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インタビュー

週5で食べる地域も!昔は給食の救世主、今では当たり前の「米飯給食」はなぜここまで浸透した?【#給食今昔物語】

幼い頃、夏休み明けの給食を楽しみにしていたという人も少なくはないのでしょうか。最近では、食育の観点からメニューも多様化しており、昭和時代や平成初期には見かけなかったようなメニューも続々と登場しています。給食といえば揚げパン、ソフト麺だった時代はもう過去!? 今はお米中心の献立へと変化しています。一体なぜ米飯給食の回数が増えたのでしょうか。米飯給食の過去と今に迫ります。

子どもたち待望の米飯給食がスタート

給食にお米が登場するようになったのは、今から46年前の1976(昭和51)年から。それまで戦後の日本の学校給食はパン中心の献立で、揚げパンにコッペパン、食パンなどのパンがかわるがわる毎日のように提供されていました。

白いご飯におかずと汁物がついた米飯給食(提供:松丸さん)

それが今は逆転。文部科学省からの通知で週3回以上を目標として米飯給食が推進されています。終戦から米飯給食が始まるまでの約30年、なぜ給食にご飯が加わらなかったのでしょうか。当時の給食事情について、学校給食歴史館・館長の吉田さんにお話を伺いました。

「戦後の復興期はお米が足りない状態だったため、アメリカからの小麦でパンを作り、それを給食に提供していました。しかし、日本はもともと米文化の国。日本の経済復興とともに、子どもたちや保護者からはお米を求める声が多くなっていったそうです。でも、米飯給食はすぐには実践されませんでした。それは、一つはお米と小麦(パン)の価格差にありました。お米よりも小麦粉の方が安く、手に入れやすかったからです。二つ目は、米飯導入に係る施設設備の問題です。学校で炊飯するには、その炊飯設備が必要ですし、その手間もかかります。また仮に、炊いたご飯を購入するにしても、ご飯を大量に炊飯してくれるところがありませんでした。1976(昭和51)年以前に給食でお米を食べていたのは、お米の栽培が盛んな地域や、独自の流通ルートを持っていた市町村のみでしょうね。そういったところでは自宅からごはんだけを持参する給食を実施していて、埼玉県の一部の地域では今もそれが続いています」(吉田さん)

要望があってもなかなか実施されなかった米飯給食。切り替わる大きなきっかけは、国の農業政策がうまくいかなかったことにありました。

「1967(昭和42)年から3年間はお米の生産量も増え、日本では年間約200万トンの余剰米(在庫米)が出ていました。お米の生産調整がうまくいかないなど、農業政策的なことも相まって、そのころから学校給食にお米を出す動きが政治的に高まっていったと考えられます。そして1970(昭和45)年には、国が指定した学校で試験的に米飯給食が実施されることになりました。結果として、毎日パン献立が中心だった子どもたちは、お米を導入すると残さず食べる子が多かったそうです。そういった点も評価され、1976(昭和51)年から本格的に米飯給食が開始されました」(吉田さん)

パン屋さんがご飯を炊く!?

子どもたち念願のお米がいよいよ給食に登場。その一方で、回数が減っていったパン給食。そうなると気になるのが、給食用に作られていたパンの行方です。

米飯給食の影響を受けはじめる製パン業者

「米飯給食の導入で、給食用のパンの製造関係者からは少なからず反発はあったようです。学校給食で生計を立てていたパン工場にとっては死活問題ですからね。そこで国は製パン業者への炊飯委託を推進する内容の通達を出しているんです。つまり、パン屋さんがご飯を炊いてくれるなら、優先的にそこに委託してくださいという話。それに付随して、炊飯用の設備を導入する場合は、供給量に応じて費用が助成されるようになっていたそうです。それでも地元の小規模なパン屋さんは大変だったと思いますよ」(吉田さん)

政府によるお米価格の大幅助成がスタート

1976(昭和51)年を境にパンから米飯給食へ徐々に移行されていった日本の給食。しかし、米飯給食を導入するにあたっては、大きな問題がありました。それはお米の価格です。パンに比べお米の価格は高かったので、そのままの価格では、学校で米飯給食を取り入れられないという問題です。そこで政府は、1976年(昭和51年)の米飯給食導入時から助成制度をスタートさせます。

1977(昭和52)年の給食「カレーライス、牛乳、塩もみ、バナナ、スープ」(提供:独立行政法人日本スポーツ振興センター)

「米飯給食の導入にあたって、政府は消費者米価の35%値引きを行う措置を講じました。今考えると破格ですよね。その後、1979年から1984年は60%引き、条件によっては70%引きのところもありました。その甲斐もあり、米飯給食は一気に広まっていきました。その後、少しずつ値引き率は縮小されていき、1999(平成11)年を最後に助成制度は終了することになります。それ以降は、政府米と自主流通米の価格差もなくなっていき、地元でとれたお米を学校給食に提供する動きが拡大していきました。地場産のお米を使うということは郷土の農業の知識を深めたり、生産者への感謝の気持ちを育むことができ、学校給食の食育の実現にも有意義なものなので、積極的に取り入れていった学校が多かったようです」(吉田さん)

エクアドル料理が登場!?多種多様な現代の米飯給食

米飯給食が開始されて以降は献立にも変化がありました。スタート直後はカレーやサラダ、白米と郷土の煮物などでしたが、食の多様化に伴い、現在ではメニューのバリエーションも豊富に。「学校給食甲子園」で全国優勝を果たした管理栄養士の松丸奨さんが務める東京・文京区の小学校では、子どもたちに積極的にお米を食べてもらうために献立作りも工夫しているそうです。

「週3回以上の米飯給食が推進されるようになってから、栄養士としては献立が立てやすくなりました。白米って和洋中どんなおかずにも合うので、献立のバリエーションも増えたと思います。子どもたちに人気が高いおかずはハンバーグやコロッケですが、マンネリ化しないように米飯給食の色々な食べ方を考案しています。麻婆ライスやあんかけチャーハンなどの中華料理や、以前ワールドカップが開催されたときは、対戦相手のエクアドルの料理・セコデチャンチョを出しました。世界の料理だけでなく、自分の地元にも興味を持ってほしい気持ちで、東京の郷土料理・深川めしや、江戸東京野菜の“のらぼう菜”の混ぜごはんを作ったこともあります。また、メニューだけでなく、プラスアルファのお楽しみがあると子どもたちは喜ぶので、鯛めしを作ったときに出汁をとったあとの鯛の頭を高学年のクラスに配ったりしました」(松丸さん)

給食用に酒ではなくオレンジジュースで煮込んだエクアドルの郷土料理「セコデチャンチョ」(提供:松丸さん)

実際の子どもたちの反応はどうだったのでしょうか。

「セコデチャンチョなどは小学1年生だと、『名前はよくわかんないけどおいしい!』という感想をくれます。6年生になると、『これは日本のお米で作っているけど、ブラジルやタイではお米違うよね?それで味も変わるのかな?』と鋭い感想をもつ子もいます。深川めしなどの東京の郷土料理、全国の郷土料理のご飯は、そのレシピでその土地のイメージがついてしまうので、味付けには細心の注意を払いますね。『おいしい! なんでアサリが東京のご飯なの?』と興味関心を子どもは持ってくれるので、『昔は東京の海はもっと身近だったんだよ、埋め立てる前とでは海の位置も違ったんだよ』など、地理や歴史の話も給食を使ってできるので嬉しいです」(松丸さん)

子どもたちに好評だった、鯛めしと鯛の頭(提供:松丸さん)

さらに、2013(平成25)年にユネスコ無形文化遺産に和食が選ばれ、和食給食推進の動きが高まっている影響もあり、必然と和食献立の頻度は増加しているといいます。しかし、一方で和食が増えたことでこんなお悩みも。

「和食献立はヘルシーなので、脂質の摂取量が基準に満たないことがあります。白米に洋食のおかずを合わせるとぴったりになりますが、毎回それでは今度は塩分量がオーバーしてしまうし、味噌汁を豚汁に変更したらタンパク質がオーバーしてしまう。でも、栄養士としてはオーバー分を減らすより、足りないものをプラスするほうが献立を立てやすいので、贅沢な悩みかもしれないですね」(松丸さん)

わかめご飯の人気は健在!一方、グリーンピースご飯は…?

毎日食べるものだからこそ、飽きずにおいしく食べてほしいという松丸さん。おかずで変化を出すだけでなく、混ぜご飯や五穀米を取り入れるなど、お米自体にもバリエーションを持たせることで子どもも積極的にご飯を食べてくれるといいます。

子どもたちから大人気の「枝豆ご飯」(提供:松丸さん)

「昔から定番のわかめご飯は、今でも子どもたちに大人気です。逆に、僕が小学生のころによく出ていた給食の定番『グリーンピースご飯』は、苦手な子が多いのであまり作りません。どうも、豆自体が苦手なことと、生に比べると冷凍のグリーンピースがおいしさに欠けるため、不人気なんだと思います。そのため、生のグリーンピースがおいしい春の時期は、グリーンピースご飯を作り、それ以外は枝豆ご飯を出します。枝豆に切り替えたことで子どもたちからありがとうって言われています(笑)。また、秋はさつまいもご飯やきのこご飯など混ぜご飯メニューが目白押しです。教室でご飯バットを開けた時の『うわ〜!!おいしそう!!いい香り。早く食べたい!』という歓声と、先生の『こらー!バットの周りに集まらないの!!』というシーンはよく見られるんですよ」(松丸さん)

パンからご飯中心へと移り変わっていった給食。地域によっては週に5回ご飯が出るところもあるといいます。今や給食になくてはならないものとなったお米。各地の特色を生かした地場産米もあり、お米そのものの違いも楽しめる醍醐味も。今後、米飯給食がどんなふうに変化していくのか楽しみですね。

(TEXT:河野友美子)

取材協力:学校給食歴史館、学校給食栄養士 松丸奨
※本記事は、Yahoo!ニュースとの共同連携企画です

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