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コラム

「お食い初め」も背伸びせず、自分オリジナルのスタイルでいい【おいしい思い出 vol.5】

クックパッド初代編集長であり、自他共に認める料理好き・小竹貴子のエッセイ連載。誰にでもある小さな料理の思い出たちを紹介していきます。日常の何でもないひとコマが、いつか忘れられない記憶となる。毎日の料理が楽しくなる、ほっこりエピソードをどうぞ♪

「お食い初め」はやっぱり良い思い出

写真の整理をしていたら、ふと見つけた次女の「お食い初め」の時の写真。

毎日のドタバタな生活に追われてすっかり忘れていた、赤ちゃんの頃の思い出。プニプニしていた足の裏や、生まれたばかりの頃は、なかなか母乳を飲んでくれなかったこと、夜寝かしつけてもすぐ起きちゃうこと。写真を見ながら当時をいろいろと思い出してしまいました(顔は当然、ニヤニヤとしてしまいます)。

そんなフワフワで小さかった赤ちゃんも、もうすぐ6歳。今では、誰もが通る道ですがプリキュアが大好きで、小さいながらお姉ちゃんに教えてもらい、エンディングに流れる歌に合わせて可愛いダンスを踊ったりする女子力も少しずつ身に付けています。

そして私が寝坊すると朝も起こしてくれる、だけど私が寝坊している次女を起こすと全力で泣きわめく、何とも可愛いおしゃまなお姫さまです。

次女のお食い初めは私オリジナルのスタイルで

ちなみに、お食い初めとはいくつか諸説はありますが、出生後100日の乳歯が生え始めた頃、子どもの健やかな成長を喜び、食べ物に一生困らないことを願い、食事をする真似をさせる儀式のことをいいます。

なんとこの習慣は、平安時代から行われていたとのことで、随分歴史は長いようです。そんな古くからあるお食い初めは、細かく調べていくといろいろな決まりがあるようですが、最近では自分に合うスタイルでお祝いをする家族も増えているのだそう。我が家も完全に私オリジナルな感じです。

写真に写っているお料理は、お赤飯、鯛の塩焼き、かぼちゃの煮物、レンコンのお吸い物、大根なます、お刺身。真ん中にあるのは長女が家の近くにある玉川上水で拾ってきてくれた歯固めの石。おかずはいつも食べているものです。

まだまだ100日だと母乳しか受け付けない時期ですので、この日は食べさせる真似をするだけ。写真はその時の様子のもの。

私が「さ、お食い初め始めましょうか」と言うと、当時4歳だったお姉ちゃんが率先してお箸を持って「ほらほら、ちゃんとたくさん食べて大きくなるんだよ」とか、「ごはんを食べたら、ちゃんと歯磨きをしないといけないんだよ」と、普段私に言われていることを完全コピーをしながら次女にごはんをあげていました。

見えにくいですが、表情もドヤ顔混じりのお姉さん顔。とっても小さな妹のお食い初めの場を誰よりも喜び、盛り上げてくれていたことが私はとても印象的でした。

一生懸命に気合を入れすぎていた長女の時

あ、そういえば長女の時はどうだったかなと、思い出してみると……。なかなか授からない中での念願の子どもだったこともあり、何から何までしっかりとした大イベントに。

まずは郷里の石川県で有名な山中塗の器を作る作家さんに、この日のために器を名前入りでオーダー。鯛もお魚屋さんに頼んで極上のものを取り寄せたり、ほかのお料理も随分前から用意をして、お洋服も購入。当日は一眼レフを使って何十枚も写真を撮ったり、ビデオ録画したりと、気合十分で臨みました。

それはそれでとっても大切な思い出ではあるのですが、長女、つまり初めての子どもの時の食事については、行事食ならずとも、毎日の食事に関しても、私自身が非常に気にしてやたら一生懸命に気合を入れすぎていました。

食材も、調味料も、調理法に関しても、あらゆることに。わからないから育児書に書いてある通りに、とてもとても丁寧に。もちろんそれが完璧に自然にできればいいのですが、忙しい中でそうはうまくいかないことばかりで、子どもが寝静まってから自分のダメさを反省してばかりいました。

丁寧に作ったおかゆを全く食べてくれなかったり、イヤイヤをしてお料理のお皿を払い飛ばして中身をこぼされてしまったり。本に書いてあるのにどうしてうまくいかないんだろう、と1人でいろいろと悩んだことも多かったですね。

さらに、今だから話すと、まだまだ言葉が話せない娘に対して、ブツブツと不満をぶちまけて、本当にダメな母親なのですが、泣かしてしまったこともありました。つくづく深く反省です。

背伸びして無理するのはやめた

そのもやもやとした日々は意外と長く続き、抜け出したのは長女が3歳くらいの頃です。当時は、毎日仕事がとても遅くなってしまい、保育園への娘のピックアップも閉園ギリギリの日が続いていました。

ごはんの用意をする気力もなく、娘と2人でファミリーレストランに行った時のこと。不甲斐ない自分に落ち込み、「ごめんね、ちゃんとごはんを作れなくて」と言ったところ、意外な言葉が返ってきました。長女は「ママとゆっくりごはん食べるの、嬉しい」と言ったのです。

え?? あー、そうなんだな……と、その時にやっと気づきました。栄養とかバランスはもちろん大事だけど、同じくらいもっと大事なことがある。私は、自分が勝手に描いていた完璧なお母さんになろうと一生懸命背伸びして無理してたんだな、と。

これからですね、お料理を作ることに少し疲れていた私が、自分のできる範囲での食事に切り替えて、シンプルなごはんを作るようになったのは。

ということで、話は戻りますが、次女のお食い初めはお洋服も普段着ているTシャツですし、当然ですが器は使い回し(裏には長女の名前が書いてある)で、お料理も鯛は近くのスーパーで購入、お赤飯と鯛以外は前述の通り日常食べているものばかりです。

子どもたちは、笑顔でいるお母さんが一番大好きなもの。つくる人、食べる人、みんなが心も体も無理のない、自然な食卓を作っていくのがいいですね。

小竹貴子

クックパッド株式会社ブランディング・編集部担当本部長。1972年、石川県金沢市生まれ。関西学院大学社会学部卒業。株式会社博報堂アイ・スタジオを経て、2004年に有限会社コイン(後のクックパッド株式会社)入社。編集部門長を経て執行役に就任し、2009年に『日経ウーマン・オブ・ザ・イヤー2010』を受賞。2012年、同社退社。2016年4月から再びクックパッド株式会社に復帰。現在、日経ビジネスオンラインにて『おいしい未来はここにある~突撃!食卓イノベーション』連載中。また、フードエディターとして個人でも活動を行っている。

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