おうち時間が増えたことで料理をする時間が増えただけでなく、“家庭菜園”に興味を持ち始めた人も増えたといいます。とはいえ、まだ家庭菜園にハードルを感じている人も多いですよね。そんな方たちにおすすめなのが、今回紹介する「袋栽培」です。
袋栽培とは、名前のとおり「袋」を使って野菜などを栽培する方法のこと。家庭菜園のハードルをぐんと下げてくれる方法として知名度を高めており、家に畑や庭がなくても、ベランダや玄関、部屋の窓辺など限られたスペースを使って野菜の栽培を楽しめます。
今回はそんな袋栽培の魅力や方法について、「袋栽培でかんたん野菜づくり」の著者で農学博士の梁川正京都教育大学名誉教授にお話を伺いました。
家に庭や畑がない人も袋と土の準備ができれば、すぐに袋栽培を始められます。大型の鉢やプランターは重くて価格も高く初心者はなかなか手を出しにくいですが、袋栽培なら使用済みの肥料袋や培養土の袋など丈夫な袋があれば、すぐに始めることができますよ。しかも、栽培を終えたら袋を片づけるだけなので、移動も持ち運びも簡単です。
袋で栽培できる野菜はたくさんあり、庭や畑で採れるものと同じ野菜を作ることができます。例えば、じゃがいも。10月初旬までに種いもを植え付ければ12月には立派なじゃがいもを収穫できます。小松菜は10月後半に種まきして30日目頃より大きな株から収穫できます。
身近な場所に置けるため、毎日の管理がしやすく、野菜の生長や開花などの様子を観察したり、収穫作業も家族みんなで楽しむことができます。さらに、植物に関わることは体や心の健康維持にも効果があると考えられています。
「自分で安心な野菜を作ることができるだけでなく、毎日管理することで植物の生長の様子を観察できることはお子さんにとってもとても良いことだと思います。今、自分が食べているものがどのように作られているのか知らない子も多いので、管理に関わるとともに、植物の生長過程を毎日見ていたら、野菜が苦手な子も積極的に食べるようになるかもしれません。そういった点でも袋栽培はすばらしいと思います」(梁川教授)
袋栽培の基本の育て方はとてもシンプルです。作業手順は大きくわけて4つです。
玄関先やベランダなど、どこに袋を置いて栽培するか、袋の置き方、栽培する野菜の種類を考えながら、適切な容量の培養土を準備します。土嚢袋や麻製のコーヒー豆袋は通気、排水がよいですが、培養土の袋や肥料袋でもOKです。その際は袋の底に穴を開けましょう。準備した上質の培養土が入った袋の底に穴を開ければすぐにスタートできます。室内で育てる場合は、下に水受けのトレイを敷くのも忘れないようにしてください。
土と袋の準備が終わったら、次は種まき。種まきが難しい場合は苗を購入して植え付けてもOKです。袋に直接種まきをして栽培を開始するか、苗や種いもなどを植えつけて栽培をするかを考えて植えていきます。
栽培を開始したら、水やりをして管理します。袋栽培は袋の容量が限られているため、毎日観察して、水の管理をすることが必要です。
一度に収穫するものや大きくなったものから収穫するものなど、野菜によってタイミングが異なるため、様子を見ながら収穫しましょう。
「毎日見て、土が乾いてきたら水をやるだけなのでとても簡単です。置き場所はできれば日の当たる場所がいいですが、午前中だけでも日当たりのいい場所がよいでしょう。1日中日陰になる場所はなるべく避け、できるだけ少しでも日が当たる場所に置いてください。可能でしたら、日当たりのよいところに袋を移動することも。」(梁川教授)
秋から栽培できる野菜は、葉菜や根菜が多く、背丈もそれほど大きくなるものは少ないため栽培がしやすいといわれています。今から袋栽培を始める方におすすめなのが、小松菜、ほうれん草、ハツカダイコン、小かぶ、春菊。これらは直接土に種をまいて栽培できる野菜なので初心者でも始めやすいですよ。害虫が気になる方は、もう少し涼しくなり虫が減ってくる10月後半の種まきがおすすめです。他に、ダイコン、ニンジンの種まきやブロッコリーの苗の植え付けも可能です。
「種をまく時期を考慮すれば虫の心配はほとんどありません。それでもどうしても虫が気になる方は、コンパニオンプランツをおすすめします。コンパニオンプランツは『共生植物』ともいい、一緒の土に植えるか近くで育てることで、互いの植物によい影響が出る組み合わせのことをいいます。小松菜や小かぶを植えるときは、春菊を同じ袋に植え付けるか、植え付けた袋を近づけて栽培すると虫の害は少なくすみます。無農薬でも病害虫の予防ができ、生育をよくするほか、効率よくさまざまな野菜を育てられることから、家庭菜園でぜひ取り入れたい栽培方法です」(梁川教授)
「自分で作る野菜は無農薬でとても安心ですし、収穫したての新鮮な野菜を食べることができます。しかも、身近に植物があると、子どもも大人も気持ちが落ち着きますよ。また、土いじりに抵抗がある方は、土の代わりに土壌改良材の『バーミキュライト』と液体肥料を用いて、100円ショップで購入できる底マチがあって立つ袋を使った『養液栽培』の方法もあります。また、保存袋を使った種まき育苗法もありますので、ぜひ自分にあった方法で挑戦してみてください。」(梁川教授)
梁川教授の著書『袋栽培でかんたん野菜づくり』には、野菜ごとに、野菜の特徴や種まき、植え付け、栽培管理、収穫の方法をイラスト付きで解説しています。そのほか、詳しい栽培方法や袋栽培のメリットもたくさん紹介されているのでぜひチェックしてみてください。
野菜を育ててみたい! でも畑を用意するのは難しい……。そんな人もこの方法なら大丈夫。本書は、プランターや鉢の代わりに培養土や肥料の袋をそのまま使用して野菜がつくれる「袋栽培」の入門書です。持ち運びも楽チンで、どこでも手軽にできるのが利点。家庭菜園がまったく初めての人でも、ゼロからかわりやすく解説します。掲載の野菜はミニトマトなど40種類。年間の植え付けプランも紹介しているので、一年中野菜づくりを楽しめます!
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