cookpad news
コラム

25歳で突然「1型糖尿病」に!食事が苦痛に変わった地獄のような日々から食べる喜びを取り戻すまで【前編】

【あすけんのある生活 vol.7】あすけんを始めたきっかけや使い方のコツ、人生に起きた変化など、さまざまな方の「#あすけんのある生活」をお届けします! 第7回目は、25歳で突然「1型糖尿病」と診断され生活が一変した本間太希さんが病気と向き合いながら食べる喜びを取り戻していく様子を、前後編に分けてお届けします。

25歳で突然「1型糖尿病」に

ーー1型糖尿病と診断された時のことを教えてください。

去年の春、発熱と喉の痛みがあり、「風邪をひいたかな?」くらいに思っていました。時はコロナ禍真っ只中。なかなか良くならなかったので病院で検査をしてみましたが、結果は陰性。風邪薬が出て、様子を見るように言われました。

しかし、症状は良くなるどころかどんどん悪化していき、1週間後には呼吸が苦しく、歩くだけでも動悸がするほどに。それでも何とか会社には行っていたのですが、ついに道端で倒れ、緊急搬送されました。

ーー救急車で運ばれるほど体調が悪化していたのですね。

今考えると、口から喉にかけて砂漠になったかのような強烈な渇きを感じ、水を4L、さらに経口補水液を4L飲み、何度もトイレに行くという異常な状況だったのですが、それも熱のせいだと思い込んでいたんです。でも倒れて、ただの風邪ではないことがわかりました。

搬送された病院で告げられた病名は「1型糖尿病」。入院生活は1ヶ月に及び、入院当初から糖尿病の可能性があるとは聞いていましたが、そこまで深刻には考えておらず楽観視していたんです。

けれど、両親と一緒に聞いた医師からの説明でわかったのは、これから毎日4本以上のインスリン注射を打って血糖値をコントロールしなくてはならないこと。原因はわかっておらず、誰にでも発症する可能性があること。現代の医学では治らないこと。それらを聞いた時、あまりのショックで声が出ませんでした。事前に聞きたいことをまとめていたのに、喋ろうとすると涙が出そうになって何も言えず、代わりに両親が質問してくれたのを覚えています。

「症状が良くなって、注射ではなく飲み薬になったりすることはあるのでしょうか?」「残念ながらそれはありません。注射の本数が減ることもありません」という会話から、これからは一生注射を打って生きていかなければならないんだ、という現実を突きつけられました。

発症時。病気の説明を聞いた後は両親とも会話ができないほどショックを受けた

誰にでもなる可能性がある病気

ーーそれはショックが大きいですね…。そもそも1型糖尿病とはどんな病気なのでしょうか?

糖尿病には大きくわけて1型と2型があり、いわゆる「糖尿病」と呼ばれているのは2型を指すことが多いです。どちらも血糖値を下げる働きを持つインスリンが正常に働かず、血中のブドウ糖濃度が適正値よりも高い状態となる病気です。高血糖の状態が長い間続くと、失明などの合併症を引き起こすことがあります。

2型の場合はインスリンが分泌されにくくなったり、分泌されていても働きが悪いという状態が多く、食事療法や運動療法で適正体重を維持することでインスリンの効きを良くしたり、薬による治療を行うこともあります。

一方、僕のかかった1型はインスリンがまったく、あるいはほとんど分泌されないため、インスリンを外部投与することで血糖値を下げるしかありません。何か飲んだり食べたりして糖質を摂取する度にインスリン注射をする必要があるので、多い時には1日8回打つこともあります。

インスリン注射は「毎回けっこう痛い。子どもで発症して頑張っている子とか凄いです」

そしてインスリンを投与することで今度は血糖値が下がりすぎる危険もあり、医者からはどちらかというとこの「低血糖」の方が危ないと言われています。症状が重いと昏睡状態に陥ったりと命に関わるので、なりそうだと感じたらブドウ糖を摂取したりと、常に自分で血糖値をコントロールする必要があります。

一般的に糖尿病患者の9割程度は2型で、1型は数としては少ないですが、子どもや若い世代での発症例も多く、生活習慣や遺伝に関係なく誰にでもなる可能性がある病気です。

※糖尿病はインスリンというホルモンの不足や作用低下が原因で、血糖値の上昇を抑える働きが低下してしまうため、高血糖が慢性的に続く病気です。

1型はインスリン依存型とも呼ばれ、自己免疫疾患などが原因でインスリン分泌細胞が破壊されるもので、インスリンの自己注射が必要です。2型はインスリン非依存型と呼ばれ、遺伝的要因に過食や運動不足などの生活習慣が重なって発症します。その他の特定の疾患やメカニズムによるものや妊娠糖尿病がありますが、糖尿病全体の割合として多くは2型です。
(厚生労働省 e-ヘルスネット「糖尿病」参照)

手の震えが止まらない…食べることが苦痛に

ーー誰にでも発症する可能性があるんですね。病気がわかってから生活はどうなりましたか?

入院した時には10キロも痩せていました。糖尿病は食事から摂った糖をうまくエネルギーに変換できないので、もともとある脂肪を分解してエネルギーを作り出します。そのためちゃんと食事を摂っていても体重が落ちやすいと主治医より説明がありました。

病院の食事は糖が管理されているので、1食でどの程度摂取したかがわかります。それにあわせてインスリンを投与していましたが、退院後は自分で管理しなくてはいけません。なので、とにかく成分表示を見るようになりましたね。わかるものは良いですが、困ったのは自炊。何にどのくらい糖質量があるのかわからないため、しばらくは病院で食べた食事を再現していました。

この頃の食事はまず何を食べるかを決めて、糖質量を計算し、調理して、食べる、という一連の流れで2時間はかかっていました。でも、何を食べても血糖値のことが頭から離れず、「おいしい」と感じる余裕はありません。

そんな生活をしばらく続けてみたものの、思ったように体調をコントロールできなかったこともあり、徐々に気持ちが追い詰められていきました。食事は苦痛な“作業”となり、食べようとすると手が震えて動悸がしてくるんです。ただ、インスリンは先に打っているので何も食べないわけにもいかず、食事代わりに糖分の多い甘いジュースを飲んだりと、今思い出しても地獄のような日々でした。

ーーそれはつらいですね。そこからどうやって食生活を立て直されたのですか?

そんな生活の中、『あすけん』のアプリを知りました。食材を入力するだけで糖質量が表示されることに感激しましたね。それまではいちいち計算していたので、一瞬でわかるなんて、なんてありがたいんだ!と(笑)。この生活に慣れてきたこともありますが、あすけんを使い始めて食事にかかる時間が2時間から30分に短縮されました。

朝食は毎日同じメニューなので「MYセット」に入力しておけば糖質量がすぐにわかって安心です。あすけんを使うことでじゃがいもなど糖質が多いとされる食材も怖がらずにチャレンジするようになったり、食べられるものが増えていきました。

SNSの仲間から気付かされたこと

ーーあすけんがお役に立てて嬉しいです!そこから徐々に食生活が広がっていったのでしょうか。

少し余裕が出てきたら、「同じ患者の人たちは、こんな大変な病気を抱えてどうやって生きているんだろう」と気になり、情報収集を始めたんです。身近に同じ病気の人はいなかったのでネットで検索してみましたが、出てくるのは医学的な情報ばかりで患者の様子が見えてこない。

そこで、SNSで「1型糖尿病」と入れてみたら、たくさんの情報が出てきました。これまで出会ったことのなかった同じ病気の方々の生活を見ていると、みなさんラーメンに寿司、ピザ、うどんなど、これまで僕が避けてきた糖質の多いメニューを食べていて驚きました…!

僕は病気がわかってから血糖値をコントロールすることに必死になりすぎて食事が苦痛になっていましたが、みんな意外と普通のものを食べていることがわかり、「それくらいでいいんだ」と思えたのは大きかったです。

体調はもちろんケアしていかなければいけませんが、それよりも血糖値という数字に縛られ過ぎて好きなものが食べられなかったり、楽しみがなくなったり、落ち込んで鬱になったりと、まさに僕のような状況に陥ることの方が怖いと気づきました。

そこからは徐々に自分でも挑戦するようになりましたね。例えば、今まで避けてきたものを食べて、どこまで血糖値が上がるのかを試してみたり。時には血糖値を測る機械の数値が上がりすぎてエラーになることもあったのですが、僕の場合は喉が異常に渇いたのと、頻尿で夜眠れない状態になるくらいですみました。ただ、おかげでインスリン量の調整のコツは掴めました。

そんなことを繰り返しながら、何を食べたらどうなるかを自分で身をもって体験することで、この病気との付き合い方を学んでいった感じです。おかげで気持ちも少しずつ回復し、今では好きなものを食べて普通に過ごせています。

ーーそうなのですね!ちなみに、好きなものってどんな食べ物ですか?

ラーメンも食べますし、お酒も飲みますよ。病気以前と同じように、食べたいものを自由に食べる生活を送っています。おいしいものを好きな人と一緒に食べるって、生きる喜びですよね。その時間を取り戻しました。

今では居酒屋で友人とお酒を楽しむことも

ただ、あすけんの栄養素グラフで糖質量を確認して血糖値はきちんと管理しているのと、普段はなるべく自炊し、すべての栄養素が適正値になるように心がけています。高得点を目指してサプリも飲み始めました(笑)。食生活が充実したことで、あすけんも以前よりやりがいが出てきました。

※後編では、SNSに励まされた本間さんが自らも病気について発信するに至った背景や、糖尿病への偏見から自転車日本一周を決意する様子についてお届けします。

※本記事は個人の経験に基づいた内容になります。食事や行動などについて医師から指示がある場合はそれに従ってください。治療中の方が実践する場合は必ず医師に相談しましょう。

取材・執筆/城石 愛

<プロフィール>
本間 太希(ほんま たいき)さん
1996年新潟生まれ。大学在学中に飲食事業を立ち上げwebサイトのデザインを担当するが、2022年春に突然の過呼吸で倒れ病院に緊急搬送。原因不明の「1型糖尿病」と診断される。退院後も頻発する低血糖で仕事がままならず、前職の経験を活かし、フリーのWebデザイナーに転向。現在は患者のリアルな日常をYouTubeで発信している。2023年6月1日より自転車で日本一周に挑戦。
クラウドファンディング『GoodMorning』はこちら
YouTubeはこちら
Instagramはこちら
Twitterはこちら
TikTokはこちら

『あすけんBLUEサークル』のご案内

あすけんBLUEサークルは、糖尿病などの食事制限を伴う持病をもたれ、日々大変な管理を頑張るためにあすけんをご利用くださっている方々に向けたコミュニティです。 それぞれの持病に役立つ食事の工夫やメンバーへのインタビュー記事、音声コンテンツの配信などを行っています。誰でも無料で登録できるので、興味を持たれた方はぜひご参加ください。
詳しくはこちら

※本記事は、AI食事管理アプリ『あすけん』の「ダイエットの知識」コラムからの転載記事です。

AI食事管理アプリ『あすけん

ダイエットや健康管理に必要な、食事記録・カロリー計算・体重管理・運動記録などがまとめてできる無料アプリ『あすけん』。食事写真や商品バーコードを “撮るだけ” で簡単にカロリー計算ができ、AI栄養士からあなただけの食事アドバイスが毎日届くので、日々の栄養バランスの改善に役立ちます。

▶︎アプリダウンロードはこちらから!

【PC・スマホサイト】https://www.asken.jp/
【公式Twitter】https://twitter.com/askenjp
【公式Instagram】https://www.instagram.com/askendiet_japan/

関連する記事
人工甘味料は血糖コントロールやダイエットの味方になる?上手な活用の仕方 2023年11月01日 20:00
そのプロテイン、本当に必要?プロテインが必要な人、必要ではない人 2023年11月08日 20:00
血糖値が高いといわれたら?まず見直したい食生活のポイント4つ 2023年11月15日 20:00
野菜ジュースのメリット・デメリットは?上手な活用の仕方 2023年11月22日 20:00
医師が伝授する老化予防。「なぜか若く見える人」は◯◯を食べている! 2023年11月23日 20:00
158cm・60kgから48kgへ!食事管理のみで1年に−12kgを叶えた産後ママの最強ダイエット法 2023年11月04日 15:00
これだけ守れば大丈夫!ダイエット中でも罪悪感ゼロの「おやつ2か条」とは 2023年12月18日 20:00
1年で最もダイエットに適した季節到来!冬が来る前に運動を始めるのがポイント 2023年11月29日 19:00
サウナにダイエット効果はある?流行りの「サ飯」の気をつけるポイントを解説 2023年12月06日 20:00
悪玉コレステロール値が高いといわれたら?食事や食べ物選びの工夫を解説 2023年12月13日 20:00
血圧が高いといわれたら?注意したい食生活と食事のポイント3つ 2023年12月20日 20:00
年末年始の強い味方!暴飲暴食をなかったことにできる◯◯スープって? 2023年12月26日 20:00
年末年始太りに!痩せたい人は「みかん」こう食べて【管理栄養士に聞いてみた】 2024年01月09日 10:00
3%の減量で血糖コントロールが改善?減量を達成するための実践法を伝授! 2024年01月03日 20:00
肝機能の数値が高いといわれたら?原因となる生活習慣や改善のポイント4つ 2024年01月10日 20:00
何でも食べていい?「16時間ダイエット」でやってはいけないNG行動! 2024年01月17日 20:00
知らないうちにとりすぎてるかも!?炭水化物の過剰に気をつけたい食べ物7つ 2024年01月24日 20:00
朝食にコーンフレークは危険!?「老けない主食ランキング」の結果は… 2024年01月19日 17:00
朝食に◯◯を食べている人は老けるのが早い⁉︎若さを取り戻す「老けない主食」ランキング 2023年12月14日 20:00
【がん専門医おすすめ】がんリスクを減らすフルーツやおやつとは? 2023年12月27日 20:00
【管理栄養士が伝授】「糖質オフ」より「糖質オン」のほうがキレイにやせるってホント? 2023年12月22日 21:00
医師が勧める「痩せる炭水化物」って?糖質制限ダイエットをする人に知ってほしい真実 2024年01月15日 19:00
ダイエットに間食はNG……ではない!太りにくい体を作る「戦略的な間食」を医師が伝授 2024年01月10日 19:00
これって冬バテ⁉︎乾燥や寒い季節の不調を撃退する健康食材5選 2024年02月07日 20:20
筋肉不足で糖尿病リスクにも?!女性の痩せによる健康リスク 2024年02月14日 20:00
毎日プチ運動をしたら1年で何キロやせる?習慣化したい運動を紹介 2024年02月21日 20:00
朝までぐっすり眠りたい!質のよい睡眠をとる工夫 2024年02月28日 20:00
【医師が教える】老けて見える人、見えない人の「食習慣」の差 2024年01月30日 20:00
不摂生な生活で激太り!座りっぱなしの漫画家が一念発起して−25kgを達成した「期間集中ダイエット」 2024年02月03日 09:00
挫折とリバウンドを乗り越えて−16kg!成功を支えたのは「アプリで繋がった仲間たち」 2024年02月10日 09:00
「老け見えしない」50代のダイエット術!4カ月でー6kg、更年期症状も改善した方法 2024年02月17日 09:00
医師に聞いた!糖尿病を「改善させる食事」と「悪化させる食事」 2024年02月28日 12:00
酸化ストレスを減らそう!医師が教える「老化を早める食事」と「老化を防ぐ食事」の違い 2024年03月30日 10:00
早めにとりかかろう!花粉症対策 2024年03月06日 20:00
栄養士がアドバイス!口内炎の原因と食事でできる対処法 2024年03月13日 20:00
隠れ脂質を見逃すな!脂質の摂りすぎにつながる要注意な食べ物 2024年03月20日 20:00
不調の原因は「春バテ」?対策をして季節の変わり目を乗り切ろう! 2024年03月27日 20:00
ある成分を制限することが大事!「老化を防ぐ」ための食生活のポイント2つ 2024年03月29日 17:00
“腸のメンテナンス”がカギ!「花粉症」を抑える食事と生活習慣を医師が解説 2024年03月13日 12:00
糖尿病予防、中性脂肪減にも効果的 健康意識の高い医師が「毎日食べている野菜」とは 2024年03月27日 12:00
子どもの能力は15歳までの食べ物で決まる⁉️“脳”の能力アップに必要な5つの栄養素とは 2024年02月29日 20:00
朝と夜に◯◯を食べると10歳も若返る⁉️医師が教える“細胞を元気にする”食事法とは 2024年02月22日 20:00
【医師が伝授】ポイントは油!認知症リスクが最大23%下がった○○食事法とは 2024年02月19日 19:00
睡眠で変わる!質の良い睡眠で得られるうれしい効果6つ 2024年04月10日 20:00
心臓病や不整脈のリスクが減る!医師がオススメする最も効果的な「コーヒーの飲み方」 2024年04月10日 12:00
食べ歩きが趣味の30代グルメ夫婦!栄養知識ゼロではじめたダイエットがきっかけで大きく変化した食習慣とは? 2024年03月23日 20:00
120kgから55kgになり人生が一変!体型、体調、メンタルまで整った−65kgダイエットの中身 2024年03月30日 18:00
「一日三食規則正しくご飯を食べる」は逆にNG!?人生100年時代を元気に長生きするための食習慣とは 2024年03月26日 19:00
寝る直前に水を飲むと心筋梗塞になりやすい⁉️「心臓力」を高めるための食習慣とは 2024年04月20日 20:00
趣味のロードバイク大会を目標に1年で−15.5㎏!50代が実践した、無駄な間食がなくなる「1日4食」の食事術 2024年04月20日 17:00