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新型コロナは「自分で料理」して対策!台湾でブームの“ヘルシー食事情”に迫る【#コロナ禍で変わった世界の食卓】

新型コロナウイルスの影響で、私たちのライフスタイルは大きく変化しました。その中でも、とくに食生活が変わったと感じる方も少なくないでしょう。日本では自宅で料理を作る人が増え、家族で楽しめるホットプレート料理やお菓子作りの人気が高まりましたが、こういった現象は日本国内だけのものなのでしょうか。今回、クックパッドニュースではコロナ禍による食の変化に注目。世界の食事情について各国に取材し、現地の方にお話を伺いました。

第1回は、日本でも人気の旅行地「台湾」。中心都市・台北市の隣に位置する新北市蘆洲区にお住まいの林立雄(リン・リーシォン)さん(29歳)、台北市に在住の日本人ライター・片倉真理さん(48歳)に話を伺いました。

台湾名物の屋台にも変化が!?

台湾の食といえば、まず「屋台」を思い浮かべる方が多いのでは? 以前は日本からも多くの観光客が訪れており、そこでしか味わえない台湾グルメが人気を集めていました。そんな台湾名物の屋台は今、どうなっているのでしょう。

「台湾はパンデミックを抑え込めていますが、みんな出歩くことには慎重になっています。昨年に比べれば再開された屋台も増えたものの、未だに貸店舗になっているところも多いです」(林さん)

屋台はコンビニエンスストアや、おもちゃ屋さんになっているそうです。また、台湾の屋台事情は来客する人々の属性によっても変わると、片倉さんは言います。

「もともと観光客が多かった『士林夜市』は地元客が少なかったため潰れてしまった屋台も少なくありません。一方で、地元客が多かった『寧夏夜市』は座席にアクリル板を設けるなど対応を行い、現在も盛況です」(片倉さん)

コロナ禍になり、実際人々の生活にはどのような影響があったのでしょうか。母親が屋台を営んでいたという林さんは、コミュニケーションの場として屋台が機能していたのだと気づいたそうです。

「僕の母は昔小さな屋台を経営していましたが、コロナ禍の前に屋台を閉じていたので経済的な影響はありませんでした。でも、みんなが集まる場が少なくなったことで人と人とのコミュニケーションも減り、僕の母だけでなく、多くの高齢者が家にいることを退屈に感じています。屋台での食事が人をつなげていたところもあったのだと、改めて思いました」(林さん)

台湾では日常的に屋台を利用する人がほとんど。昼は屋台で食べ、朝や夜もテイクアウトしてオフィス(職場)や家で食べる人が多かったのですが、コロナ禍を境に利用の仕方にも変化が出てきたそう。

「屋台はスペースが狭いところが多いため、人と人との距離がどうしても近くなります。ソーシャルディスタンスの観点でイートインをする人が減り、テイクアウトする人が増えました」(林さん)

屋台でお昼から、手作りお弁当が人気に

屋台との関わり方が変化したことで、台湾のランチ事情にも影響が出ました。日本でもお店で食べる人が減り、テイクアウトやお弁当を作る人が増えましたが、その動きは台湾でも起きていたようです。

「屋台を利用せず、お昼は自分でお弁当を作る人や、お弁当屋さんで買う人も多くなりました。書店に行くとお弁当のレシピ本がベストセラーの棚を占めています。また、多くの料理系のインフルエンサーがお弁当を作っている様子をSNSに投稿していたため、それを見た人々が影響されたということもお弁当ブームに火がついたきっかけかもしれません」(林さん)

お弁当(台湾では「便當」と表記)の人気が高まっていることを表すデータ。2020年4月をピークに、現在も高い状態が続いています。(Google Trandより)

お弁当ブームにともない、職場でお弁当を「電鍋」で温めて食べる人も増えているのだとか。「電鍋」は、日本でも話題になっている台湾の万能調理器具で、“蒸す、焼く、茹でる、揚げる、保温、炊飯”などがこの1台でき、台湾の家庭には必ずあるといわれています。昨年の3月〜4月には、自炊する人が増えたためか、電鍋自体にも注目が集まったことも。

台湾のお弁当箱はプラスティック製のものが多いため、お弁当箱を直接温めるのではなく、お皿に移して温めます。日本では、お弁当を電子レンジで温めるのが一般的ですが、台湾の人々が電鍋を使うのには、ある理由がありました。

「電子レンジを使わない人が多いのは、台湾では昔から『マイクロ波が身体に良くない』と考えている人が多く、あまり普及していないからです。その代わりのものとして、電鍋がよく用いられています」(片倉さん)

林さんが作ったお弁当。電鍋で温めたので、お皿に移してあります。メニューは鶏肉に卵や野菜とヘルシー

新型コロナにより健康を気にする人が増加

以前は屋台のお弁当といえば、メインはフライドチキンか豚の醤油煮など、味の濃いものが人気でした。しかし最近は新型コロナに罹らないよう、健康的な食生活を送りたいと考える人が増えました。

台湾には『医食同源』という言葉が示すように、食で健康を保っていくという発想があります。これは伝統的なもので、庶民の暮らしの中にしっかりと定着しているものです。その理由は医学の発達していなかった時代、“自身の身体は自身で護る”という発想に起因するものとされています。今回、新型コロナに肥満の方が罹った場合、重症化することから『健康的な食生活をするように』という衛生福利部(※日本の厚生労働省に相当)からの注意喚起がありました。雑誌などでも、ヘルシーな食事に関して特集が組まれたりもしました」(片倉さん)

『医食同源』からくるヘルシーブームの流れで、先ほど紹介した林さんのお弁当のように、今は低糖質でたんぱく質中心のメニューが人気になっています。コロナ禍で実際の食生活がどう変わったのか、林さんにお伺いしました。

「外食するときは油っぽくないものを選んだり、体調を整えるために良質なタンパク質と新鮮な野菜を食べたいと思うようになりました。家で料理をするときも、電鍋で蒸す、茹でる料理が多くなっていますね。僕は新型コロナに関係なく、もともと料理を作っていましたが、友人の多くは新型コロナの影響で料理をするようになりました。今も継続しているかはわかりませんが(笑)、少なくとも新型コロナ以前は家庭で料理を作ろうとは思っていなかったと思います。健康を保つには食事から、という意識が台湾の人々の根底にあるのです。自分で料理をするのが健康には一番、ということにみんな気づいたのだと思います」(林さん)

コロナ禍で新たに注目された「薬膳料理」

新型コロナにより人々の健康意識が高まったことで、これまであまり注目されていなかった料理の人気が高まってきたといいます。それが「薬膳料理」。生姜やナツメ、クコの実などを使ったスープが有名で、体を芯から温め、健康の面でもさまざまな効果が期待できます。日本では、近年女性を中心に人気を集めている薬膳料理ですが、台湾ではかつて「お年寄りの食べもの」とされていました。それが今、ドリンクなどにも取り入れられるようになり、台湾の若者の間でも親しまれるようになったそうです。

「僕はスパイス入りのホットワインが大好きで、冬になるとよく友人と一緒に飲みます。食べるのを楽しみながら健康になれるんですから、取り入れない理由がないですよね」(林さん)

毎年冬場になると注目度が上がる薬膳料理も、2020年の冬は高水準に。(Google Trandより)

おすすめの台湾薬膳料理

近年、日本でも少しずつ広がりを見せている薬膳料理。とはいえ、まだまだなじみがないという人も多いですよね。そこで林さんにおすすめの料理を教えてもらいました。

「台湾の定番は『スペアリブの煮込み(薬膳排骨)』です。豚肉の代わりに鶏肉や羊肉を使ってもかまいません。新陳代謝を促し、体を温めてくれますよ。実際に食べてみると、疲れにくく、筋肉が強くなり、血色も良くなったように感じました。効果を実感するには、最低でも1か月間は薬膳を取り入れた食生活を続ける必要があるとも言われますが、この料理をきっかけに薬膳に興味を持ってもらえたら嬉しいです」(林さん)

スペアリブの煮込み(薬膳排骨)

材料
スペアリブ…250g

【A】水で軽く洗い、だしこし袋などに入れておく
当帰…2.5g
黃耆…5g
党参…5g
炙甘草…2.5g
陳皮…1.5g
桂枝…1.5g
小茴香…1.5g
山奈…0.5g

ナツメ…適量
クコの実…適量
酒…少々
塩…少々

※【A】の漢方は、漢方薬店やネットショップなどで入手できます。全種類入れなくてもOK。量はお好みで調整してください。

作り方
1.鍋にお湯を沸かし、スペアリブ入れて茹でる。茹でたら取り出しておく。

2.お湯を捨て、鍋に再度お湯を沸かす(お湯の量は1.5〜2リットル程度が目安)。【A】を入れて茶色っぽくなるまで煮込み、、ナツメ、酒を入れて30分ほど煮込む。30分たったら、クコの実を入れて10分ほど煮込み、塩で味を調えて出来上がり。

日本ではソーシャルディスタンスを保つために家で食べる、コロナ太りを解消するためにヘルシーなものを食べるという傾向にありますが、台湾は「健康のため」に自炊やお弁当作りを始める人が増えており、「自分の健康は自分で守る」という意識も強く表れている印象を受けました。

これまでは屋台文化のイメージがあった台湾ですが、今後は新しい”おうちグルメ”が誕生し、ブームを生み出すかもしれませんね。

(TEXT:河野友美子)

#コロナ禍で変わった世界の食卓

本記事は、Yahoo!ニュースとの共同連載企画です。クックパッドニュースでは、コロナ禍で変わった世界の食事情をリサーチ。各国で高まったムーブメントや、人気になった料理を現地の方にお伺いしました。世界の食卓に、明日から取り入れられる食のヒントがあるかもしれませんよ。

取材協力:クックパッド台湾

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