【今週のおすすめの一冊 vol.55】編集部が特に「おもしろい!」と注目した料理にまつわる本をピックアップし、気になる中身をご紹介します。今回は『栗原心平のキッズ・キッチン ひとりでできた!小学生からのクッキング・スタートBOOK』(世界文化社)についてご紹介します!
家族が揃い、のんびり過ごせるゴールデンウイーク。時間がたっぷりある長期休暇は、普段はできない体験ができるチャンス。今年は、一人で料理をする経験を通して、お子さんの成長を感じてみませんか?
「子ども時代の料理体験は、料理家としてはもちろんのこと、日々の仕事、毎日の暮らしにも大きく影響している」と語るのが、人気料理家の栗原心平さん。今回は栗原さんに子どもが幼少期から料理をすべき理由について伺いました!
――栗原さんの料理の原体験を教えてください
栗原:小学校2年生の時から、毎週日曜日の家族の朝食を作っていました。当時は「家族のために頑張るぞ!」ということはなく、たんに早朝のテレビ番組を見るために早起きをしていたんです。当然、お腹が空いて…。自分で朝ごはんを作ろうとスタートしたのがきっかけでした。
次第に、家族から褒められ、期待されるうちにどんどん料理への興味が湧いてきて、ついには料理家の道に進みました。
子ども時代に料理をつくることで学んだ経験は、料理家としてはもちろんのこと、日々の仕事、毎日の暮くらしにも大きく影響しています。
僕が得意とする「段取り力」と「創造力」は、こうした“料理をつくる経験”を通じて身についたと考えています
――なぜ、料理で「段取り力」と「想像力」が身につくのでしょうか?
栗原:はじめに材料をそろえて分量を計る、切る工程はまとめて行なうなど、料理では完成するまでの流れを頭に描きながら作業することが不可欠です。その流れ——すぐ先の未来の将来図を想像して行動できるか否か。そうした「段取り力」を培うには料理が適していると考えています。
僕自身、料理をすることで自ずと段取る力が身につき、時間を上手に使い、効率的に動くことができるようになったと実感しますね。
近ごろの子どもはなにかと叱られることが多いですよね。料理をつくることは、親に褒められるきっかになり、自己肯定感につながると思います。
――幼少期、ご家族に料理を作ってどんな反応がありましたか?
栗原:両親ともに厳しかったので、あまり褒められた記憶はないのですが、小学校高学年のときに、塾に持って行くお弁当をつくっていたときのことです。
確か、つくね、ちくわ、レタスハム巻きに、ごはんは海苔段々にしていたところ、父が「お前がつくったのか!」と非常にビックリしてくれて。それが、はじめて料理で褒められた記憶ですね。
チヤホヤ褒めるのではなく、父も母も「もっとこうしたほうがいい」というアドバイスをくれましたね。
栗原さんが子どもの料理体験において大切だと語るのが、「上手につくれたね!」という家族の言葉。子どもは家族の声で「上手にできた!」「家族にほめられた!」という成功経験を重ねるうちに、「もっとつくりたい!」という意欲を高めるんだそう。
仕事や子育てに追われがちな日常に比べ、時間のあるゴールデンウィーク。子どもの調理工程をゆっくり見守り、完成した料理を親子で味わいながら感想や感謝を伝えるには最適なタイミングかもしれません。
今回は、栗原さんによる初めてのキッズ料理本『栗原心平のキッズキッチン』から、「電子レンジで作る煮込みハンバーグ」レシピを紹介します。電子レンジとガスとでは完成に差が出てしまいがちですが、この「煮込みハンバーグ」は火を使わずとも、ガスと遜色なく、おいしくできあがりますよ!
<材料>(4人分)
ハンバーグ
合いびき肉……500g
卵……1個
薄力粉……大さじ1
塩……小さじ1/2
黒こしょう……少々
ナツメグパウダー……小さじ1/2
水……200ml
赤ワイン……50ml
ソース
デミグラスソース缶……1缶
ケチャップ……大さじ1
中濃ソース……大さじ1
砂糖……大さじ1
塩……小さじ1/2
<道具>
・ボウル
・耐熱ボウル
・ラップ
・電子レンジ
・オーブンミトン
・菜ばし
・スプーン
<作り方>
1. ボウルに、ハンバーグの材料をすべて入れる。手でねるようにして、よくまぜ合わせる。お肉をさわったら、すぐに手を洗う!
2. 上の部分をたいらにしてから、菜ばし1本でタテとヨコに目印となる線をつける(お肉を4等分にするため)。
3. 別のボウル(耐熱)に水、赤ワインを入れる。
4. 手を少しぬらして、お肉をひとつ分取って、だえんのカタチにととのえる。
5. 4個できたら、3のボウルにお肉がかさならないようにならべてしずめる。【ラップをかけて600W
の電子レンジで10分】あたためる。取り出すときは手にミトンをして。ラップは湯気に気をつけてそっとはずす。
6. 小さいボウルにソースの材料を入れて、よくまぜ合わせる。
7. 5のハンバーグに、6のソースをかける。【ラップをかけずに600Wの電子レンジで10分】あたためたら、取り出す。
8. よくまぜ合わせたら、器にハンバーグをもりつけ、ソースを全体にかける。
<気をつけるべきポイント>
栗原:ボウルの大きさに気をつけて。小さいと、ぶくぶくとあふれてしまうので、使う材料に対して余裕のある大きさを選んでください。書籍にも記していますが、ボウルもラップも熱くなりますので、やけどに注意してくださいね。
親御さんにとっては、危険が少なく安心してまかせることができ、子どもにとっては、「ひとりでできた」という体験が自信となり、次へのステップに進む意欲にもなります。料理への好奇心の幅が広がるので、はじめてのチャレンジにおすすめです。
本書には、子どもが一人でつくれる64種類のメニューが掲載。ご飯を炊いたり、ドレッシングの材料を混ぜるなどの「お手伝いからのクッキング」から始まり、料理の基本が身につく「朝食メニュー」、子どもたちに人気の主食や主菜を集めた「満足おかず」など、章を追うことで基礎から応用まで学べる構成になっています。
全ページの漢字にふりがなが振ってあるので、小学校低学年の子どもも読めるようになっています。調理工程は大きな写真付きで、わかりやすく解説されているので、子ども一人でも悩まず調理を進めることができます。
まずは記事内でご紹介したハンバーグに挑戦してみてはいかがでしょうか?大好きなハンバーグを自分一人で作ることが自信に繋がり、きっと料理の楽しみや喜びを味わえるはずです。今年のゴールデンウイークは料理で子どもの成長を感じてみてはいかがでしょうか?
(TEXT:小菅祥江)
幼いころから得意だった料理の腕を活かし、料理家として活動。テレビ、雑誌などメディア出演多数、著書も多数。小中学生を対象としたオンライン料理教室「ごちそうさまクッキングスクール」を主宰。料理家・栗原はるみの長男であり、「ゆとりの空間」代表取締役社長として経営者という顔も持つ。一児の父。