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インタビュー

AI技術が進歩しても手に入らない力がある!超進学校が「調理実習」に力をいれる理由とは?

「料理は女性がするもの」かつてはそんな風潮が学校教育にも根強く残っていました。家庭科の男女共修がスタートして約30年。現在、教育の場で家庭科・調理実習はどのように扱われているのでしょうか?家庭科の調理実習の歴史とともに進化する家庭科・調理実習の実態に迫ります。

調理実習の思い出はありますか?

「男子厨房に入らず」とはいつの時代の話でしょう。かつては外で仕事をするのは男性の役目、家庭に入って料理をするのは女性の役目という風潮がありましたが、そのような役割分担はなくなりつつあります。

ただ、そのような風潮がなくなってきたのはつい最近の話。それは学校教育からもわかります。今や男女問わず行なっている家庭科の調理実習は、約30年前には女子生徒だけが受けるものでした。

家庭科の男女共修がスタートした歴史は意外と浅く、中学校は1993年、高校は1994年から。それまでは「男は仕事、女は家庭」という性別役割分業の考え方が一般的に根付いていたため、男子が技術、女子が家庭科と男女別に履修科目が分けられていました。ということは、それ以前に中学・高校に通っていた男性(1977年以前に生まれた男性/現在46歳以上の人)は中学・高校で家庭科の調理実習の経験がないということになります。

なぜ男女共修になったのか?

それが今から44年前の1979年、第34回国連総会において女性差別撤廃条約が採択されると、日本もこの条約を1985年に締結しました。そして家庭科を女子のみが履修することが条約違反になることから、政府による議論が重ねられ、1993年に男女共修の取り組みが始まります。

変化しつつある「調理実習」

みなさんは調理実習で何を作ったか覚えていますか?教科書通りに料理を作って食べるという授業を行なっている学校もありますが、最近では「新しい形の調理実習」が増えてきているといいます。先生が提示した料理を作るだけでなく、自分でメニューを考えたり、食材を調達するところから始めるなど、作ることだけではない取り組みも盛んに行われています。

そこで今回は、調理実習に力を入れている学校のひとつで、神奈川県トップの男子進学校でもある聖光学院中学校・高等学校の工藤校長に「調理実習が生徒に与える影響」や「調理実習を見直したことで起きた変化」などについてお話を聞いてみました。

工藤校長「料理は男女関係なく生活をするうえで必要なことなので、我が校ではしっかりと学ぶ場を設けたいと思っています。例えば、授業時間。集中して調理ができるように午前と午後丸一日調理実習の時間にあてています。また授業内容も先生に教えてもらったレシピをそのまま作るのではありません。学校は料理のプロになるための練習の場ではないので、技術よりも日常生活に活かせる知識や感性を養える場にしたい。それが我が校の調理実習の目的です」

教科書通りの授業ではない学びを!

工藤校長「今回の授業のメニューは『トマトパスタ』と『サラダ』でした。でも、トマトパスタと一口にいっても作る人によって味も違うし、材料の切り方や味付けによっておいしさも変わりますよね。学生たちにはそういうことを教えることが大事だと考えています。レシピ通りに作るとその面白さに気づけないので、“自分で考えながら作ること”を意識したプログラムを取り入れています」

にんにく多め、トマトは細かく刻むなど自分のテーマや好みにあわせたレシピを完成させていく

工藤校長「まさに料理はアート!本当に奥が深いですよね。見た目の美しさ、味のおいしさ、作るための技術、このすべてを総合的に完成させるためには感性がないとできません。こればかりは今話題になっている“chatGPT”でも持ちえない部分です。AI技術がどんどん発展していく中で、こうした感性を育てていくためにも料理を学ぶことはとても大切なことだと思っています」

個性が光るレシピづくり

実習風景をのぞいてみると、2人1組になりそれぞれの味を作成。パスタソースのにんにくの風味を出すために細かく刻んでいる生徒もいれば、トマトの食感を残すために大きくカットしている生徒もいて、作る人によって見た目も味もさまざま。また、サラダ作りでは調理前にレシピ例として紹介された「ドレッシングの黄金比(油3:酢2:塩1)」を参考に、生徒たちはオリジナルのドレッシングを製作。

作り終えた生徒たちからは「パスタとソースを絡めるのが難しかった」という意見や「ドレッシングにはちみつを加えたことで思ったよりも甘くなってしまった」「オリーブオイルを多めにいれたらおいしくできた」という声も聞かれました。中には「初めてりんご酢を食べてみた!」という生徒もいて、穀物酢とりんご酢の味の違いをまるで実験のように楽しんでいました。

料理同好会も発足

さらに聖光学院では、料理好きな男子生徒が中心となって約2年前に「料理同好会」を立ち上げました。現在部員は33名。文化祭などで料理を提供するなど活発的な活動を行なっています。どういった経緯で同好会を作ったのでしょうか?同好会の発起人である林 恭永さん(高校2年生)にお話を聞きました。

――同好会を作ろうと思ったきっかけはなんですか?

「もともと料理が好きだったということも理由のひとつではありますが、ひとりではなく友達と料理を楽しむ場、仲間に料理を作ってあげたり、作れた喜びを共有できる場がほしいと思って作りました」

――料理を始めたのはいつからですか?

「中学3年生のはじめくらいでした。それまで母親の料理の手伝いはしていましたが、ちゃんと料理をしてみようと思ったのはそのくらいの時期からです」

――料理を作るうえで心がけていることは?

「しいていうなら、楽しむことだと思っています。僕たちの同好会はスキルをあまり重要とはしていません。正直なところ、料理を本気でやりたいなら料理教室に行った方がはるかにうまくなると思います。でも僕たちはそれよりも料理教室では学べないことをやりたいなと。メンバーの中には、卵が割れないという人もいました。そんなふうにまず最低限から教えあうところから始めています。楽しみたいけど料理教室に行くのはハードルが高いという人もできる環境づくりを心がけて、まず料理を楽しむようにしています」

――どんな料理を作っていますか?

「衛生管理上、生のお肉や魚を持ち込めないなど、使える食材に制限があるため、作りたい料理があったとしてもレシピ通りに作るのが難しいんです。なので、レシピは参考程度で、それを僕たち用にアレンジする形で作っています。そんなふうにしてこれまで作ってきたのが、カレーやエッグベネディクト、ワッフルです」

――活動をしてよかったと思ったことは?

「学校にはオーブンもないので、オーブンを使わずに作れるレシピを探してお菓子を作ったりもしました。そんなふうに制約のある中でもおいしくできる料理を探せるようになったり、作れるようになったのは、とてもいい経験でした。これから一人暮らしをするときなど日々の生活の中でも役に立ちそうだなと思います」

改めて「男子厨房に入らず」とはいつの時代の話でしょう。調理実習がなかった時代から、男女関係なく今は日々の暮らしに役立つ知識や感性を養う場として変化している料理教育。家庭科の授業のひとつにすぎなかった調理実習がこんな変化を遂げているとは驚きですね。

みなさんにとって家庭科の調理実習といえばどんな思い出がありますか?

取材協力

聖光学院中学・高等学校

神奈川県横浜市に所在する、中高一貫教育の私立男子中学校・高等学校。東京大学合格者を毎年60名ほど輩出する高い進学実績を誇る、カトリックのミッションスクール。
公式HP>>

クックパッド家庭科

クックパッド株式会社が実施する、料理を中心にした教育プログラム。レシピのない中で創造力を活かして作る調理実習「自分好みのトマトパスタを作ろう」や、料理から環境問題を考える「カーボンカードブラックジャック」など、生徒一人一人が考え、楽しく学ぶことができる内容が特徴です。現在は主に中学校と高校を中心に出張授業にて提供しています。
公式HP>>

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