お米のおいしさをキープする保存法や正しいお米の研ぎ方など、意外と知らない「お米のきほん」を、山形県の小さなお米屋さん(有)阿部ベイコクさんに教えていただきます。ちょっとした工夫や知恵で、いつものご飯をもっとおいしく。知って楽しいお米の情報を月に1回お届けします。
「ご飯の冷凍はラップで包む?タッパー?専用容器?どれがいいの?」
「冷凍庫に入れるタイミングは、アツアツで?冷めてから?」
「保存期間はどれくらい?日持ちするの?」
など気になりますよね。
そんなあなたに「ご飯の冷凍」について、山形県の小さなお米屋「阿部ベイコク」が解説します。冷凍ご飯は美味しくない、なぜか失敗してしまう、という人でも「水分と温度」に気を付けるだけで、納得のいく冷凍ご飯を簡単につくることができます。
ご飯を上手に冷凍できたら、ちょっとしたときや急ぎのときに、とっても便利ですよね。それに、毎回炊飯する手間が減り、電気代の節約までできちゃいますよ。
この記事で紹介する方法をお試しいただくだけで、炊き立てのような美味しさでご飯を冷凍保存することができるようになります!
冷凍ご飯を作るコツは次の5つです!
(1)「150g」づつ小分けする
(2)「炊き立て」を冷凍する
(3)「ラップ」で包む
(4)「あら熱」をとる
(5)スピーディーに「冷凍」する
冷凍ご飯の小分けは「お茶碗1杯分(約150g)」がベストです。
150gキッチリと計る必要はありませんが、この分量より多すぎると冷凍・解凍に時間がかかってしまい、味や食感が落ちてしまいます。
中盛り:約150グラム
大盛り:約200~240グラム
1食150グラムじゃ足りない…、という人は「100~120g×2個」にするなど、ご家庭にマッチしたグラム数で工夫してみてください。
ご飯は冷凍することで、冷凍前より美味しくなることはありません。そのため、もっとも美味しい「炊き立ての状態」が冷凍保存に適しています。
長時間保温したご飯や、冷めてしまったご飯はNGです。食べきれないときは、新鮮なうちにすぐに冷凍保存しましょう。
ご飯をラップで包むときは、平たく均一の厚さ(2cmくらい)にします。急速に冷凍できて、解凍するとき均一に温まります。
この手順は水分を逃がさないように、すばやく湯気(ゆげ)ごとラップに包み、水分を閉じ込めるのがコツ。
また、ご飯を押しつぶしてしまうと、解凍した時にかたまりになってしまうので、ふんわり盛り付け、空気が入らないようにラップで包みます。
四角い型より「丸型」の方が解凍ムラが起こりにくいので、冷凍庫のスペースと相談しながらチャレンジしてみてください。
「ラップで包む」→「フリーザーバッグ(袋)」ならベスト
ラップで包む理由は、密着するので空気に触れず、水分を通さないので、ご飯の酸化と乾燥を防ぐことができるからです。
さらに、ラップで包んだままジップロックなどのフリーザーバッグに入れておけば、におい移りも防ぎ、美味しさが長持ちします。
「あら熱」とは、手でさわっていられないほどアツアツの高温から、ちょっと熱いと感じる程度の40℃くらいまでを指します。
通常の冷蔵庫の場合は、アツアツのまま冷凍庫に入れてしまうと、霜や温度上昇で他食材への悪影響となるので、あら熱をとってからになります。
ただし、ご飯が完全に冷えきってしまうと美味しくなくなるので、40℃を目安に冷凍庫に入れましょう。
急速冷凍付きの冷蔵庫の場合は、約70℃まで冷ませば冷凍庫に入れて大丈夫です。
完全に冷凍されるまで時間がかかればかかるほど、美味しさが失われてしまうため、冷凍スピードを早めることもポイントのひとつです。
冷凍庫のアルミプレートがあれば、できるだけ密着させ、「急凍モード」があれば必ず活用しましょう。 (アルミホイルで包む方法もありますが、手間のわりに急速冷凍の効果は薄いので必要ございません)
ご飯は冷凍保存していても完全に劣化しないわけではありません。冷凍庫を開け閉めなどの温度変化をできるだけ抑え、保存期間は長くても「約1カ月」を目安に早めに食べましょう!
「お米」を炊飯すると、美味しい「ご飯」ができあがります。このとき、お米に含まれる「デンプン」が大きく変化しています。
カッチカチのデンプンに「水と熱」を加えると、ふっくら柔らかくなります。これを「デンプンの糊化(こか)」といいます。焼きたてのお餅やパンもこの状態。
しかし時間が経つと、徐々に水分が失われ、冷めて固くパサパサした美味しくないご飯になってしまいます。これをデンプンの「老化(ろうか)」と言います。
一度「老化」したデンプンは、加水・加熱をすることで「糊化」し、できたてのような食感が味わえます。(ちなみに「糊化=アルファ化」「老化=ベータ化」とも言います)
この「デンプンの糊化と老化」を利用した食品が、はるさめ・インスタントラーメン・アルファ米などになります。
デンプンは「加熱・加水」で美味しくなりますが、冷凍ご飯の場合は電子レンジなどで「加熱のみ」になります。通常「加水」はしません。
そのため、できるだけ水分を保ったまま冷凍することが美味しく保存する重要ポイントになります。
ちなみに、かぴかぴご飯は少し水分を与えて再加熱すると、ある程度食感が良くなります。しかし、お米ひと粒ひと粒に、均一かつ適量の吸水をさせることは難しいので、そもそも水分を逃がさないことが大事です。
一般に、デンプンは2~10℃以下で最も老化速度が速くなると言われています。家庭用冷蔵庫は2~6℃ですので、保存しているつもりが、むしろ老化を速めていることになります。
0℃以下になればデンプンは老化しないので、ご飯は冷蔵ではなく「冷凍」で保存がベストになります。
少し難しい話になりますが…、食品を冷凍するとき食品内の水分が「氷結晶(こおりの結晶)」となり、食品組織はダメージを受け、品質が低下します。
そのため、ご飯をもっと美味しく冷凍するには、氷結晶によるダメージをできるだけ減らす必要があります。
氷結晶には「最大氷結晶生成帯」という、氷結晶が大きくなりやすい温度帯(マイナス5℃~マイナス1℃)があります。
氷結晶が大きくなれば食品へのダメージも大きくなるので、この「最大氷結晶生成帯」を30分以内に通過させる冷却スピードが理想的。大手家電メーカーのパナソニックや日立でも冷凍の重要ポイントとしています。
①小分けは「薄く、均一の厚さ」に
ご飯の小分けは、なるべく薄く、均一の厚さ(2cmくらい)にしましょう。
②他の食品に触れない、冷風口をふさがない
冷凍庫に詰め込みすぎや、冷風口をふさいでいないかチェックしましょう。
③一度に大量の冷凍をしない
小分けしたご飯の個数や量が多すぎると、冷凍に時間がかかってしまいます。ご家庭の冷蔵庫の説明書などを参考に適量を。
ご飯を美味しく冷凍保存するには「水分をにがさないこと」と「スピーディーな冷凍」が必要不可欠なため、タッパー・保存容器はあまりオススメできません。
タッパーや保存容器は、ご飯とフタのあいだに空間ができてしまうので、冷凍庫の冷風がご飯に直接あたらず冷却スピードが落ちます。
また、ご飯が空気と触れることで「乾燥・酸化」したり、空間にある温かい空気が冷えることで霜・露の原因にもなってしまいます。
空間ができないようギリギリまでご飯を詰めた場合は、ご飯がぶ厚くなりすぎて、これも冷凍に時間がかかってしまい、温めるときも解凍ムラの原因になってします。
「タッパー・保存容器」は冷凍庫内にキレイに収納できるというメリットも大きいです。
どうしても使いたい人は、ラップで包んでから、タッパー・保存容器に入れ、冷凍庫内では冷凍されるまでフタをしないでおくと良いです。
冷凍ご飯は、美味しい状態で冷凍することがポイントです。
一度、冷凍→解凍をしたご飯はその時点で、炊き立てと比べ美味しさが落ちているので、再凍結しても美味しくありません。
「150g」づつ小分けする
「炊き立て」を冷凍する
「ラップ」で包む
「あら熱」をとる
スピーディーに「冷凍」する
冷凍ご飯は、急ぎで必要なときに便利です。上手に使いこなせば、電気代の節約や時短にもなります!ぜひ、ご飯の美味しい冷凍保存にチャレンジしてみてください。
※本記事は、 (有)阿部ベイコクのwebコラムからの転載記事です。
画像提供:Adobe Stock
山形県庄内地方にある小さなお米屋「(有)阿部ベイコク」です。地元農家様との信頼、米屋ならではの精米技術を武器に、新鮮なお米を全国へ。県産ブランド米「つや姫・雪若丸・はえぬき」をはじめ、価格帯に合わせリーズナブルなオリジナルブレンド米も多数ラインナップ。米どころ山形から皆さまの食卓へ、美味しい笑顔をお届けします。