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コラム

油が美味しい理由が明らかにされつつある

エビフライに天ぷら、フライドポテト、ハンバーガー。こってり油を使った食べ物ってとても美味しいですよね。

あまり食べすぎると体に悪いことは分かっていても、油を使った食べ物はどこか中毒性があって、病み付きになります。

魅力的な美味しさを持つ油ですが、実はその油を美味しく感じるメカニズムが少しずつ明らかになっているんです。

現在の研究で舌にある細胞(舌細胞)に、脂質の主成分である脂肪酸の検知に関わるタンパク質が存在することが明らかとなっています[※1]。
これは動物実験レベルではなく、人間においても明らかとなっていること[※2]。

現在、特に明らかとなっている舌細胞での脂肪酸の検知に関わるだろうタンパク質は「CD36」と呼ばれるものと、「GPR120」と呼ばれるものの2つです。

CD36は脂肪酸の取り込みに関わるタンパク質

「CD36」は小腸や筋肉、脂肪細胞、マクロファージなどの免疫細胞にも見られるタンパク質であり、脂肪酸の取り込みに関わり、吸収や代謝、貯蔵と組織や細胞ごとに働きが変わります。

舌細胞において、油脂の認識がどのようになっているのかは明らかとなっておらず、取り込みまで行なうのか、ただ単に検知だけ行なうのかはっきりとしていません。

ただ、味を感じるメカニズムではカルシウムが細胞内での濃度が高まるのに対し、「CD36」が単独で増大させているという報告はないため、他の分子と共に働いていると考えられています。

GPR120は脂肪酸を検知するタンパク質

そのような中、舌の味蕾細胞に「GPR120」という脂肪酸を検知するタンパク質が発現していることも明らかとなりました。

「GRP120」は食事由来の脂肪を受容するタンパク質です。そのため、味細胞には消化管と同様の手法で栄養素を認識するように機能があることが示唆されています。

「CD36」と「GPR120」は同じ細胞に発現しており、一緒に働いているものだと考えられていましたが、実際には両方とも発言している味細胞はほんの1%であり、それぞれ別の機構で働いていると考えられています。

そのこともあり、「CD36」と「GPR120」の油脂に対する嗜好性は異なるのではないかとみられています。これから更なる研究が待たれますね。

油脂の摂取は脳内に快楽を産み出すかもしれない

みなさんも、こってりしたものを食べると身も心も満たされる感覚を味わったことがあるでしょう。実は脳内で実際にそんなことが起こっているかもしれないということが動物実験から明らかになりつつあります[※1]。

マウスは油脂に高い嗜好性と執着を見せるため、油脂摂取時に脳内に何が起こったのか研究が行なわれました[※3]。

その結果、嗜好性の高い甘味やアルコールの摂取により分泌されるβエンドルフィンと関連するβエンドルフィンニューロンが特異的に活性化されることが明らかとなりました。すなわち、油脂の摂取は脳内に快楽を与える可能性があるのです。

出典:写真AC

身体の良し悪しに関わらず、舌はこってりした油ものを求めがち。

舌には脂肪酸を受容するたんぱく質があり、脳内では快楽が起こり、脂肪を求めるんです。しかし、まだまだメカニズムが不明だったり、人間では明らかとなっていない部分があったりします。

これから、今回ご紹介したこと以外のメカニズムも発見されるかもしれません。今後の研究が楽しみですね!

著者:味博士

味覚研究家。AISSY株式会社代表取締役社長 兼 慶応義塾大学共同研究員。味覚を数値化できる味覚センサーを慶大と共同開発。味覚や食べ物の相性の研究を実施。メディアにも多数出演。ブログ『味博士の研究所』で味覚に関するおもしろネタを発信中。

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