世界の食文化に詳しく、大学で文化人類学の講義も行っているジャーナリストの森枝卓士さんに、文化人類学とは何か、世界の食文化の背景にあるもの、などについてお話を伺いました。
食文化についての写真やリポートを発表しているジャーナリストの森枝卓士さんに、世界の食文化についてお話してもらいました。この夏の自由研究のテーマを決める参考にしてみてくださいね。
僕の専門分野は「文化人類学(ぶんかじんるいがく)」と言って、世界の文化のどこがちがうか、なぜちがうのか、を研究すること。
例えばみんなが大好きな「カレー」をひとつとっても、カレーの本場インドと日本のカレーライスでは全然違う食べ物。同じカレーなのに、どうしてこんなに違うのかを研究することで、その国の歴史や文化の違いを学ぶことができるんだ。
同じ日本のなかでもね、カレーに入れる肉の種類が地域によって違ったりするんだよ。例えば関西ではカレーに牛肉を入れることが多いんだけど、その理由がどうしてかわかるかな?
その理由は、関西ではもともと牛の飼育がさかんだったからなんだ。だから、肉といえば牛肉が使われることが多い。逆に関東地方では牛よりも馬が農業に使われていて、明治維新のあと、肉を食べるようになったところでも、牛より短い時間で育てられる豚がふつうになった。だから、カレーのほか肉じゃがやコロッケでも豚肉を入れる家庭が多いと言われているよ。
昔の人が何を食べていたかという食べ物の歴史を知るには、当時の記録が必要になるんだ。だから僕も、自分が子どもの頃に食べていたものを、毎日記録しておいて、今読み返したらどんなに面白かっただろうかと思うことがあるよ。
みんなも、今年の自由研究として、夏休みのごはん日記をつけてみてはどうかな?毎日のごはんを比べてみて
どんな料理をよく食べているか
そして、それはなぜか
外食のわりあいはどのくらいか
なんてことを調べてみると面白いんじゃないかな?
それから、夏休み中に田舎に住むおじいちゃんやおばあちゃんの家に帰省したら、昔の食べ物について聞いてみるのもいいね!自由研究のヒントが見つかるかもしれない。
食文化を知ることは、相手のことをよく知ることにつながるんだ。だから、国内でも海外でも知らない土地に旅行にいったら、その土地ならではの食べ物をまずは食べてみて、疑問に思うことを質問してみよう。
森枝 卓士(もりえだ たかし)
1955年、熊本県生まれ。国際基督教大学教養学部社会科学科卒業。大正大学客員教授。世界各地の食文化についての写真やリポートを発表している。『食べもの記』『世界の食事おもしろ図鑑』ほか著書多数。