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コラム

1日に飲むコーヒー、何杯が正解?医師が教える「カラダの新常識」

当たり前だと思ってた健康や食の常識、実は間違ってるかも…?この記事では、医学博士・川嶋朗先生が監修された「知らないと怖ろしいカラダの新常識100」(アチーブメント出版)から、新しい健康の知識を少しだけお届けします。知識をアップデートして、健やかな暮らしを手に入れましょう。

コーヒーのポリフェノールで脳梗塞を防げる

コーヒーには近年、さまざまな健康効果が報告されています。糖尿病や認知症の予防や肥満防止、または大腸がんや肝がんを防ぐ可能性など、コーヒーに含まれるカフェインやポリフェノールを中心とした成分による効果が注目されています。なかでも注目すべきは、脳梗塞などの「脳卒中の予防」に効果的であるという点でしょう。

2015年5月に、国立がん研究センター予防研究グループは、コーヒーを習慣的に飲む人は心臓病や脳卒中、呼吸器疾患による死亡リスクが低下するという結果を報告しました。同研究では、国内の45〜74歳で循環器疾患、がんの既往のない方約8万人を対象として調査が行われ、脳梗塞の発症リスクを比較しました。

その結果、コーヒーを飲む習慣のある人は、まったく飲まない人に比べて脳梗塞の発症リスクが減少していたのです。海外ではさらに大規模な調査が行われ、約40万人を対象とした研究で、コーヒー摂取は脳卒中の死亡リスクを下げる報告がなされました。

ちなみにコーヒーの摂取量ごとに同リスクを比較した研究もあり、それによれば1日3〜4杯程度のコーヒー摂取が最も脳卒中のリスクを低下させるという結果が得られたそうです。食後の「アフターコーヒー」はずっと以前から定着している食習慣の一つでもありますが、そこにはきちんとした医学的なエビデンスが存在していたということ。毎日適量を飲むことで脳卒中の予防に役立てましょう。

長生きしたければ1日4杯のコーヒーを飲みなさい

脳梗塞にコーヒーが良いと述べましたが、そもそも日本人はコーヒーをよく飲む国民です。ある民間企業が2022年に行った「日常生活とコーヒーに関する調査」では、コーヒーを毎日飲む人は7割強に上ったといいます。加えて、コーヒーを飲むことで期待する効果は、「気分転換」「リラックス効果」が各5割強、「眠気を覚ます」が3割強、「集中力を高める」が2割弱という結果が得られました。

この中に「健康な体をつくるため」という答えが入っていないのは実は意外で、コーヒーには脳梗塞の効果だけでなく、長寿をはじめ、さまざまな病気予防に効果があることが近年の研究で明らかになりつつあります。少し前までは、コーヒーに含まれるカフェインを“敵視”して、飲み過ぎると心臓に悪い、高血圧になる、不眠症につながる......といったマイナスイメージを抱く人は少なくありませんでした。

ところが2012年にアメリカ国立衛生研究所(NIH)が行った研究によると、1日2〜6杯のコーヒーを飲む人は、飲まない人に比べて全死因死亡率が男性の場合は約10%、女性は約15%低かったとの結果が得られました。なかでも1日に4〜5杯飲む人の死亡リスクが最も低いと結論づけました。コーヒーには肝臓病や2型糖尿病、心臓疾患や認知症、さらにはがんの予防にもつながるなど、さまざまな健康効果があると考えられています。日本人の世界的な寿命の長さは、このあたりにも理由の一つがあるのかもしれませんね。

画像提供:Adobe Stock

監修・川嶋医師のメッセージ

今はさまざまなメディアを通じて、誰もが簡単に医学知識を得られる時代です。なにか体の不調を感じればスマホを開いて情報を手に入れ、自分の体の状態を知ろうとする人は多いでしょう。もちろん、即座に情報を得られる世の中は便利であり、日々の健康に役立つ要素は非常に多いといえます。

ただ、そこで留意すべき点があります。ちまたに氾濫する情報を鵜呑みにし て、軽はずみに自分の中に取り入れてしまうことは避けなければなりません。 なかには、古くから伝わる「迷信」のような話を安易に踏襲し、世の中に喧伝しているような、間違った「常識」も少なくないのです。

いうまでもなく、医学はあらゆる領域で日々進歩し、最新のエビデンスとともに「常識」も刷新されています。従来正しいと思い込んでいたことが、実はそうではなかったという事例も数多くあるわけです。

一般の方が、あらゆる事柄をふだんの生活の中で把握していくのは難しいだけに、できるだけ新しい情報にふれ、これまでの健康常識をアップデートできるような書籍があればいい。そう考えて本書の監修をお手伝いしました。

私は臨床を通じて、いつも患者さんには「自分の体の具合をもっとも理解できるのは、医師ではなく患者さん自身」だと話しています。つまり病気や不調の際には、患者さんご自身が自分の体のことをよく知り、状態の改善に向けて自ら努力することが何よりも大事ということです。そのためにも、従来の固定観念にとらわれない新しい「常識」を知り、自身の健康を自分の手でつくっていくことが必要です。本書がそのための一助になれば幸いです。

書籍情報

間違った知識があなたを蝕んでいる。知っているようで知らないカラダの常識をアップデート。【高血圧には減塩よりも減糖が効果的】【グルテンフリーで健康になる? むやみに信じるのは禁物】【便潜血検査で大腸がんの早期発見はできない】【歯周病、睡眠不足、カビが認知症を引き寄せる】など、正しい知識があなたのカラダと健康を守る!

★鎌田實氏、推薦
(諏訪中央病院名誉院長、地域包括ケア研究所所長)
「いい本! 元気に長生きするためには、正しい知識を知っておかなければなりません」

◎コーヒーのポリフェノールで脳梗塞を防げる
◎植物性脂肪は動物性脂肪より健康的とはいえない
◎前立腺がんが日本の男性に大増加しているワケ
◎手足のしびれの原因、もしかして糖尿病かもしれない
◎12年ぶりに改訂された躁うつ病の治療方針
◎銀杏には中毒物質が含まれるってホント?
◎認知症に効果を発揮するビフィズス菌がある……etc.

川嶋 朗(かわしま・あきら)

総合内科専門医、医学博士、神奈川歯科大学大学院統合医療学講座特任教授。
1957年、東京生まれ。北海道大学医学部卒業後、東京女子医科大学入局。東京女子医科大学大学院、ハーバード大学医学部マサチューセッツ総合病院、東京女子医科大学附属青山自然医療研究所クリニック所長、東京有明医療大学保健医療学部鍼灸学科教授・東洋医学研究所付属クリニック自然医療部門医師を経て現職に。日本初の高等学校機関による統合医療教育を設立。漢方をはじめとするさまざまな代替・伝統医療を取り入れ、西洋医学と統合した医療を手がけている。西洋医学の専門は腎臓病、膠原病、高血圧など。統合医療SDMクリニック院長。

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