【今日はお寺ごはんで一汁一菜 Vol.12】料理僧・青江覚峰(あおえ かくほう)さんが提案するのは、誰でも簡単に作れる「一汁一菜のお寺ごはん」。実際にお坊さんたちが食べている、肉や魚を使わない一工夫あるレシピを教えていただきました。からだと心がほっとゆるむ、優しい味わいのお料理ですよ。
先日行われた「クリエイティブクッキングバトル」というイベントで、僭越ながら審査員をさせていただきました。
クリエイティブクッキングバトルは、「アリモノからおいしい料理を作ることが、生活の中で最もクリエイティブな行為である。を合言葉に、残り食材を工夫して自由に料理する能力に焦点を当てた、エンターテインメント型フードロス解消イベント」で、家庭のキッチンで残ったものを使っていかにクリエイティブな料理を作るかを競う、実に面白く興味深い企画です。
私はこの企画が大好きで、開始の年から関わらせていただいているのですが、毎回はっとするような驚きがあります。
コロナ前では、一堂に会した参加者が持ち寄った「余り物」が机いっぱいに並んだところからスタート。
生物や乾物、調味料、はたまたスナック菓子などバラエティ豊かな食材の中からいくつかを選び、それを自由に使って料理を作ります。みんな使いやすいものから順にとっていくので争奪戦です。もちろん余ってしまったものすべて振り分けます。半ば強引に押し付けられた食材に悪戦苦闘しながらも、工夫をこらした料理が出来上がっていく様子は見ていてとても刺激的です。
さて、MCのクック井上さんの軽快なトークも盛り上がるうち、机の上に並べられていた余り物はいつの間にか立派な料理に変身しています。最後はみんなで実食。はたして期待どおりのおいしさか、それとも予想を超えてくるお味なのか……。捨てられるはずだった食材が、舌を、目を、気持ちを、あらゆる意味で楽しませてくれることに気づくひとときです。
そんなクリエイティブクッキングバトルですが、去年と今年はオンラインでの開催でした。
従来のようにグループだけではなく個人での参加もあり、それぞれがあっと驚く自由な発想で参加してくれました。アイデアもプレゼンテーションもよく練られており、楽しく審査しているうちに自分でも作ってみたくなってしまいました。
……というわけで、出来上がったのがこちら。まるごとかぶら蒸しと、かぶのポタージュです。
実の部分を皮ごとすりおろし、それを絞って出た汁をあんかけの餡に、残った繊維の部分はかぶのまんじゅう部分に。そして葉っぱはお浸し、さらに茎の付け根の部分は蒸して、お浸しともにかぶ蒸しの上にあしらいます。
かぶをまるごと、上から下まで全部使い切るので、捨てるものと言えばかぶが入っていたビニール袋だけという潔さ。クリエイティブクッキングバトルで披露されたものに比べるとだいぶ見た目も味わいもシンプルですが、その分、なんとなくほっとする一品に仕上がりました。ぜひご家庭でもお試しください。
かぶ…2個(200g)
長芋…50g
片栗粉…大さじ1
塩…ひとつまみ
薄口醤油…少々
水溶き片栗粉(片栗粉を同量の水で溶く)…適量
1.かぶをよく洗い皮ごとおろし、ざるで水気をよくこしておく(a)。この水気は後で使うのでとっておく(b)。茎の付け根の部分は、泥をよく落としておく(c)。
2.ボウルにa、おろした長芋、片栗粉、塩を加えよく混ぜ、耐熱茶碗に入れる。
3.耐熱容器に2とcを入れ、蒸し器で20分蒸す。
4.かぶの茎、葉を熱湯にくぐらせ、ザルに取ったら軽く塩(分量外)をふっておく。
5.鍋にbをいれて中火にかける。沸騰したら弱火にし、丁寧にあくを取り、薄口醤油を味を見ながら加え、水溶き片栗粉でとろみをつける。
6.蒸しあがった3に5をかけ、4を飾る。
かぶ…2個(200g)
昆布出汁…200ml
豆乳…100ml
オリーブオイル…大さじ2
1.かぶの白い部分を切りおとし、くし切りにする。緑の部分はざく切りにする。
2.白い部分とオリーブオイル大さじ1、塩ひとつまみ(分量外)を鍋に入れ、表面が少し透き通るまで中火で炒める。
3.出汁を加え、15分ほど、かぶが柔らかくなるまで煮る。このときに茹で汁50mlを別途とっておく。
4.粗熱が取れたら3をミキサーにかけ、豆乳を加える。味を見て、好みで塩コショウで味をととのえる。
5. 1の緑の部分とオリーブオイル大さじ1、塩ひとつまみ(分量外)を鍋に入れ、よく炒める。その後3でとっておいた出汁を加え、更にくたくたになるまで煮る。
6.粗熱が取れたら5をミキサーにかける。
7.4を温めて器に盛り、その上に6をのせる。
1977年東京生まれ。浄土真宗東本願寺派 湯島山緑泉寺住職。米国カリフォルニア州立大学にてMBA取得。料理僧として料理、食育に取り組む。ブラインドレストラン「暗闇ごはん」代表。超宗派の僧侶によるウェブサイト「彼岸寺」創設メンバー。
ユニット「料理僧三人衆」の一人として講演会「ダライ・ラマ法王と若手宗教者100人の対話」などで料理をふるまう。著書に『お寺ごはん』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『ほとけごはん』(中公新書ラクレ)、『お寺のおいしい精進ごはん』(宝島社)など。
【公式HP】https://www.ryokusenji.net/kaku/