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コラム

「パスタすら買えない」ロックダウン下のスペイン、育まれた国民の“もったいない精神” 【#コロナ禍で変わった世界の食卓】

6回にわたってお送りしてきた「#コロナ禍で変わった世界の食卓」連載。今回は、多様な文化が混在する「スペイン」のコロナ禍における食事情についてご紹介します。厳格なロックダウンを実施していたヨーロッパ諸国。スペインも例外ではありませんでした。日々の買い物もままならない中、人々はどのような食生活を送っていたのでしょうか。

今回は「自炊頻度低めで週末は外食を利用している」というカルミネ・マタラッツォさん(39歳・男性)、ジャウメ・ノゲラさん(28歳・男性)と、「毎日自炊をしている」というアンパロ・セレイホさん(49歳・女性)の三人に話を伺いました。

外食に行けない!買い物に行けない!さて、どうする!?

スペインでは、2020年10月から全土に発令されていた非常事態宣言が2021年5月に解除されました。その間は夜間外出禁止や移動制限などの規制がかけられましたが、前回の2020年春に行われたロックダウンは、さらに厳しいものでした。仕事や病院の受診、食料品の買い出し以外のすべての外出が禁止、薬局とスーパーを除くすべての店舗が休業。運動のための外出もできず、外を歩いているだけで罰金を科せられたため、買いだめをする人も多く、一部のスーパーで品切れが発生していたそうです。

そうなると頼りたくなるのが、フードデリバリーやネット通販。日本ではステイホームでフードデリバリーの需要が伸びましたが、スペインの利用状況はどうだったのでしょうか。カルミネさんに聞きました。

「ロックダウン開始当初は、スーパーに行く回数を極力減らしていました。人との接触を避けるため、フードデリバリーやネット通販も控えていましたね。規制が少し緩和されるようになってからは、お寿司やハンバーガー、ピザのデリバリーを頼んだりもしましたが、なるべく対面で会わないようにするために、宅配の人にはエレベーターに荷物だけを乗せてもらい、無人の状態で受け取るようにしていました。それはロックダウンが解除された今も続けています」

エレベーターにも乗らない、乗らせないという徹底ぶり。日本でもコロナ禍で“置き配サービス”を利用する人が増えてきましたが、感染状況が厳しかったスペインの人々はより一層の注意を払っている様子でした。

スペインは自炊率高め!その理由とは?

コロナ後は世界各国どこの国の人も、家で料理をする回数や頻度が増えたというデータが出ており、スペインでもロックダウン中に「パン」のレシピを検索する人が多くいました。

「パン レシピ」というワードの検索数がわかるデータ。2020年3月14日のロックダウン後から急上昇し、4月初旬には過去5年で最も高い検索数になっています(GoogleTrendより)

ただ、スペインはもともと自炊をする人が多く、料理頻度が低めだというカルミネさんもコロナ前から週に3〜4日は自炊をしていたと言います。日本の感覚でだと「普通に自炊をしている」と言っても良さそうですが、カルミネさん曰くスペインではそう思われないとのこと。その理由について聞いてみました。

「外食は好きですが、スペインには日本のように安いお店が多くないんです。ランチは安くても10ユーロ(約1300円)なので、経済的な理由で自炊をする人が多いのだと思います。それに、どうしても外食は揚げ物が多くなってしまいます。健康面のことを考えても、自分で作って食べたほうがヘルシーで安くておいしいと考えています」

買い物に行くことすらままならない毎日では、同じ食材を繰り返し使うことが多くなってしまいますが、カルミネさんは、ポジティブな思考でどうアレンジして飽きずに食べ切るかを工夫していました。

「第一波のときは外出制限が厳しく、スーパーにあまり行けなかったので、残り物をうまくアレンジしていました。食材を無駄にしないために、料理に対してクリエイティブにならなきゃいけなかったんです。よく使っていたのは、いんげん豆の水煮缶です。1缶が大きく、一度開けると日持ちしないので、それをうまく使い切るために、最初はそのままサラダにいれて、3日後はベジタリアンバーガーにしました。同じ食材なのに、違うものを食べている気分になりましたね」

いんげん豆のバンズを使ったハンバーガー。豆類はハンバーグにしたりパスタ(豆麺)にしたりとアレンジの幅が広く、とても重宝したそう(画像提供:AdobeStock)

買い物に行きにくい状況で役立つ、フードレスキューのアプリ

厳しいロックダウンが行われなくなった今でも、コロナ禍以前のように気軽に外出はしづらくなっています。そんな中、『Too Good To Go(トゥー・グッド・トゥー・ゴー)』というアプリがスペインで話題を集めています。飲食店やスーパーで出た、まだ食べられるのに廃棄されてしまう食材や料理を割安で提供する、フードレスキューのサービスです。

実際にこのサービスを使っているジャウメさんにお話を聞きました。

「友達に紹介されて『Too Good To Go』を知り、以前から利用していましたが、コロナ禍になってから使う回数が前より増えました。今はスーパーに頻繁に行きづらいですし、お店の出来上がっているもの買うほうが安心でラクなんです。休みの日は外食することもあるので、平日の忙しい日に使うことが多いですね。お店で普通に購入するより、大幅に値下げされた商品を買うことができます

通常で購入するより半額以下で買える商品も多数あり、人気がある商品はタイミングが合わないと売り切れてしまい、購入できないこともあるほどだそうです。ジャウメさんの周りの友人たちの間では国籍問わず人気で、比較的若いユーザーが多いと言います。

『TooGoodToGo』のアプリの提供は2016年にデンマークで始まり、今ではヨーロッパの14カ国で利用可能に(画像提供:AdobeStock)

家計に優しくて食品ロスを減らせるところが、とてもいいと思っています。普段スーパーに買い物に行った際も、賞味期限が近くなり値下がった商品を買うようにしています」

「まるごと調理」で限られた食材を無駄にしない工夫

一方、料理が得意なアンパロさんは、コロナ禍での料理や買い物をどのように工夫しているのでしょうか。コロナ前と後で変わったことについて聞いてみました。

「以前から毎日料理をしていたため、厳しいロックダウンになったときも大きく変わったことはありませんでした。変わったことといえば、買い物に行けなくなったことくらいです。ロックダウン中は、買いたかった食材の多くが品切れで、スーパーは空っぽ。パスタさえありませんでした。さらに、私と娘の両方が新型コロナウイルスを患ってしまい、2週間家から一歩も出られない状態に。インターネットで買い物をすることもできましたが、可能な限り、外との接触を防ぐために、冷凍庫や食料庫にある食材を使って料理することにしました」

買い物に行けず、家族全員コロナに感染。そんな大変な状況の中でも、アンパロさんは幼いころから食材を無駄なく使うことが日常的だったため、クリエイティブに料理を楽しんでいたそう。実際にどのようなことを実践していたのでしょうか。

「特別なことをしている訳ではないんです。例えば、ブロッコリーのオムレツを作るときに、房の部分だけを使って茎は別の料理にするのではなく、1つの料理でブロッコリーをまるごと使います。わざわざ別の料理を作ろうと思うと大変ですし、茎だけ、皮だけの料理は少し寂しいですよね。ねぎやセロリも同じように使うとよいですよ。すべて一緒に調理をすることで、無理なく食材を使い切ることができます

確かにいつも捨てている食材だけで別の料理を考えるのは難易度が高いですよね。最後にアンパロさんおすすめのブロッコリーのスープのレシピを紹介しますので、気になる方はぜひ作ってみてはいかがでしょうか?

「スペインでは『ものを捨てることはよくない』という意識が昔からありますが、若い頃は食材を使い切ることが、なんだか貧しくてそうしていると思われそうで、恥ずかしいことのように思っていました。でも、ずっと家にいて、限られた材料で料理をしているうちに、それがエコや節約につながっていることを実感できたんです。自分のやってきたことが、世界全体にとっても、とても重要なことだと気づきました。すべてを使い切ることは、いまや私の料理習慣の一部になっています

今回取材した三人とも、食材を無駄にしない調理法や買い物の仕方をして、環境にも家庭にも優しい生活を心がけていました。

日本でも近年、食べられるのに捨ててしまう「食品ロス」が問題になっています。2019年に農林水産省が発表した資料によると、日本はアジアワースト1位という食品ロスの多さ。コロナ禍でその意識も変わりつつあると言われているので、私たち日本人も料理を楽しみながら、食材を使い切るようになるといいですね。

コロナ禍で食のあり方も大きく変化していますが、今しかできないこと、今だからできることをはじめていきましょう。

ブロッコリーとズッキーニのクリームスープ

調理時間:25分

<材料> 2人分

・小さめのズッキーニ…1本
・ブロッコリー(茎を含む)…250g
・玉ねぎ(小)…1個
・にんにく…1片
・オリーブオイル…大さじ1
・バター…大さじ1
・野菜ブイヨン…1個(またはベジタブルストック250ml)
・ハーブ類…タイム、オレガノ、パセリ、ドライセロリ、ローズマリー、コリアンダーなど、お好みで適量
・生クリーム…大さじ5
・塩、こしょう…適量

クルトン
・パン…適量
・オリーブオイル…大さじ1
・バター…大さじ1

<作り方>

1.ブロッコリーを酢(分量外)で洗い、小房に分ける。茎の部分は薄切りにする。ズッキーニは洗って四角く切っておく。

2.玉ねぎとにんにくは皮をむき、みじん切りにしておく。

3.鍋にオリーブオイルとバターを入れて火にかける。12を入れて中火で炒める。

4.軽く炒めた後に、野菜ブイヨンと水(250ml)を加える。ベジタブルストックを使う場合は水は不要。

5.弱火で15分ほど煮込み、ふたをしてお好みのハーブを加える。

6.スープを火から下ろし、フードプロセッサーにかける。鍋に戻して火にかけ、生クリームを入れて混ぜる。味見をして塩・こしょうを加える。

7.クルトンを作る。パンを四角く切り、フライパンにオリーブオイルとバターを入れて弱火にかけて炒める。カリカリになったら、キッチンペーパーを敷いたトレイに置く。

8.スープを器に盛り、クルトンをトッピングする。

(TEXT:河野友美子、植木優帆)

#コロナ禍で変わった世界の食卓

本記事は、Yahoo!ニュースとの共同連携企画です。クックパッドニュースでは、コロナ禍で変わった世界の食事情をリサーチ。各国で高まったムーブメントや、人気になった料理を現地の方にお伺いしました。世界の食卓に、明日から取り入れられる食のヒントがあるかもしれませんよ。

取材協力:クックパッド・スペイン

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