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コラム

体調を崩してわかった。自分で自分を癒す「からだが喜ぶごはん作り」

【からだに沁みるごはんのヒントvol.1】心身のバランスを整えるのに食事は重要とわかっていても、どうすれば…?という人は多いですよね。そこで、食卓料理家の森本桃世さんに、からだが喜ぶごはん作りのヒント教わります。自分で自分自身を癒せるようになりましょう!

食べものがからだをつくる

私はもともとパティシエールをしており、10年勤めていました。その間に持病が発覚し、いろいろな出来事と体調不良が重なり、心のバランスも崩して、仕事ができなくなってしまいました。

薬や手術で完治する方法がなく、周囲からは自然療法なども視野に入れてみれば、と言われたものの、結局薬に頼るしかなく、なかなか明けない闇に悶々としていました。

しかしある時、ひょんなきっかけからオーガニックをコンセプトにしたレストランの運営シェフを任されるという人生の転機を迎えたのです。それまでオーガニックなど全く興味がなく、ポテトチップスとラーメン、コーヒーが大好きで、野菜もあまり好んで食べないという生活を送ってきました。ですが、農家さんから送られてきた野菜を手にした時、そのエネルギッシュさに心奪われ、思わずそのままむしゃむしゃと食べてしまいました。

その時、からだの中にすーっと風が通ったみたいに何かが沁みわたり、腹の底から「うまい」という言葉がでてきました。

そこから「食べものがからだをつくる」を自分のコンセプトとして、食にまつわるいろいろなことに興味を持っては、その分野の方たちとワークショップを開催するなど、学んだり試したりしていました。 今思えばそのときから、終わりなき料理を通して、からだや自分を知る旅がはじまったのかもしれません。

からだに不要なものが抜けた断食体験

また、食べることだけではなく、食べないことにも興味を持ち、勉強しながら断食をしたこともありました。

体調不良から湿疹がでてお店に立てなくなったとき、オーナーの提案で休暇をもらい、断食施設に35日間滞在。そこでの指導のもと、18日間(滞在には準備食や復食期間なども含む)断食をしました。その時おもしろかったのは、何も食べていないのに口の中でポテトチップスの味がしたり、昔喫煙していたのもあり喉がヤニ臭く感じたり、“思い出が走馬灯のように駆け巡る”じゃないですが、からだに不要なものがもう一度通り抜けていく感覚があり、断食が終わったあとは全ての感覚が研ぎすまされ、からだが軽くなった気がしました。

しかし、普段の生活に帰ると、意識を変えないとすぐに戻ってしまうことも同時に実感したのです。

持病の症状も以前よりは落ち着きましたが、今でも体調不良は日常茶飯事だし、心のバランスを崩し、社会からドロップアウトしたりすることも。

だからこそ、何を選んでどうからだに入れるかや、どう日常を送るかが大事なのだと実感しました。ただ、からだは心ともつながっており、そこをちゃんと見ていくことも大切なんですよね。

いろいろ体験して気づいたのが、知識も含め外側から色んなものを得たり入れたりするのも大事だけれど、まずは、自分の持っているものを知り、それを最大限に活かし、日々バランスをとっていくことが一番大切なんだということでした。

からだ本来の機能を意識し、“戻していく”作業が大切で、それをできるのがきっと日常なんだと思います。その為に何をどう食べるかも大事だし、何がよくて何がだめなのかを知ることも大事だけれど、その前に、今の自分や自分の現在地である“いまここじぶん”を知ることから、全てはじまるのだと思います。

台所は自分の内側に触れられる場所

友達の編集者が「文章を書くのは良いもんだよ。自分の内側をゆっくり触ってる感じ」と言ってくれたことがあるのですが、料理も同じだと思うんです。

五感を使って素材の個性を引き出しながら、自分の感覚と対話しながら料理をすると、からだにすーっと沁みるごはんが作れる気がします。

私にとって台所は自分をつくる実験室であり、自分を整えるセラピー室でもあり、ひたすら同じ作業をして“無”になれる瞑想室でもあります。それくらい自分の内側に触れられる唯一の場だと思ってます。

少し疲れたら、目的を決めずに台所に立ち、食材を通して“いまここじぶん”を感じてみませんか?

感覚でごはんをつくるというと難しく聞こえるかもしれませんが、大切なのは自分の中の感覚にちゃんと耳を傾けること。そうれば自然と声が聞こえてきます。

まずは、冷蔵庫や八百屋さんでピンときた野菜を手にしてみてください。

野菜には繊維があります。繊維を断つとお野菜の味や成分がたくさん出ます。繊維にそって切ると、中に閉じ込めておくことができます。でも頭で考えず、まずはいろいろ試して、ピンとくる大きさや切り方を探してみてください。その時、どういう風に食べたらおいしいかも自分に聞いてみてください。そのままがおいしいものは無理して切らなくてもいいんです。

「生だとちょっとからだに重いな」という時は、火を通してみる。何を作ろう、ではなく、どうしたらおいしくなるかを自問自答する感じです。

基本的に調理は生か、煮る、焼く、揚げる、炒める、和えるの6つ。それを単発にするか、複数の方法を組み合わせるかですが、この時はより素材がおいしくなる方法を意識するといいかもしれません。

あとは、味をつけるのではなく“整える”ということをちょっと意識してみてください。五味と言われる甘み、塩味、苦み、酸味、旨味を意識して、バランスをとったり、野菜の味を感じながら、自分が「あ!」と思ったら、そこで止めるのもポイントです。

あとは味だけでなく見た目も大切です。例えば、炒めたり茹でたりするときは、色が一番きれいな瞬間を見逃さないことです。おいしそうと思う瞬間で止めるのがポイントです。

そのためには、その一品を作る時は他のことは少し横に置いておいてほしいのです。

それは自分の小さな声を聞き逃さないためでもあります。そのためには、心に余裕をもっておいしそうな瞬間を見逃さないでください。

自分の感覚がスパイスになる

最後に、自分を信じることも大切な調味料です。おいしいと感じる感覚や、「これは違うんじゃないかな」と思う感覚など、本当は分かってることがたくさんあるはずなんです。その引き出しをそっとあけて、スパイスにしてみてください。感覚はからだに必要なものを教えてくれます

できあがったらまずつまみ食いをしてみてください。

そしてゆっくり噛んで、じっくり味わってみてください。自分を感じるように。おいしくても、おいしくなくても、ちょっとおしくても、今の自分の心とからだがどうなのかを知り、それをちゃんと見つめて感じることをしてみてはいかがでしょうか?

森本桃世

“身体は食べ物でできている”をコンセプトに野菜の素材や発酵食品を活かし、手を加えず手間をかけ、からだの喜ぶ料理を作る食卓料理家。循環タイヒにまつわる食材を扱うオーガニックレストラン「Taihiban」の運営シェフ、木更津市サステナブルファーム&パーク「KURKKUFIELDS」を経て、現在はフリーランスとして活動。

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