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コラム

みんな大好きな卵に植物由来が登場?ほぼ卵な「ほぼたま」が生まれた理由とは

ここ数年、代替食品(プラントベース食品)への注目度が高まっています。健康志向、地球環境への配慮など、さまざまな観点から代替食品市場は今後さらに伸びしていくでしょう。クックパッドニュース読者のみなさまの中にも、代替食品に関心を持つ方は多いのではないでしょうか。そこで今回は、植物由来の卵代替食品「HOBOTAMA」(ほぼたま)を発売しているキユーピー株式会社の開発担当、梶さん、磯部さんにお話しを伺いました。

より多くの方に卵を食べてもらうために

――植物由来の卵代替食品「HOBOTAMA」(ほぼたま)を開発することになった経緯を教えてください。

梶さん:当時、グループのキユーピータマゴ株式会社の中で、「何か新しいことをやろう」という新たな商品を生み出すためのチームを新設しました。すでに、卵の食感や味を作るという技術はあったので、卵ゼロを実現できるのではないかということが開発のきっかけになりました。

磯部さん:私たちは、より多くの方に卵を食べていただきたいという想いがあります。しかし、食卓を囲む家族の中に卵が食べられない方がいるご家庭もあります。そこで、あえて卵不使用の卵代替食品を開発することで、卵の良さを知っていただくことができたらという想いから着手しました。

――「HOBOTAMA」には、スクランブルエッグ風と加熱用液卵風の2種類がありますが、この2つは同時に開発されたのでしょうか。

梶さん:スクランブルエッグ風のほうを先に業務用として開発、発売しています。当時は、我々もまだ代替食品の開発については手探り状態でしたので、まずは一般のお客さま向けではなく、長年共に市場を見てきた業務用のお客さまと共に市場を見極めていこうということでスタートしました。

磯部さん:私は、加熱用液卵風の開発を担当しました。加熱用は、スクランブルエッグ風の開発から約半年後に開発をスタートし、2022年3月には市販用向けにAmazonフレッシュ限定で発売をスタートしています。9月28日からは、キユーピーの食品直販サイト「Qummy(キユーミー)」でも購入できるようになりました。※関東地方(伊豆諸島・小笠原諸島を除く)1都6県

――「HOBOTAMA」を開発する上で、こだわった点や難しかった点を教えてください。

梶さん:こだわったのは“食感”です。卵を使ったスクランブルエッグでも半熟状態を作るのは難しいと思います。やはりスクランブルエッグには欠かせない、半熟感、食感を大切にしました。柔らかすぎてはダメ、固すぎても豆腐のようになってしまうんです。 個人的にオムライスが好きなので、オムライスにして食べたい食感を残しつつ、パンにもはさめる絶妙な食感を出すのがすごく難しかったです。

磯部さん:加熱用液卵風は、液状で、生卵をといたようなサラッとした状態で調理して使っていただく商品です。スクランブルエッグ風とは違い、より多くの料理に使っていただきたいという想いを込めて開発しました。加熱用は、難しかったところとこだわりがイコールになるかもしれませんが、加熱調理をしたときに、卵のように固まるところを再現するのが非常に難しく、且つその仕上がりにこだわりました。加熱用液卵風を使うことで、卵焼きやオムレツのようなメニューを作ることができます。卵のように固まる力や卵の食感を再現するために、複数の成分を絶妙な割合で組み合わせました。

ほぼたまマヨコッペ(調理例)

お客さまから届いた「夢のような商品」という声

――元々は業務用として展開していた商品を、市販化したのはなぜですか?

磯部さん:業務用としてスクランブルエッグ風を発売した直後から、「こういう商品をずっと待っていた」というご意見がたくさん届きました。「調べてみたら、業務用ということなので、ぜひ一般向けにも発売をしてほしい」という声も多かったんです。それだけ需要のある商品だということがわかったので、一般向けに発売をしました。

――市販化して届いたお客様の反応を教えてください。

梶さん:卵アレルギーのお子さまをお持ちのご家族の方からは、「これまで卵を食べたいと言っていたのを叶えてあげられなかったから、本当に“夢のような商品”です」、「オムライスを食べさせてあげることができるなんて思わなかった」という、私たちが思っていた以上のお声をいただき、すごくうれしい気持ちになりました。

磯部さん:ご家庭で使っていただくことを目的に発売をしたのですが、実際本当に多くの方から、「卵を食べることを諦めていたので、食べられてうれしい」という声をいただきました。開発者としてこれ以上ないうれしい言葉をたくさんいただいています。

――開発者のおふたりがおすすめするレシピはありますか?

磯部さん:加熱用なので、フライパンで調理していただくメニューがおすすめです。その中でこれ! というのが選びきれないのですが、オムレツ、卵焼きはもちろんですし、例えばチャーハンも本物の卵を使った時と同じような仕上がりになるのでぜひ作ってみていただきたいです。 また、デザートにもお使いいただけます。当社のサイトには、プリンのレシピが載っていますが、加熱用液卵風は牛乳などで伸ばすと固まりにくくなるので、ゼラチンを併用していただくレシピになっています。

チャーハン(調理例)

梶さん:私はオムライスが大好きなので、いろいろな味付けのオムライスを試しています。スクランブルエッグ風も、加熱用液卵風も、プレーンな味付けにしていますのでお好みの味に仕上げることができる部分を楽しんでいただけるとうれしいです。

オムライス風プレート(調理例)

キユーピーだからこそ実現できた商品

――届いた声の中に、開発時には想定していなかった使い方や質問などが届いたことはありますか?

梶さん:スクランブル風をおかゆのとろみ付けに使っているという方がいました。

磯部さん:加熱用液卵風は加熱して使っていただく商品なので、生の状態でお召し上がりいただくことはできません。また、「卵スープに使えますか?」というご質問もいただくのですが、それはまだできません。ほぼ卵とは言っても、本物の卵ではないので、卵と全く同じというわけにはいきません。植物由来の卵は、みなさまにとってもはじめての物なので、どう使っていいかわからないという方も多く、商品を手に取っていただく前に説明が必要です。そのため、まずはWebでの販売からスタートしたという経緯があります。

――卵の会社であるキユーピーが、卵不使用の商品を出されたことに対しての反応は?

梶さん:当社は、日本で使われる卵の約1割を取り扱っている企業になります。だからこそ、卵を使わなくても卵のようなものを作る技術を一番持っているという自負があります。キユーピーだからこそ、卵を食べられない方のニーズにもしっかり応えていきたいという使命感を持っています。当社としては、多様な食の選択肢を増やすという考えで、この商品を発売しました。

――今後の商品の展望について教えてください。

磯部さん:まだ詳しくお話をすることはできないのですが、すでに次の商品の開発には着手しています。楽しみにしていてください。 (TEXT:上原かほり)

取材協力

キユーピー株式会社

研究開発本部 梶聡美・磯部和宏さま

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