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コラム

【知らないと危険】調理機能の付いていない炊飯器を「炊飯以外の調理」で使ってはいけない理由

忙しい主婦のお助け料理として話題になっている「炊飯器調理」。しかし、調理機能付きではない一般の炊飯器で「炊飯以外の調理」をすることはNGとされています。 今回は、調理機能が付いていない炊飯器を炊飯以外の用途で使用する危険性について、タイガー魔法瓶株式会社・広報宣伝チームの林 優紀さんに教えていただきました。

「炊飯コース」で炊飯以外の調理をするのは危険

――最近、材料を入れたらスイッチを押すだけで一品が完成する手軽さから「炊飯器調理レシピ」が人気です。しかし、メーカー各社は、ご飯を炊く以外の目的で炊飯器を使用することは推奨しておられませんよね。炊飯器で炊飯以外の調理をすることは問題があるのでしょうか?

そうですね。当社でも、実際にケーキや角煮を炊飯器で作ったという消費者の方のコメントをSNSなどで確認しています。ですが、実は炊飯メニューで炊飯以外の調理をすることは、とても危険な行為なんです。

タイガー魔法瓶株式会社・広報宣伝チームの林 優紀さん

タイガー魔法瓶でも、調理や煮込みメニューを搭載していない機種で、ご飯を炊く以外の目的で使用することは禁止しています。炊飯器が壊れる恐れがあるだけでなく、事故やケガにつながる危険があるからです。

ほとんどの炊飯器の取り扱い説明書にはちゃんと注意事項として記載されているので、一度ご家庭でもチェックしてみていただければと思います。

――具体的に、炊飯器で炊飯以外の調理を行うと、どのような危険があるのでしょうか?

一口に炊飯器と言っても、各メーカーいろいろな種類があり、最近では調理機能付きの製品も販売されています。そのように調理機能が付いている炊飯器であれば、「調理コース」でポトフや角煮を作ることがもちろん可能です。

しかし、調理コースの搭載されていない炊飯器において、通常の炊飯(白米)コースはご飯を炊くことに特化しており、吸水→炊飯→炊き上げ→蒸らしという工程で、中の水が蒸発するまでグツグツ煮込んで加熱していく動作になっています。

そのため、基準と異なる水の量や材料を入れると、水が早く蒸発してお釜が焦げる恐れがあるほか、圧力式の炊飯器では炊く時の圧力で中の材料が調圧孔(炊飯器のふたの部分)にくっついたりあふれたりして、中身が吹き出す危険性もあります。

そもそも、その食材に適した加熱・保温がされないわけですから、おいしく仕上がるかという点も疑問です。「炊飯器なら圧力がかかるからおいしくなるのでは」と思う方もいるかもしれませんが、それは大きな間違い。炊飯器は圧力調理鍋ではないので、絶対にやめましょう。

前例あり! 実際にあった危険な炊飯器調理方法とは

――特に危険な炊飯器調理の一例を教えて下さい。

当社で実際に事例を確認したことがあるものを中心に、以下の調理例をご紹介します。まずは、圧力機種でも非圧力機種でもNGな調理例からお届け。どれも危険な調理方法なので絶対に行わないでください。

1.ポリ袋を使った料理

ポリ袋を使った調理は大変危険です。鍋で湯煎するような形で、肉類などの食材を入れたポリ袋と水をお釜に入れて調理する方も少なくないようです。この場合も、水が沸騰した時にポリ袋が蒸気孔(蓋の部分)や内ふたに貼り付いてしまい、蒸気の通り道が塞がれて、中身が吹き出したり、ふたが開く危険があります。

※レトルト食品のパックの使用には対応している機種もありますので、取扱説明書をよくご覧ください

2.多量の油を入れる料理

温度が上がりすぎる恐れがあり、炊飯器の底にある温度センサーが誤作動を起こしたり、焦げ付くほか、内なべがいたむ危険性があります。炊飯器の故障にもつながる恐れがあります。

また、圧力炊飯ジャーにおいては以下のような事案がありました。

3.とろみ料理

あんかけなどの「とろみ料理」は、熱をキープする性質があるため、炊飯器の温度センサーが誤作動を起こして釜の底が焦げ付いてしまうことも。釜が焦げると熱が伝わりにくくなり、通常の炊飯時にもご飯をおいしく炊くことができなくなる恐れがあります。 また、吹き上がった際に蒸気孔を塞いだり、蒸気孔から吹き出すこともあるため危険です。

4.葉物野菜を使った料理

蒸気孔(蓋の部分)や内ふたに貼り付きやすい食材ということで、葉物野菜も危険です。また、トマトなどの皮の付いた野菜も、加熱によって剥がれた皮が蒸気孔にくっつき、中身が吹き出したり、ふたが開くなどして、やけどや炊飯器が故障する恐れがあります。

5.膨張しやすい食材の料理

練り物は加熱によって膨張しやすく、また豆類は泡が発生して吹きこぼれやすいため、豆の皮がはがれて蒸気孔や内ぶたに貼りつく恐れがあます。これらの食材を使用すると、吹きこぼれやふたが開く原因になります。

炊飯器調理を楽しむために

――ところで、調理機能が付いていない炊飯器と付いている炊飯器は、何が違うのですか?

通常の炊飯器は、水とお米を入れて炊くことを想定した構造になっているため、調理機能付きとは加熱プログラムが違います。

調理機能付き炊飯器であれば、ポトフや煮物など、それぞれの料理に適した加熱時間や温度を調整する機能が付いています。基本的に、炊飯器は煮込む調理が得意ですから、角煮、煮物、ポトフなど、じっくりコトコト火にかけて作るようなものがおいしく仕上げられます。

また、「ケーキ」メニューを使えばケーキやプリンなどのスイーツも、型を使わずお釜にそのまま生地を流して作れるので、お菓子作り初心者の方も気軽に試せるレシピが多いと思います。とはいえ、調理機能付き炊飯器でもNGな調理方法はありますので、調理機能の付いていない炊飯器と同様、使用時は説明書をご確認の上で楽しんでいただきたいです。

今は、毎日ご飯を炊くというご家庭が少なくなっている時代ですが、そうは言ってもやはり炊飯器は一家に一台あるものとして、これからも残っていくと思います。だからこそ、ご飯を炊かない日は、おかずやスイーツを作る調理器具として炊飯器をご活用いただく。そんなスタイルを提案していきたいですね。

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