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コラム

物価高なのに「もやし」ってどうして安いの?もやしマニアにその理由を聞いてみた!

食品の価格高騰で出番が多くなっている「もやし」。価格が安く、しかも安定していて、季節関係なく手に入れることができるもやしは、私たちの食卓に欠かせない食材のひとつ。しかし、なぜもやしが安いのか、なぜずっと低価格を維持できるのか、その理由をご存知でしょうか? 今回は、もやし愛が止まらずに『もやし料理研究会』まで立ち上げた料理家・須永久美さんにもやしの安さの理由について話を聞きました。

物価高で「もやし」の頼もしさを再確認

――次々に野菜が値上がりしていく中、もやしの価格は安定している理由を教えてください。

以前は原料費や供給の安定が一番の理由でしたが、今は企業努力でしょうか。私たちがスーパーなどでよく見るもやしは豆と水が原材料で、豆は中国などのアジア地域から多く仕入れています。近年は円安の傾向や現地人件費の高騰もあり、費用面は悩ましいところ。私たち消費者は「もやし=安い」というイメージが強いので、なかなか価格を上げられないというのが実情だと思います

――物価高以外にも、野菜の価格は気候によって変動することが多いですが、もやしはそういったことがないように思います。気候の影響はないのでしょうか?

もやしは室内の栽培施設で育てるので、気候による影響はほぼないんです。土も太陽も必要なく、水だけで育てています。最初に豆を温水に浸して発芽を促進します。2日目には発芽し、そこからは室温や水温を調整しながら日に数回シャワー放水をして大きくなり、約1週間で出荷体制に入ります。なので、天然水を組み上げる装置を設置すればあとはコンピュータで管理されますし、年中無休・24時間体制で安定供給できるというのは利点ですね。

――電気代が上がっても、価格は上がらない?

もやしは栽培中、光を当てないので、コンピュータ制御や施設内の温度管理に電気代がかかります。もやしは発芽するときに熱を発するので、工場によってはその発芽熱を再利用するなどの工夫もあり、電気代の値上がり対策にも企業努力が見られます。でも、電気代以外に豆や製品の輸送コストも上がっているので、この先もしかしたら10円、20円値上がりすることはあるかもしれませんね。私たちはこれまでもやしの恩恵を受けてきたわけですから、許容したいというのが本音です。

もやしの可能性は無限大!今こそ食卓に「もやし」を

――スーパーに並んでいるもやしの価格が微妙に違うのはなぜですか?

主なもやしは「緑豆もやし」「大豆もやし」「ブラックマッペ(黒豆)もやし」の3種類があって、価格が少しずつ異なります。緑豆もやしは流通の大多数を占めていて、スーパーなどで20円〜40円くらいで販売されていることが多いです。今はもやしといえば「緑豆もやし」をイメージされる方が多いのではないでしょうか。

緑豆もやし

大豆もやしは先端に黄色い豆がついているのが特徴です。緑豆もやしの倍くらいの値段で販売されていることが多いです。

大豆もやし

ブラックマッペもやしは関西でよく食べられているもやしで、緑豆もやしや大豆もやしと比べると細いのが特徴です。戦後までは中国産の緑豆ではなく、東南アジア産のブラックマッペのもやしが主流だったそうです。

ブラックマッペもやし

――今お話しに出た、緑豆もやし、大豆もやし、ブラックマッペもやし、それぞれのおすすめの食べ方を教えてください。

まず、緑豆もやしはそのみずみずしさを利用してあえものやサラダ、また刻んでもシャキシャキなのでハンバーグの玉ねぎの代わりに使ったり、肉団子に入れたりするとおいしいですよ。大豆もやしはナムルのイメージが強いですが、鍋ものにもおすすめです。ブラックマッペもやしは火を通してもしっかりシャキシャキ食感が残るので炒めものやお好み焼きなど。ぜひメニューによってもやしも使い分けてみてほしいですね。

――須永さんがおすすめするもやし料理を教えてください。

ひとつに絞るのはなかなか難しいですが、「もやしそ餃子」はご飯のお供にもビールのおつまみとしてもいけるので、ぜひ試していただきたいです。

もやしそ餃子

材料(4人分)「もやしそ餃子」

調理時間目安:約15分/予算(1人分5個)75円

・もやし…1/2袋(100g)
・青じそ…10枚
・豚ひき肉…100g
・餃子の皮…20枚
・ごま油、オイスターソース、しょうゆ…各小さじ1
・塩、こしょう…各少々
・サラダ油…少々

作り方

【1】 もやし1/2袋(100g)は粗く刻み、青じそ10枚はせん切りにする。

【2】 ボウルに【1】と豚ひき肉100g、ごま油、オイスターソース、しょうゆ各小さじ1、塩、こしょう各少々を入れてよく混ぜ、餃子の皮20枚に等分して包む。

【3】 フライパンにサラダ油少々をひいて熱し、餃子を並べて焼き、底面が焼けたら水150mlを加えてふたをし、蒸し焼きにする。酢じょうゆなどにつけてどうぞ。

餃子の皮つながりでいうと、餃子の皮とカニ風味かまぼこ、もやしを組み合わせたおつまみレシピもおすすめです! 餃子の皮の上にもやしとカニ風味かまぼこ、ケチャップ、黒胡椒をかけてトースターで焼くだけで、あっという間に完成します。餃子の皮がパリパリ、もやしもシャキシャキしていておいしいですよ。

――もやしは買ってすぐに使ったほうがいいですか?いい保存方法を教えてください。

購入してから2〜3日以内には使い切ったほうがいいと思います。もやしって袋詰めしても生きているので、購入後は袋に少し穴をあけて呼吸させてあげるといいですよ。そして、できれば野菜室ではなく冷蔵室で保存するようにしてください。もし、しんなりしてしまったら水に浸してあげるとシャキッとした食感が戻ります。

――最後に、クックパッドニュース読者に一言お願いします。

もやしってただ安いだけではなくて、何の味にも染まってくれるし、脇役にも主役にもなれるすばらしい食材なんです。野菜炒めやラーメンのトッピングだけじゃなく、和洋中いろいろなところで威力を発揮してくれて、そんな食材ってなかなかないと思うんですよね。ほぼ水なのでヘルシーですし、かさましすることで満腹感が出るからダイエットにもぴったりです。もちろんいちばんは節約食材というイメージが強いかもしれないけど、今後もっといろいろな場で活躍してくれるのではないかと思っています。これからの季節にはお鍋にもおすすめなので、ぜひ食卓に取り入れてみてください。

TEXT:河野友美子、写真:井上孝明(『エライ! もやしのおかず&つまみ81』講談社より)

須永久美(すなが・くみ)

編集ライター・料理研究家。『もやし料理研究会』会長。幼い頃から冷蔵庫に必ずもやしを常備した家庭で育ち、もやしなしの暮らしが考えられないほどのもやし好き。神奈川県湯河原町の自宅キッチンで旬の魚介や野菜に刺激されながら、食いしん坊ならではの視点で楽しくお財布も納得の簡単レシピを考案している。

須永さんのもやしレシピはこちらでも掲載中!
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