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コラム

おいしさを写し出す、料理の「色」の表現法とは?

【まいにちごはんの撮り方レッスン vol.11】暗くなってしまったり、うまく質感が出せなかったり、料理の写真を撮るのは意外と難しいもの。この連載では、料理写真家・田部信子さんに「おいしい料理写真」の撮り方をレクチャーしていただきます。コツをマスターして、SNSやブログにアップする料理写真をぐっと魅力的にしてみませんか?

前回のコラムでは、カメラの目線でスタイリングして、素早く撮る方法をお伝えしました。 今回は、多くの人が悩んでいる「写真の色」について書いていきます。

◎撮り方のステップ

(1)イメージを決める
(2)どこで撮るかを決める(どんな光を使うか)
(3)どこから撮るかを決める(アングル、カメラの位置)
(4)どのくらいの範囲を写すのか決める(レンズを選ぶ)
(5)構図を決める
(6)スタイリングを決める
(7)明るさと色の調整
(8)主役にピントを合わせて撮影

料理写真の撮り方を教えていると、色々な悩みを聞きます。その中でも多い悩みはなんだと思いますか?

実は、「なんかうまく撮れない」という漠然とした悩みなんです。 スマホも新しい機種に切り替えたし、料理もおいしそうにできた。でも、撮ってみると「なんかうまく撮れない」 つまり、うまく撮れない原因が分かっていないんですね。だから解決策も出てこない。

今回の連載では、料理写真を撮るときに漠然とした悩みをもっている方が、ひとつずつ自分の「うまく撮れない」原因を探せるように、写真の撮り方を細かくステップに分けて説明してきました。

例えば、光の使い方だったり、アングルの決め方だったり、レンズの選び方だったり。8つの項目をひとつずつ解決していくことで、自分の思ったような写真を撮れるようになっていって欲しいと思っています。

今日はその中の「色」について書いていこうと思います。

窓から差し込む光で撮っていても、時間帯や天気によっては寂しい写真になってしまうことがあります
こんな相談をよく受けます。
どんなに綺麗にスタイリングして格好いい構図で撮っても、色が黄色っぽかったり青っぽかったりすると、一気においしく見えなくなっちゃいますよね。そして、そんな状態だと撮っていても楽しくない…。 私もふとカメラを構えて撮った時、液晶画面に表示された写真が青っぽい寒々とした料理の写真だと、一気に気持ちがしぼんでしまうことがあります。なんだか自分が写真下手になったようで悲しくさえなります。
そんな時は「この料理がおいしそうに見えないのは"色"が悪いからでは?」と疑って欲しいのです。正しい色に設定し直すと、意外にそれだけでおいしそうに見えたりするものです。

この2枚の写真、違いは「色」だけです。色が違うだけで、味まで違って見えてきます。

では、正しい色にするために何をすれば良いのでしょうか?

ミラーレスカメラや一眼レフカメラ、スマホのカメラアプリなど、多くのカメラには「ホワイトバランス」という機能がついています。この機能は色の調整をするためのものです。この機能がどういうものなのか。まず、そこからご説明します。

世の中にある光には、それぞれ「色」がついています。例えば日中の太陽の光は白、朝は青っぽく、夕方は黄色っぽい。曇りの日は青っぽい。また、家でよく使っているような白熱灯は黄色い、などです。そのどんな光の下でも白いものを白く写せるように、白のバランスを取る。それが「ホワイトバランス(WB)」という機能です。

実際どういうものなのかを見てみましょう。今回はわかりやすいように、Lightroomというスマホのカメラアプリの画面を使って解説します。(シャッターボタンの下で「プロ」モードを選ぶとホワイトバランスの設定ができるようになっています)

赤で囲ってある「WB」というのが、「ホワイトバランス(white balance)」の略になります。そして、左側の縦に並んでいるマークが、この機能で選べる選択肢です。ざっと説明していきましょう。

「AWB」(オートホワイトバランス)。これは自動的に良い色にカメラが設定してくれる機能です。基本的にはこの状態で大丈夫です。しかし、どうしても色が思ったのと違う…という場合は、他のマークを試してみましょう。
・ 「電球」のマーク→ 夜に白熱灯の下で写真を撮る時に
・ 「蛍光灯」のマーク(電球の上の横棒のマーク)→ 蛍光灯の下で撮る場合に
・ 「太陽」のマーク→ 日中の屋外や窓の近くで撮る場合に
・ 「雲」のマーク→ 曇りの日に撮る場合に

いくつもありますが、まずは怖がらず、全てのボタンをひとつずつ押してみましょう。そして、その中で一番自分がしっくりするマークを選んでみましょう。

以下は自然光の入る窓際で、ホワイトバランスを変えて撮ったものです。これだけ色が変わってきます。

基本的には、どのカメラ(カメラアプリ)でも、ホワイトバランスというものは同じような選択肢になっています。まずは、お手持ちのカメラ(カメラアプリ)の「ホワイトバランス」機能がどこにあるのかを探して、怖がらずいじってみましょう。

iPhoneの標準カメラアプリにはホワイトバランス機能はついていません。どうしても思った色が出ないな、と思う方は今回ご紹介したLightroomなど、一度他のカメラアプリを使ってみることをおすすめします。

何かおかしいな? と思ったら、一度「色」を疑ってみる。是非やってみてください。
次回は最後、ピントについてお話します。お楽しみに。

田部信子

横浜市出身。青山学院大学文学部英米文学科卒業。外資系IT企業のSE職を経て、カメラマンへ転身。広告、雑誌、ブライダルの撮影を行う。双子出産後、カメラ教室で約3000人の生徒さんに写真の撮り方を教える。2018年より、料理写真家として活動中。

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