何もしたくないけどご飯をつくらなきゃ…そんな時の「手抜きごはん」【世界の台所探検】

何もしたくないけどご飯をつくらなきゃ…そんな時の「手抜きごはん」【世界の台所探検】

世界中の台所を訪れて現地の人と料理をする台所探検家・岡根谷実里さんが、各地の家庭料理をお届けします。

パレスチナの「鶏じゃが鍋」は、ほったらかしで完成

中東パレスチナのお宅を訪れたのは、寒風が吹く1月のこと。 寒さのためかお母さんは風邪気味で、ストーブに手をかざしてソファにうずくまったまま、動きたくない様子です。

「今日は何も作りたくないよ」とぼやきつつ、それでも子どもたちを食べさせないわけにはいかないので、重い腰を上げて冷蔵庫を開きます。

出してきたのは鶏肉とじゃがいも。鶏肉を切り、無心の手付きでじゃがいもをざくざくと切り、油とスパイスをまぶして大きなトレーに詰め込みます。

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アルミホイルをかけ、あとは電気鍋にセットしてほったらかし。「このまま1時間よ」と言ってふらふらとソファに戻ります。 55a77f0a9d42ce6198b732a7f4d5fe30

この料理の名前は "Siniyet Djaj o Batata" 。アラビア語で「Siniyet=平鍋、Djaj=鶏肉、Batata=じゃがいも」なので、そのまま訳すと「鶏じゃがの鍋」。ネーミングも力が抜けています。 台所をのぞいた息子さんは、「これは母さんが何もしたくない日に作る料理なんだ」と教えてくれました。

途中で停電すると、人生は楽じゃないねえなどと言いながらガスコンロに移し、そうこうするうちにいい香りがただよってきます。 鶏肉はふっくらやわらかく、じゃがいもは崩れるほどにほろほろで、スパイシーな味つけは子どもたちも大好き。 お母さんはやっぱりぐったりしているけれど、もりもり食べる子どもたちをにっこり見つめながら、さっきよりちょっとだけ元気そうな様子なのでした。

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ブルガリアの「ミッシュマッシュ」は、ごちゃまぜだけど彩りバッチリ

「あー、なにもないや。ミッシュマッシュかな。」 冷蔵庫を開けてそうつぶやいてきたのは、ブルガリアの首都で一人暮らしをする女性。今日は仕事で帰りが遅くなり、買い物に行く時間もありませんでした。

使うのは、卵・チーズ、それに夏の定番トマトとパプリカ。ミッシュマッシュはいつも必ず家にある食材で作れる簡単料理です。

「食材もやる気もない日にはこれ。卵料理なんて、朝ごはんみたいでしょ?あ、赤パプリカがなかった…緑でいいや」細かいことは気にせずに、ただ食材を刻みます。

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野菜を炒め、チーズを加え、そこに卵を割り入れます。

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ところがせっかくきれいに割りたのに、勢いよくまぜてくずしてしまいます。「ボウルで割りほぐすのを怠けただけよ。この方が洗い物が少なくて済むでしょ」とにやり。

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ミッシュマッシュは「ごちゃまぜ、てきとう」という意味。その名の通り、難しいことを考えず、いい加減でもつくれちゃうところにほっとします。

それでいて野菜も入って彩りよく、パンにのせるとトマトとチーズのソースを吸ったパンがまたおいしく、無心にもりもり食が進みます。

卵とチーズをまぜまぜ!ミッシュマッシュ by 世界の台所探検家
家に何もない日でも、疲れて帰ってきた日でも、さっと作れるブルガリアの定番家庭料理です。トマトとチーズのうまみ相性が抜群!

上海の「具だくさんスープ」は、映画をみてる間に完成!?

最後は上海の台所から。 一人暮らしの台所、夕飯の支度は、流し台にたまった洗い物をきれいにするところからはじまります。

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「昔は料理が大好きだったの。彼と住んでたから、毎日いろんなものを作っていた。でも今は面倒になっちゃって、まともに料理なんてしてないわ」

特に作りたいものもないしとつぶやきながら、野菜と肉をざくざく切ります。 すべてを鍋に入れて、トマト缶を投入し、支度を終えたらそそくさとリビングへ。鍋よりも途中で止めていた映画の続きが気になるようです。

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完全に興味のない彼女に代わって、あとは時間が調理してくれます。できあがったらお皿に盛り付けて再びリビングへ。彼女の視線はテレビ画面に釘付けで、手元に目もやらずにスプーンを口に運びます。

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隣りに座っているのに一口も口をきかず、薄暗い中黙々と食べる夕飯。少しさみしい気もしつつ、気分が盛り上がらない日のひとりごはんで自分が作るのもやっぱり具だくさんスープで、PCをいじりながら食べるわが身と重なるのでした。

世界中の誰だって「面倒」な時はある!

なんだか心が疲れた時、頭を使いたくない時、作るのも食べるのも低エネルギーな手抜き料理って、他ならぬ自分のために大事なのかもしれません。

世界中の誰だって、いつも張り切って料理できるわけじゃありません。 切るだけ、詰めるだけ、ほったらかし。世界の人々は、私たちと何ら変わらぬ手抜きスキルでそんな日を乗り切っていました。 そして力が出ない日は意外と、力の抜けた料理の方が体と心にエネルギーをくれたりします

ときには胸を張って、「今日は手抜き!」と言ってしまおう。


岡根谷実里さん

C5886f12a5802dc2815781711544dcc7 台所探検家。世界各地の家庭の台所を訪れ、世界中の人と一緒に料理をしている。これまで訪れた国は60カ国以上。料理から見える社会や文化、歴史、風土を伝えている。
公式ブログはこちら>>

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