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コラム

子どもが食べればママは幸せ!訪問調理師ごはんさんの魔法のレシピ【プロの日々ごはんVol.7】

自身や家族の好み、健康状態に合ったおいしくて栄養の取れた家庭料理を届けたい。そうは言っても調理時間の確保や料理レパートリー、栄養の知識など必要なスキルが多く、多様化した社会でこれらを満たし、実践するのは難しい家庭が増えています。そんな状況にマッチするサービスとして誕生したのが訪問調理。訪問先で食事を作る訪問調理師の中でも、数カ月先まで予約が取れないごはんさんに、その人気のルーツとも言えるご自身のバックボーンから、子どもが好き嫌いなくごはんを食べてもらえるレシピを生み出す秘密までお話を伺いました。

親子で楽しめるエスニック料理は、バックパッカーの経験が生きている

ごはんこと、飯泉友紀です。訪問調理師をしています。お料理と子どもが大好きな私にとってこの仕事は天職。今回、訪問調理師として約3年半、たくさんのお家でご飯を作ってきた経験から生まれたレシピたちが、「どんどんおかわりする 子ども大好きレシピ78」という一冊の本になりました。この本は、ただお料理のレシピを紹介しているのではなく、私が食を通して伝えたい思いがたくさん詰まっています。

「ごはんさん」。訪問するご家庭で、私はそう呼ばれています。これは、私が料理の世界に入ったときの師匠につけてもらった呼び名でして、「飯泉」という苗字を見た師匠が「ごはんちゃんでいいじゃない」と言った日から、私のあだ名は「ごはんさん」。訪問調理師の登録をするときにも、迷わずこの名前を登録しました。

国際協力について学び、将来はアジアの子どもたちと触れ合う仕事を夢見ていた私は、学生時代、バックパッカーでアジアをまわりました。タイのパッタイ屋さんにホームステイをして、朝からパッタイ作りを手伝ったり、インドのお母さんに本場のチャイの作り方を教えてもらったりしました。

訪問調理師としてお伺いするお家では、エスニックが好きなお母さんからのリクエストも多いのですが、「お子さんと一緒に食べに行くのは難しい」「家で作るのも難しい」「食材や調味料をそろえるのも大変」という声もあり、私なりのアレンジで親子で楽しめるエスニック料理を提供することもあります。これは、バックパッカー時代の経験が生きていると思います。

私が食べたかった食事、みんなに作ってあげたい食事と出会ったインターン時代

私が食の仕事に携わることになったのは、ある会社のキッチンインターンとして働くことになったことがきっかけです。福利厚生として、社内に社食を作るチームがある会社で、使う食材はすべて有機のものとこだわっていました。

上司は、毎朝全員と握手をして、その人の体温によってその日の朝食で食べるおにぎりの塩分を変えるんです。その会社で、「なぜご飯を食べるのか」「食事は、どういう気持ちで相手に届けるのか」ということを学び、私が食べたかった食事、みんなに作ってあげたい食事と出会ったことで、どっぷりと料理の世界にはまりました。

その後、調理師免許を取得しました。一般家庭の食事、有機の食事を学んだので、子どもの食に関する仕事に就きたいと思い学校給食の調理師になりました。大人と子ども向けでは、味付けはもちろん、切り方や衛生面の管理なども違い、また、アレルギー対応を学べるというのも大きかったです。

冷蔵庫を開けると、そのお家の味付けや好みがわかる

給食の調理師をしていた経験は、今の訪問調理師の仕事をする上でとても役立っています。 給食では、白米が残ってくることが多かったのですが、実際訪問する家庭でも白米が苦手なお子さんがいます。

そういう場合は、炊き込みご飯の具を用意したり、お子さんが好きなカレーを作ったりして、お米を食べてもらう工夫をします。お子さんの食事を作る面で、やはり好き嫌いは大きなハードルです。お子さんの成長によって、「先週は食べられなかったのに今週は食べられた!」というものや、その逆もあったりするので、日々の工夫が必要だと思っています。お子さんが嫌いなものを、どうしたら食べられるようになるかをお母さんと作戦会議をすることもあります。

訪問調理師という仕事は、ご自宅に伺って家庭料理を作るお仕事です。お家によって味付けが違うので、最初の頃は味付けに苦労したのですが、最近は、冷蔵庫を開けるとそのお家の味付けや、好みの味がわかるようになってきました。調味料の種類やキッチンの雰囲気で、お料理に対してのこだわりや、好みを把握して、その上で確認しながら作るものを決めています。

また、食育プログラムとして、ご家庭に行って子どもたちと一緒にお料理をするということもやっています。子どもたちと一緒に料理をしていると、私のほうが勉強になることがたくさんあるんです。こだわりを見せる部分や集中力があること、意外と丁寧に作るんだなという発見があったり。お子さんたちは、自分で作ったものは進んで食べてくれるんですよ。

ほっこりした味が子どもたちに人気

訪問調理師をはじめた頃から通っているご家庭が何件もあります。一回の訪問で、3時間料理を作るだけなんですが、お子さんの成長はもちろん、赤ちゃんの誕生やお母さんたちの復職など、その家族の大きな節目に立ちあえたりすることがすごくいいなと思っていて、とてもやりがいを感じる瞬間です。

子どもたちが大きくなっていくのを見ていられるのはすごくうれしいし、お子さんの学芸会に行ったこともあります(笑)。完全に保護者のような気分になっています。

お子さん用のレシピは、お子さんの反応を見て考えるようにしています。本で紹介している「ふわふわチキンナゲット」は、にんじんがすりおろさないと食べてもらえないとか、小松菜は茎の部分だと食べるといった反応から考えたレシピです。

最近は、酢の物系やつまみ系が人気だったり、意外とこってりした料理や男性が好きそうなものよりは、ほっこりした味が好まれたりして、面白いなと思っています。

(TEXT:上原かほり)

ごはんさんの新刊著書

どんどんおかわりする 子ども大好きレシピ78』(徳間書店

「ごはんを作らなきゃいけない」「自分がやらなくちゃいけない」と、がんばっているお母さんたちをたくさん見てきました。一生懸命作っても、お子さんが食べてくれないと、それをプレッシャーに感じるお母さんもいると思います。

ごはん作りはがんばりすぎないことが大事。手抜きでも、簡単でも、食べてくれるものがあるときっと気持ちは楽になるのではないかと思うんです。

この本では、訪問調理師として、日々、作った料理の反応を見ることができる中で、「子どもが大好き!」と思うレシピをまとめました。育ちざかりのお子さんを育てているお母さん、これからお母さんになる方にも見ていただき、お料理って、簡単に楽しくできるものなんだということを知ってもらえたらと思います」(ごはんさん)

多い日には、1日に3軒のお家を訪問するというごはんさん。各家庭に合わせた味付け、おかず、量で料理を作り、その場でリアルな反応を見ているからこそ、子どもたちがもりもりと食べてくれるレシピが生まれるんですね。

このレシピ本は、「子どもが好き!」という定番レシピだけではなく、子ども向けにアレンジされた「チリコンカン」や「辛くない麻婆豆腐」といった大人っぽいレシピや、「冷めても美味しい蒸し豆腐」や「大豆とじゃこの甘辛揚げ」といた子どもたちに大人気の給食レシピなど、ジャンル問わずさまざまなおかずが紹介されているので、お母さんたちが参考にしやすい内容になっています。ぜひお手にとってみてはいかがでしょうか?

全国の書店やオンラインストアで好評発売中。>>>購入はこちら

ごはんさん

数カ月先まで予約が取れない、人気の訪問調理師。1年に約500軒のお宅を訪れ、今までの訪問件数は計1500軒にのぼる。小学校の給食調理師の経験を生かした、子どもが喜ぶメニューが大好評。和・洋・中に限らず、多くのジャンルに対応するレシピの豊富さを活かして、現在はフリーランスの調理師として活躍中。子どもと一緒に料理をする食育プログラムにも注目。
【instagram】gohan.no.gohan

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