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コラム

実は進化が止まらない!「ブレンド米」を家でも楽しむコツ

【お米ライターのコメバナシvol.11】私たちにとってお米はあって当たり前の存在ですが、実は意外と知らないことだらけ。そこで、巷でよく耳にするお米に関する「疑問」や気になる「噂」をお米ライター柏木智帆が検証します。おいしい白飯や米料理さえあれば食卓は豊かになる!をモットーにお米のおいしさを追究していきます。

ブレンド米ってどんなお米?

「ブレンド米」と聞くと、どんなお米を想像しますか?「違う銘柄同士のお米を混ぜること」だと、なんとなくわかる人は多いと思います。

一方で、同じ「ブレンド」でも、ブレンドコーヒーや合わせみそはその味わいや商品名、楽しみ方を知っているという人は多いと思います。ワインでも異なるぶどうの品種を混ぜ合わせた商品があり、ウイスキーにも異なる原料を混ぜ合わせたものがありますね。

昔はブレンド米といえば米屋ごとの看板商品だったそうです。お米は工業製品ではないため、毎年の天候によって出来不出来があります。そのブレを出さないようにするのが米農家の手腕ですが、自然相手では限界があります。また、季節の移り変わりとともに、お米ごとの劣化速度にも差が出てきます。そこで、年間を通しておいしいお米を提供するためにお米をブレンドすることは、米屋の腕の見せどころだったのです。

最近のブレンド米事情を知っていますか?

最近は、ブレンド米も少しずつ評価されるようになってきました。オリジナルのブレンド米を販売している米屋があったり、和食やおむすび、丼もの、炒飯など、料理用途に合わせたブレンド米の商品が販売されていたりと、「ブレンド」が付加価値になりつつあります。飲食店から米屋に対して「うちの料理に合うブレンドを」という注文も増えているそうです。

私が「あったらいいな」と思うブレンド米は、たとえば食欲がわかない朝や猛暑の季節にぴったりのすっきり軽い食べ心地の「朝ごはんブレンド」「夏ブレンド」、脂が乗った冬の焼き塩さばにぴったりの「冬の焼き塩さばブレンド」など、季節や体調・旬の食材に合わせたブレンド米の他、昔食べた思い出の味を再現するブレンド米などです。お米の楽しみ方が広がると思いませんか?

収穫前からブレンド米を作ることもできます

ブレンド米は収穫後に2種以上のお米を混ぜる方法が主流ですが、田植えの時から2〜3品種を混ぜて育てているブレンド米もあります。

たとえば、新潟県魚沼市の「小岩農園」では、同じ田んぼの中でミルキークイーンとコシヒカリを種もみの時点でブレンドして混植した「ふたえぼし」を栽培。千葉県佐倉市の「たに農園」でも、同様の方法で「ヒカリ新世紀」と「ミルキースター」の混植を栽培しています。栃木県塩谷町の「杉山ファーム」では、同じ田んぼの中で「コシヒカリ」「なすひかり」「夢ごこち」の3品種を1列ずつ交互に植えた「杉三反」を栽培しています。米屋が精米前にお米を混ぜて味を調整するブレンド米とは違い、田んぼで混ぜるお米はまるで一つの品種のような立ち位置。農家の“オリジナル新品種”として楽しめそうです。

オリジナルブレンド米を作る楽しみ

相性がうまくいっていないブレンド米を食べると、ごはん同士が口の中でどことなく分離しているような印象を受けます。しかし米屋のブレンド米は、単に2種以上のお米を混ぜるだけではなく、もともと単一品種であるかのようなブレンド米を生み出すブレンド技術があり、それはまさに職人技です。

そうは言っても、料理にはプロの味と家庭の味があるように、ブレンド米もプロのブレンドと家庭のブレンドがあって良いと思います。家庭でブレンド米に挑戦する際は、もっちりとしたお米にあっさりとしたお米を混ぜたり、やわらかいお米に粒立ちの良いお米を混ぜたりと、味の特徴が違うお米同士を混ぜてみると変化が分かりやすいです。特に分かりやすいのは、低アミロース米(もち米のように軟らかく粘りが強いお米)の“ちょい足し”。たとえば、普段食べているお米に「ミルキークイーン」や「ぴかまる」などの低アミロース米を2〜3割ほど混ぜてブレンドを始めてみるのも良いと思います。何度か炊くごとに微調整していき、好みの味に着地していくという方法がおすすめです。

ぜひ、冷蔵庫に色々なお米を常備して、ブレンド米を日常的に楽しんでみてはいかがでしょうか。

※ メイン写真はこちらの記事をイメージして選定させていただきました
画像提供:Adobe Stock

柏木智帆

お米ライター。元神奈川新聞記者。お米とお米文化の普及拡大を目指して取材するなか、お米農家になるために8年勤めた新聞社を退職。2年にわたってお米を作りながらケータリングおむすび屋を運営した。2014年秋からは田んぼを離れてフリーランスライターに。お米の魅力や可能性を追究し続ける、人呼んで「米ヘンタイ」。
【ブログ】柏木智帆のお米ときどきなんちゃら
【クックパッド】柏木智帆のキッチン

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