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【世界のクリスマス菓子】さくさく食感!ルルーおばあちゃんの「ブニュエロス」

クックパッドニュース編集部

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【世界の台所探検 Vol.33】世界中の台所を訪れて現地の人と料理をする台所探検家・岡根谷実里さん。今回はメキシコの台所から、おばあちゃんの手作りクリスマス菓子の話をお届けします。

クリスマス=ケーキ?

クリスマスの楽しみといえば、クリスマスケーキ。サンタクロースのような彩りがかわいいいちごのショートケーキに、木の切り株のようなブッシュドノエル。最近はバリエーションも増え、買う方も作る方も、今年はどんなケーキにしようかと迷ってしまいまいますね。

世界に目を向けると、ケーキ以外のお菓子でクリスマスを祝う国もあります。 今回ご紹介するメキシコの「ブニュエロス」も、そんなクリスマス菓子のひとつです。

突然はじまるブニュエロス作り

ブニュエロスを教えてくれたのは、メキシコの中西部、パツクアロという町に住むルルーおばあちゃん。おちゃめで働き者でいつも笑顔。夫のフロイおじいちゃんと家庭料理のレストランを営んでいます。 私がこのおばあちゃんを訪れたのは、メキシコの大きなお祭り「死者の日」にお店で料理を手伝わせてもらうため。この町は死者の日で有名で、メキシコ全土のみならず世界中から人がやってきて、町は年に一度の賑わいをみせるのです。

死者の日当日はお店も大忙しでしたが、翌日はひと段落。 お店が落ち着いた頃、「ブニュエロス作ろうか!」と言って教えてくれたのでした。ルルーおばあちゃん、まったく疲れ知らずです。

ブニュエロスとは?

スペイン発祥で、ラテンアメリカの国で広く親しまれているあんなしの素朴なドーナッツ。多くの国ではまんまるなボールの形をしているのに対し、メキシコのは薄く平たくてパリパリなのが特徴です。

ブニュエロス作りは家族の伝統

お店の手伝いにきてくれていた子どもや孫が出入りする中、ブニュエロス作りが始まりました。 まずは1キロの小麦粉を袋ごと逆さまにして台にあけます。

「砂糖をスプーン6杯、塩はスプーン1杯」と言いながら加えます。台に広げられた粉の量に圧倒されていると、「1キロはミニマムよ! いつもはもっと作るんだから」と勢いよく返されてしまいました。 小麦粉で小山を作ったら真ん中をくぼませ、卵を2つ割り入れて手で混ぜます。ルルーおばあちゃんは、先ほどまでのキビキビと厨房で指令を出す様子と打って変わって、まるで砂場で遊んでいるいたずらっ子のような表情で、にこにこしながら小麦粉をもてあそんでいます。

緑トマトの葉を煮出したぬるま湯を加え、さらにこねます。固い生地をこねながら、ルルーおばあちゃんは語りはじめました。 「私のお母さんもそのお母さんも、この方法でブニュエロスを作っていた。ふたりとも毎年クリスマスの時には必ず作ってくれて、他の時期には決して作らなかったよ。クリスマスはブニュエロス。ケーキじゃなくて、ブニュエロスなんだよ」。

ブニュエロス作りは共同作業

生地を分割してねかせたら、次は手でつぶして平げていきます。十分大きくなったなと思っていたら、なんとおばあちゃんはその生地を膝にのせ、さらにのばしていきます。 膝頭にひっかけるようにして引っ張っていくと、向こうが透けて見えるくらい薄くのびます。「破れるんじゃないかな」と私はどきどきするけれど、ルルーおばあちゃんの技術は熟練のもの。「薄い方がパリパリでおいしくなる。他の人はここまでのばさないけれど、緑トマトの葉のおかげでよくのびる生地になるんだよ」と言いながら、トレーシングペーパー並の薄さに広げます。

しかし、ここで問題が。次はこの生地を揚げるわけですが、膝を使っているので立ち上がれません。油の鍋は数歩先。どうするんだろうと思って見守っていたら、ここで夫のフロイおじいちゃんがひょいと取り上げて油に入れます。ルルーおばあちゃんは次の生地をとって延ばし、それをフロイおじいちゃんが次々に揚げていきます。何も言葉をかけあわないのに、完璧なテンポ。息のあったふたりの共同作業で次々とブニュエロスが揚がっていきます。

揚げたてに砂糖をかけてつまみ食いすると、サクッパリッと砕けて、感動的なまでの食感と香ばしさに手が止まりません。

隣で見ていた孫も手を伸ばし、パリパリと心地よい音を立てながら教えてくれました。 「おばあちゃんはブニュエロス作りが大好きなんだ。家族が集まった時とか、機会さえあれば作りたがる。いっぱい作るんだけど、家族や親戚が大勢集まるし、みんな大好きだからすぐになくなっちゃうの。彼女のブニュエロスが世界一!」。 ルルーおばあちゃんの笑顔が移ったかのように、孫もにこにこで笑顔がこぼれそうです。

どこかに行っていた子どもや孫もいつの間にか戻ってきて、お店の厨房はさながら家のよう。おばあちゃんの大好きなブニュエロス作りには、家族との時間が詰まっているのでした。

岡根谷実里さん

台所探検家。世界各地の家庭の台所を訪れ、世界中の人と一緒に料理をしている。これまで訪れた国は60カ国以上。料理から見える社会や文化、歴史、風土を伝えている。 著書に 「世界の台所探検 料理から暮らしと社会が見える(青幻舎 )」がある。

執筆者情報

クックパッドニュース編集部

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