「食育」ってそもそもなんでしょう。「子どもにとって良いこと」という認識はあるけど、じゃあ具体的に何をしたら「我が家では食育をしています!」と胸を張って言えるものなのでしょうか? 栄養素を教えることが食育? それとも野菜や果物、食物の知識そのものを教えること? …どこから手をつけていいのかがわかりませんよね。この連載では「食育わからない!」のお手上げ状態から、「なーんだ、こんなことも食育って言えるのか、これならできる」という食育フレンドリーに一歩でも近づける様なヒントをお伝えしていきたいと思っています。
今回は、未就園児ちゃん達、つまり3歳までの子どもの食育についてお話ししたいと思います。ちょうど、歩き始めて行動範囲が増え、視野がぐんと広がった子どもにとって、キッチンも侵入したい場所の一つです。さらに2歳頃は、個人差もありますが天使のように素直だった我が子が、時よりイヤイヤ怪獣に変貌するお年ごろ。一度「イヤ!」と言ったら、テコでも動きません。(笑)
私が重い腰を上げて娘と料理を始めたのもちょうどイヤイヤ期真っ盛りの2歳の時でした。
「ママ、おりょうりしたい!」
今から遡ること4年前。我が家のイヤイヤ怪獣が料理に興味を持ち始めました。それは私が、卵を調理するときでした。基本「イヤ!」しか言わないし、かんしゃくが始まると1時間はひっくり返る娘が、一度「料理をしたい」と思ったら最後、目的を達成するまでバタバタする光景が目に浮かびます。はぁ、困った。究極の選択を迫られます。要求どおり卵グチャグチャコースか、拒否権行使のイヤイヤコースか(笑)どっちも大変…だけど、どちらかと言うと僅差で卵グチャグチャコースの方が楽かも…。これが我が家の親子クッキングの第一歩。
試しに「卵持ってみる?」と聞いてみます。すると、途端に目をキラキラに輝かせて「うん!」と高揚したぷくぷくほっぺとふわふわの両手をぐっと前に出して卵を受けとります。そして…ご想像の通り。そのまま思いっきり握りしめました。卵は派手に飛び散り、ポカーンと立ち尽くす娘。
まさか真っ白な卵からこんなものが出てくるなんて、思いもよらなかったことでしょう。衝撃的な展開に、泣いてしまうかな? と思いました。しかし実際は、「たまご こわれた!」と世紀の大発見に、さらに目を輝かせていました。そこで「もう一個卵いる?」と聞くと「いる!」即答です。彼女はすっかりおもちゃでは味わうことのできない、本物の魅力にとりつかれていました。
そして次は卵を、大切な宝物を扱うかのように、そっと両手に包み込み、様々な角度から観察していました。今度は「卵割り」と言う料理に挑戦したい様子です。そっとトントン…あれ?割れない。ドン!…ぐちゃり。また卵はぐちゃぐちゃです。娘の頭の中は「?」でいっぱい。「どうしたら ママみたいに たまご きれいに こわれる?」彼女の探求心が爆発した瞬間でした。
私の運営するリトルシェフクッキングではよく「子どもがお料理を始める時期はいつ頃がベスト?」とご質問を頂きます。その答えはズバリ「その子が料理に興味を示したら」始め時です。幼稚園に入ったら、卵くらい割らせてあげないと!なんて無理に思う必要はありませんが、料理したそうな顔でふらっとキッチンにやって来たら、その「好きの芽」を見逃さずにキャッチしてあげるのがいいかな、と思います。
とは言っても、これは理想! 現実は、子どもとの料理の第一歩は、慌ただしくてキッチンも汚れるし、本音を言うとやらなくていいならやりたくないかもしれませんね。でもこれだけは断言できます。最初の一歩さえ乗り出してしまえば、あとは前進のみ。必ず上達して、いつしか自分を助けてくれる存在になります! イヤイヤ怪獣だった娘も4月から1年生。夕方時、私が仕事でバタバタしている最中に「お米お願い!」と頼んだら、3合計って、洗って、浸水して、土鍋に入れて、水を計って、と大助かりです。
未就園児の時期は、本当に毎日大忙しで大変だと思います。今思い返しても、イヤイヤ期が一生続くのではないかと思うほど、出口のないトンネルの中にいる思いをしていました。でも、「イヤ」がはっきりする時だからこそ「好き」もどんどん見えてきます。卵割りは、「割る」「壊す」「ドロドロしたのを触る」と子どもの好きな手作業のオンパレードです。料理に興味を持ち始めたら、始めの一歩として、ぜひ本物の卵を渡してみてはいかがでしょうか。
おうち時間は、子どもと料理を楽しみませんか? 料理当該レッスンをオンラインで、一緒に受講することができます。対象年齢は2歳から4歳児さん。こんな時期だからこそ、子どもと一緒に料理にチャレンジしてみましょう!
【予約サイトURL】https://coubic.com/littlechefcooking/booking_pages
武田昌美(子ども料理研究家)
リトルシェフクッキング(株)代表取締役。フランスで料理の修行をしていた父の影響を受け、幼少の頃から料理に興味を持つ。航空会社にて客室乗務員をしながら、各地の料理や文化に触れ、知識を深める。2人の子どもの親となり、多くの子どもたちに料理の楽しさ、食の大切さを伝えていきたいと強く願い、2017年より「ママも知らなかった才能が花開くクッキングスクール」をコンセプトにした料理教室『リトルシェフクッキング』を主催。保有資格は、フードコーディネーター、スパイスマイスター、食品衛生責任者。2019年3月、子どもが一人一人料理できる料理教室『リトルシェフクッキングEduCooking Lab』を東京都世田谷区にオープン。
【HP】https://little-chef-cooking.com/(ご予約はこちらから)
【Instagram】@masamis__kitchen
【ブログ】子ども料理研究家 武田昌美の食育ブログ
【クックパッド】武田昌美のキッチン