社)の各社メーカー開示データを参照
上記の表の通り、豆乳・大豆ヨーグルトは、従来の乳製品のヨーグルトと比べて、たんぱく質は同じくらい含まれているにも関わらず、低脂質、低糖質で、飽和脂肪酸、コレステロールが少ないところ、さらに食物繊維が多くイソフラボンが含まれている点が優れていると言えるでしょう。ただし、カルシウムの含有量は劣ってしまいます。アメリカなど海外でも豆乳ヨーグルトが販売されていますが、この欠点を補うためにカルシウムを添加している商品も出回っているようです。[1,2]
豆乳・大豆ヨーグルトは、美腸づくりにおいても強い味方となってくれます。私が考える、美腸ライフにおける3大メリットをまとめてみました。
食物繊維は腸内で有用菌のエサとなり、腸内環境を整えてくれるプレバイオティクスとして働きます。[3]
飽和脂肪酸は、とりすぎると生活習慣病の原因となるだけではなく、腸内環境にもマイナスの影響を与えることが明らかにされています。[4,5]
大豆食品に含まれている注目の機能性成分の1つといえば、大豆イソフラボン。実は骨粗鬆症や更年期症状の緩和など女性に嬉しい働きだけでなく、腸内環境にも良い影響を与える可能性があるという研究報告もあるのです。 [6]
豆乳・大豆ヨーグルトを日々の食生活に取り入れるメリットを知っていただけましたでしょうか。乳成分不使用の食品なので、乳アレルギーがある方も安心して食べることができるのも嬉しいポイントですよね。
味の好みもあると思いますが、複数のメーカーから商品が発売されていますので、ぜひお気に入りのものを見つけてみてください。ご自宅で手作りすることもできますので、気になる方はぜひレシピを検索してトライしてみてはいかがでしょうか。
〈参考文献〉
[1] 文部科学省, 日本食品標準成分表2020年版(八訂),ヨーグルト全脂無糖
[2] USDA, FoodData Central, SILK Plain soy yogurt
[3] D So, et al. Dietary fiber intervention on gut microbiota composition in healthy adults: a systematic review and meta-analysis. Am J Clin Nutr. 2018 Jun 1;107(6):965-983.
[4] Wolters M, et al. Dietary fat, the gut microbiota, and metabolic health - A systematic review conducted within the MyNewGut project. Clin Nutr. 2019 Dec;38(6):2504-2520.
[5] 厚生労働省,日本人の食事摂取基準(2020年版)
[6] Chen P, et al. The bioavailability of soy isoflavones in vitro and their effects on gut microbiota in the simulator of the human intestinal microbial ecosystem. Food Res Int. 2022 Feb;152:110868.
(すべて2022年8月6日閲覧)
※ 記事のメイン写真は記事をイメージして選定させていただきました。
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株式会社フードアンドヘルスラボ 代表取締役。フリーランス管理栄養士として、商品開発やレシピ開発、コラム執筆やメディア出演、コンサルティング等、幅広く活動中。同時に、東京大学大学院にて医学博士取得を目指し、栄養疫学の研究に取り組んでいる。豆腐や豆乳、ソイオイル、味噌など、大豆関連の資格を多数所有し、大豆や腸活分野の専門家として活動する中で、最近は日本人が不足しがちな食物繊維の宝庫である「おから」に注目し、有効活用できる方法を広げる活動に注力している。著書「おいしく食べてキレイになる!おから美腸レシピ(ベストセラーズ)」
●所有資格
管理栄養士、調理師、製菓衛生師、豆腐マイスター、豆乳マイスタープロ、ソイオイルマイスタープロ、おから再活プロデューサー、納豆真打、食育油揚げマイスター、インナービューティープランナー、ほか