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コラム

物価高くて毎日自炊でも、北欧の人たちが「料理」に疲れない理由

止まらぬ物価高で、ちょっとした外食やお惣菜もなんだか贅沢に思えてしまう今日この頃。節約のためにも自炊しなきゃと思っても、毎日作り続けているとなんだか疲れてしまうことってありますよね。スウェーデン人の夫と子どもの家族3人で長野・松本で暮らす桒原さやかさんが書籍「北欧の日常、自分の暮らし」(ワニブックス)の中で、北欧の人たちが料理に疲れない理由を話してくれています。料理作りがラクになるヒントが見つかりそう。

スウェーデンのスーパーに行ったときのこと。夫が興奮した声で「わぁ、なつかしい〜!」と手に取ったのはGORBYS Pirog(ゴルビスピローグ)という冷凍食品。ミートソースをパン生地で包んだもので、子どものころ、家の冷凍庫に必ず入っていたものなのだとか。

北欧と聞くと、なんとなくナチュラルなものを食べているイメージがある方も多いかもしれませんが、実は冷凍食品が家庭の食卓をかなり助けてくれています。そのひとつFISKPINNAR(フィスクピンナル)という冷凍白身魚のフライ。フライパンで焼いて、その横にゆでたポテトをのせたら、スウェーデン定番の夕食のでき上がり。とてもお手軽なのです。

また、ノルウェーで食卓の定番といえば、冷凍ピザ。GRANDIOSA(グランディオーサ)のピザが人気で、「国民食は冷凍ピザ」と言うひともいるくらい、ノルウェーの食卓には欠かせない存在です。

料理がお気楽なのは、冷凍食品だけではありません。スウェーデン料理と聞いたら、ミートボールが浮かぶ方も多いでしょうか。お肉をこねて、丸めて、焼いている姿が思い浮かぶのですが、実際はスウェーデンの家庭でよく食べられるのはスーパーで売っているでき合いのミートボール。その名も、ママのミートボールという意味のMamma Scans Köttbullar(マンマスコンショットブラー)。フライパンで温めるだけででき上がります。夫も子どものころからずっと食べているなつかしい味なのだとか。

北欧では物価が高いので、3食自炊が基本。共働きの家庭も多く、平日はどうしたってバタバタと忙しいので、「料理はつくれているだけでよし!」と考えているひとが多いようです。

毎日の料理をなんとか乗り切るため、北欧の多くの家庭では、1週間分の献立をまとめて考えています。献立に悩まないように、月曜日はパスタの日、火曜日はお肉の日、水曜日は魚の日などと、ざっくりとメニューを決めている家庭も多いそう。

ペルニッレさんは毎週日曜日の夜に、1週間分のメニューを考えて、ネットスーパーでオーダーしています。頼んだものは月曜日に自宅に届くようになっているそう。平日はピザ、トマトパ スタ、タコス、魚とじゃがいも、ほうれん草のパンケーキなど、10食分の定番メニューを自分で決めていて、同じメニューをとにかくリピートしているのだとか。

「平日は忙しいから30分もあればつくれる料理がほとんど。定番メニューが10食あると、献立を考えるのもラクだし、毎日ローテーションすればちがうものが食卓に並ぶしね」とペルニッレさん。忙しい毎日の中、料理が効率よくできるように、北欧のひとたちもいろいろと工夫しているようです。

料理は簡単なものでいい。無理をしなくていい。今ではわたしも心からそう思うようになりました。子どもが生まれて忙しくなってからは、頭で呪文のように唱えています。

褒められたことじゃありませんが、みそ汁とごはんと買ってきたお惣菜だけの日があったり、テイクアウトのピザですませたり。同じメニューばかり食卓に並ぶなんていう日もよくあります。それでも、夫は何も文句を言いませんし、子どももパクパク食べてくれます。

ところが、「これでいい」と思いながらも、そんな生活を続けているうちに、料理をすること自体楽しくなくなってしまったのです。

しばらく料理スランプが続いていたある日のこと。本屋さんで、あるレシピ本に目がとまりました。あ、この料理つくってみたいかも......。自然とそう思えたら、料理が楽しいという気持ちがむくむくと戻ってきたのです。あたりまえでしょうと言われてしまいそうですが、気を抜きすぎるのもよくなく、何ごとにもバランスが必要なんだと気づかされたできごとでした。

ちなみに、ここまで北欧の料理のお気楽さを書いてきましたが、休みの日にはベイキングをしたり、時間のかかる煮込み料理に挑戦したりするのも、北欧のひとたちの定番の休日の過ごし方。夫婦そろって食べることが好きだというペルニッレさんも、土日は生地からこねてパンを焼くのが楽しみなのだとか。

料理は毎日のことだから、「無理をしないこと」と「楽しむこと」の両方が必要なんだなと思います。3食自炊が基本な北欧のひとたちは、料理をご機嫌に続けるコツをよく知っているようです。

※記事本文は書籍「北欧の日常、自分の暮らし」から一部抜粋しています。

(撮影/松浦摩耶)

著者・桒原さやかさんからのメッセージ

北欧のひとたちは9割以上が子育てしながら、共働きしています。物価が高い北欧では3食自炊が基本。どうにか毎日の料理を乗り切るために、多くの家庭では1週間分のメニューを土日中に考えて、まとめて買い出しをしています。そうすることで、買い出しの手間も減り、節約に もなりますし、何よりも料理へ向かう気持ちの負担がグンと減るのです。

「料理は作れているだけでよし!」と考えているひとも多く、魚のフライなどの冷凍食品も定番ですし、平日は30分もしないで作れる簡単なパスタやスープの一品料理をとにかくリピートしています。毎回北欧のひとたちの暮らしを見ると、無理がなく合理的で、これでいいんだなぁとこちらまで肩の力が抜ける気がするんです。

書籍紹介

居心地のいい場所は自分でつくる―― スウェーデン人の夫と2人の子ども、家族4人で長野県松本市に暮らす著者が、北欧のひとたちから学び、実践していることを綴った、暮らしの本です。北欧の暮らしには、いつも新しい発見があると、著者は語ります。北欧のひとたちは、心軽やかに暮らしているイメージがありますが、取材を通じて、じつは、自分たちと同じように悩みながら過ごしていることがわかったというのです。

「北欧のひとたちは、自分たちなりに試行錯誤をしながら、より心地よく過ごせるように、工夫を重ねていました。そんな様子を知ることで、わたしの暮らしへの気持ちも少しずつ変わってきました」今回は特に、北欧で小さい子どもの子育てをしている 3家族を取材して、暮らしのエッセンスを教えてもらいました。北欧の3家族の暮らしぶりもとっても魅力的!遠い国のすてきな暮らしの中に、わたしたちの暮らしのヒントとなる知恵が満載です。

北欧の日常、自分の暮らし

桒原さやか(くわばら・さやか)

ライター・エッセイスト。「イケア」勤務を経て、ウェブメディア&ショップ「北欧、暮らしの道具店」の初期スタッフとして6年働く。スウェーデン人の夫である、オリバー・ルンドクイストといっしょにノルウェー・トロムソに移住。1年半の滞在後、帰国し、現在は長野県松本市に在住。著書に『北欧で見つけた気持ちが軽くなる暮らし』(ワニブックス)、夫との共著書に『家族が笑顔になる北欧流の暮らし方』(オレンジページ)がある。「北欧、暮らしの道具店」で連載『暮らしのみずうみー松本便り』を執筆中。

>>Instagram:@kuwabarasayaka

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