料理の長寿番組「きょうの料理」(NHKEテレ)で40年以上にわたって、お茶の間に家庭料理を伝え続けている現役最高齢91歳の日本料理研究家・鈴木登紀子さん。“ばぁば”の愛称で知られる鈴木さんに、“料理のイロハ”を教えてもらう、短期集中連載です。
◆短期集中連載・登紀子ばぁばに学ぶ!料理の基本
こんにちは、“ばぁば”こと、料理研究家の鈴木登紀子でございます。今日は食材を使い切る方法をいくつかご紹介したいと思います。ばぁばが頻繁に使う口ぐせのひとつに「もったいない」があります。“けちんぼ”ではないのよ。ものを生かしきる、材料を大切に扱うという、日本人が昔から大事にしてきた価値観を表現する美しい言葉です。
使い切りの知恵は、明治生まれの私の母・お千代さんから授かったものです。ちなみに私は大正生まれよ。お千代さんは、今日、この食材がこの分量だけあるとしますと、さて、何回に分けてどう使い切ろうと瞬時に判断するのです。
小松菜やほうれん草などの葉ものは、1把ゆでたら全部使い切らずにほんの2〜3株残しておく、というようなこともよくしておりました。そうして翌日、焼き魚や煮魚にそっと添えるのです。
さらに、油揚げと大根のみそ汁にぱっと放して青みを加えたり、切り干し大根の酢のものにも、残しておいた小松菜をすこぅし混ぜることで、青々とした甘酢漬けができます。次の食事を考えてちょっとずつ残して使い回すこともみな、私は母の手元を見て学んだのです。
お大根は、今ちょうど旬を迎えつつありますわね。時のもの(=旬の食材)は捨てるところなどほんのわずかです。
葉の柔らかいところはゆでて刻んでごま油で炒め、酒としょうゆで味を調えます。こうすれば、ご飯のおともにぴったりの副菜のできあがり。あるいは生のまま刻んで煮ものやみそ汁の青みに、塩をまぶしてご飯に混ぜ込んで菜飯に…と大活躍です。
厚めにむいた大根の皮はきんぴら風に炒めたり、細切りにして一日風干しをし、切り干し大根ならぬ“生干し”大根の風味を楽しむことができます。私がよく作るのは、大根、かぶ、にんじんの皮とセロリ、残った根菜類を昆布と一緒に瓶に詰めた和風ピクルスです。
大根や白菜、長ねぎなど、一度で食べ切れずにかさばるお野菜は、乾いた新聞紙でひと巻きし、その上から湿らせた新聞紙で重ね巻きして、段ボールや木箱などに入れてベランダに置けば長持ちいたします。土のものは土の中にあるような環境を作ってあげればよいの。冬のパリッとした冷気は天然の冷蔵庫。電気代も節約できます。「もったいない」解消の第一歩ですわね。
取材協力:小学館
「ばぁばの料理」最終講義
鈴木登紀子・著
定価(本体1,400円+税)
“フツーの主婦”から46歳で料理研究家としてデビューした、登紀子ばぁばの 約半世紀におよぶ料理人生を語り下ろした1冊。厳選した20点のレシピつき。