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年越しにもぴったり!食べ方で味わい異なる「出雲そば」で心も体もあたたまろう【ニッポン全国「和食探訪」の旅 vol.2】

クックパッドニュース編集部

日本No.1レシピサイト「クックパッド」編集部。

東京すし和食調理専門学校の学校長・渡辺勝さんが、日本各地を旅してお届けする「和食探訪」連載。知られざる和食の起源や、絶滅寸前の郷土料理などにフォーカスし、素敵なエピソードの数々をご紹介します。

伝統グルメ、出雲そばに舌鼓

こんにちは。ご当地和食めぐりが大好きな「東京すし和食調理専門学校」の学校長・渡辺勝です。前回に続いて、縁結びの神様で有名な出雲大社のある島根・奥出雲から、「日本三大そば」にも数えられる出雲そばの魅力を、深く掘り下げてお伝えします。寒~い季節に、熱~いおそば。身体がぽかぽかと温まります。

そば湯の栄養をまるごと摂れる食べ方「釜揚げそば」

出雲そばの食べ方には種類があり、歴史の古い食べ方と言われているのが「釜揚げそば」です。釜揚げって、うどんではお馴染みですが、そばでは珍しいですよね?

そばは普通、茹で上がると、冷たい水で洗って締めます。それからざるやせいろに盛るか、どんぶりに入れて熱い出し汁をかけます。

しかし、釜揚げそばは、茹でたらすぐに丼に入れて、茹で鍋の中でグラグラ煮えているそば湯を注ぎます。そして好みの量の出し汁を足して食べるのです。

今回のれんをくぐったのは、出雲市駅から10分ほどの「喜多縁」。ご主人は元出雲市役所職員で、そば愛がこうじて修行を経て店を持ちました。こだわりのうまさを求めて、多くのそば好きが通うのです。

さあ、私が注文した「海苔釜揚げそば」が運ばれてきました。打ち粉が溶けて、やや白濁したそば湯にそばが沈んでいます。このお店では、そば湯に軽く下味がつけてあり、さらに出汁を加えてお好みの味に調整します。つゆは辛口の醤油味。この出汁がべらぼうに美味しい! 鰹節、鯖節、メジカから取る宗田節で、ていねいに出汁を取り、さらに地元特有のアゴ出汁を使っているんでしょう。アゴとは、九州や日本海側でのトビウオの別名ですね。

そばはとても香り豊か。口から鼻へと風味がフワッと広がり、歯ごたえも違います。水で締めないから柔らかく、喉越しはするりと滑らかで、打ち粉が溶けてとろみのあるそば湯とよく合います。ツルツルいけて、身体がぽかぽかと温まります。

具は贅沢にのった岩のり。そのいい香りが、もうもうと上がる湯気とともに、鼻をくすぐります。薬味は鰹節、ネギ、紅葉おろし。彩りも鮮やかです。夢中で平らげて、ハー、と幸せのため息が漏れました。

箸が止まらない「割子そば」を堪能

次のお目当ては、釜揚げそばと並ぶ、出雲そばとしてポピュラーな食べ方の「割子そば」。朱塗りの丸い器にそばが入っています。

お店は出雲大社前の「荒木屋」。創業は江戸時代後期、天明年間から200年以上続く老舗です。割子そばは食べ方の作法がユニーク。そばの器は3段重ねで1人前。まず1段目に、直に出汁をかけて食べて、残り汁を2段目、3段目のそばにかけて食べるのです。

薬味は「鰹節」「のり」「青ネギ」などシンプル。とろろ芋や卵などを掛けるのも美味い!いくらでも食べられそうです。最後に、余った出汁を茶碗のそば湯に入れて飲めば、いやもう大満足!

翌日は、松江へ足を伸ばして「神代そば」へ。ここは、松江市産の「玄丹そば」を素材に、そば粉と水だけで打つ十割そばが評判です。そばの実を石臼で「一番粉」「二番粉」「三番粉」と挽き分けて、これを独自のブレンドでこだわりの味と食感、香りに仕上げています。とろろと玉子を合わせた割子そばでいただきました。

今回巡った「喜多縁」「荒木屋」「神代そば」は、いずれも釜揚げそば、割子そばと、様々なそばの食べ方を楽しめます。

そもそも出雲そばの特徴は

出雲そばの特色は、色の黒っぽさです。石臼でそば粉を挽く際、そばの実ごと挽く「挽きぐるみ」という製粉方法で作るので、そばの風味と食感がしっかりと味わえます。また、成分が豊富で栄養価も高く、見た目も野趣あふれます。

出雲そばは、岩手県のわんこそば、長野県の戸隠そばと合わせて、「日本三大そば』の一つとして知られる郷土料理。出雲そばは出雲地方と松江地方で発達したことをご存知でしょうか?

そもそも、島根の奥出雲地方は、米の代用食として、寒さに強く痩せた土地でも栽培できるそばを昔から食べていました。やがて関ケ原の戦いが終わり、江戸幕府が開かれると、出雲の国と隠岐の国を合わせ、松江藩が成立します。

この初代藩主として、信濃国は松本藩から松平直政公が転封されました。このとき直政公は、そば処の信州からそば職人を多数、この地に連れて来たと伝えられています。

これが出雲そばの始まりとされ、江戸時代前期の出雲大社の記録で、麺にしたそば切りが食べられていたことが確認できます。そのような経緯があったため、作り方は信州の流儀。江戸で殿様に出すような殻をきれいに取った真っ白な更科そばではなく、信州の流儀ならではの殻を割って甘皮ごと挽くそばなのはそのためなのです。

また、前述のように出雲そばならではの食べ方と言える釜揚げそばは、信州では一般的ではありません。この地で独特の食べ方が生まれ、根付いたのはなぜでしょうか?

これは江戸時代、出雲大社に全国の神々が集まるとされていることから参詣客も多い旧暦の10月に、神社の周りにそば屋台が並んだことに由来しています。屋台売りでは、茹で上がったそばを水洗いするのに必要な大量の水の確保が難しく、そば湯につゆと薬味を足して食べる釜揚げそばが定着したわけです。

もう一つの名物が割子そばです。これも歴史は古く、江戸時代には、弁当箱のような四角い椀にそばを入れて、野外でそばが食べられていたそうです。城下町・松江らしいグルメな趣味ですね。しかし、明治後期、食品衛生を管轄していた松江警察署長の「四角い椀は隅が洗いにくい。丸にするように」との発議で、円い漆器になったとの逸話があります。

なぜ椀に盛るかといえば、この地のそばはそば粉の割合が高く、つなぎが少ないこととも関係します。つなぎが少ないほど、そばは切れやすくなります。

これを、ざるそばやもりそばにして、箸で持ち上げ、つゆをつけると、プツプツと切れて食べづらい。それよりは椀に盛り、汁をぶっかけて掻き込む食べ方になったわけですね。

家庭でも釜揚げそばを作ってみよう

馴染みのない人も多い釜揚げそば。家庭でもアツアツの美味しさを楽しめます。ポイントは、市販のそばから、「十割そば」「九割そば」「二八そば」を選ぶこと。これらはそば粉が80%以上含まれています。そうでないものは、そばと名乗っていても、原料がほとんど小麦粉で、実質的には「うどん」に近いものも多いのです。

もう一つ、乾麺のそばにはコシを出すために塩分が含まれたものがあります。これらはゆで汁がしょっぱくなりがちなので注意が必要。乾麺で釜揚げ蕎麦を作る場合は、「食塩無添加」「そば湯も楽しめます」といった表記の商品を選んでください。または、生めんでそば粉の割合が高いものを選ぶと良いでしょう

茹で方はごく普通。お好みで、茹でる水の量を加減して、そば湯の濃さを調節しましょう。茹で時間どおりに茹でてどんぶりに移し、茹で汁をたっぷり注ぎます。味付けは市販の麺つゆでOK。好みの濃さに加えてください。塩分を調整できるだけでなく、自然のそばの滋味を楽しめます。

ヘルシーでおいしく、簡単にできる釜揚げそば。今年の年末は、出雲流の年越しそばで、美容と無病息災を願ってはいかがですか?

ぜんざい、そばと続いた島根編はいかがだったでしょうか? 次回のテーマは、みんな大好きおでん。お楽しみに!!

渡辺 勝

東京すし和食調理専門学校の学校長。度重なる海外出張で日本の良さや和食のおいしさに気付く。趣味は旅行と食べ歩き。近年、郷土料理の素晴らしさに目覚め、日本の宝である『郷土料理』を世に広める使命を個人的に請け負っている。

東京すし和食調理専門学校

日本で唯一のすしと和食を学ぶ調理専門学校。2016年4月に東京都世田谷区に開校。海外からの留学生も多数在籍。校舎1階のカウンターにて学生によるすし懐石料理店「一膳」を定期的に営業。卒業生はすしや和食の専門店や旅館、海外のホテル内和食店などで活躍中。

執筆者情報

クックパッドニュース編集部

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