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コラム

その習慣が認知症を招く?「寝る直前に大量の水を飲む」ことのデメリットとは

「もしも認知症になったらどうしよう?」誰もがそんな不安を抱いたことがあるのではないでしょうか。65歳以上の5人に1人が認知症になる時代ですが、実は最新研究で「生活習慣の改善で認知症発症リスクが40%下げられる(※)」こともわかってきています。そこで今回は、認知症サポート医・岩瀬利郎さんの著書『認知症になる48の悪い習慣 - ぼけずに楽しく長生きする方法 -』(ワニブックス)から、認知症予防となりえる食生活のヒントを少しだけお届けします。

水の飲みすぎは睡眠を阻害する

命を維持するうえで必要不可欠なのが「水」ですが、飲めば飲むほど健康によいわけではありません。水の飲みすぎは睡眠を阻害します。

厚生労働省の資料によると、日本人が1日に摂取すべき水分の目安量は2.5L(食べ物に含まれる水分も含む)です。特別な運動などをしなくても毎日2.5Lもの水分が失われているため、排泄との均衡を保つためにはそのくらい必要だといわれています。食事で約1Lの水分を摂取し、体内の代謝によって0.3Lの水分がつくられますから、1.2Lは経口摂取したいところです ただし、水を飲む時間には気をつけましょう。 アルツハイマー型認知症の原因のひとつと考えられているのは、脳でつくられるたんぱく質「アミロイドβ」。質の良い睡眠は、この「アミロイドβ」を排出してくれるのです。

ですが、寝る前にコップ2杯以上の水を飲むと、夜間、トイレに起きてしまいやすくなります。脳内のアミロイドβを排出してくれる睡眠時間を阻害する原因をなるべく少なくしたいので、寝る1時間前までにコップ1杯分の水を飲むようにしましょう。そうすれば、トイレで起きることが減るでしょう。

どうしても寝る直前に喉が渇いてしまう場合、生活環境を見直すのも効果的です。日常的に150〜200ml程度の水を何回にも分けて水分を摂取するようにしたり、カフェインの入っている飲み物やアルコールには利尿作用があるためその摂取量を控えたりすると、改善が見られます。

食事のメインを肉から魚にして、動脈硬化を予防

動物性の脂に多く含まれる飽和脂肪酸は、とりすぎると血液中に悪玉コレステロールを滞らせ、動脈硬化の原因となるのです。脳の細動脈に動脈硬化が起こると脳の血流が悪化し、血管性認知症を発症するおそれがあります。

魚に豊富に含まれているオメガ3系脂肪酸をとると、動脈硬化の予防につながります。
オメガ3系脂肪酸には代表的なものとして、αリノレン酸やEPA、DHAがあります。αリノレン酸は植物脂の大豆油やなたね油、エゴマ油、アマニ油に多く含まれます。EPAやDHAはサバやイワシなどの青魚に多く含まれています。そのため、肉中心の食生活をしている人は魚中心の食生活に切り替えるとよいでしょう。
オメガ3系脂肪酸は血液の流れをスムーズにしたり、脳や神経の機能を維持したりするのに必要な成分です。コレステロール値の低下やアレルギー抑制の効果も期待できます。

魚メインの献立を考えるときは「地中海式ダイエット」を参考にしてみてください。地中海式ダイエットとは、全粒の穀物、緑黄色野菜、果物、豆類・ナッツ、きのこ類を多く食べ、赤肉の摂取は少量で魚介類が多く、油はオリーブオイル主体といった特徴があります。地中海式ダイエットは高い記憶力・思考力を維持する効果があると研究でわかっており、認知機能の維持にも役立つと考えられています。 魚メインの献立を考えると、塩分濃度の高い和食を選択しがちになりますが、より健康的な地中海式ダイエットを試してみてください。

認知症は〝脳の糖尿病〟。白砂糖を使うのをやめよう

糖尿病も認知症になるリスクを高める症状のひとつです。

糖尿病とは、膵臓から分泌されるホルモンであるインスリンが十分に働かないために、血液中を流れるブドウ糖が増えてしまう病気です。血糖値が高いまま放置されると、血管が傷つき、動脈硬化が進行し、心臓病や腎不全などといった慢性合併症を引き起こすのですが、脳神経も傷めます。膵臓でつくられたインスリンは血液によって全身に届けられ、神経を保護する方向に働き、アミロイドβをつくりにくくします。

また同時に活発化するインスリン分解酵素の働きもあって、アミロイドβを分解しやすく、溜めにくくするのです。そのため、糖尿病になるとアルツハイマー型認知症を引き起こす可能性が高くなるというわけです。 さらに近年は、高血糖な状況が続くと脳内も高血糖となり、神経細胞が死んでしまうため、認知症を引き起こすともいわれています。認知症は〝脳の糖尿病〟という考え方があるのです。

糖尿病を予防するためには、白砂糖を使うのをやめましょう。精製度の高い白砂糖は黒砂糖のような精製されていない砂糖に比べGI値が高く、血糖値を急上昇させます。高血糖の状態が続くと、インスリンの量や働きが不足してしまうので、体が吸収しても血糖値の上昇がゆるやかな黒砂糖を積極的に使用するとよいでしょう。

本文は『認知症になる48の悪い習慣 - ぼけずに楽しく長生きする方法 -』(ワニブックス)より一部抜粋・編集しています。

※出所:Livingston G, et al:. Lancet.2020;396(10248):413-446

画像提供:Adobe Stock

著者メッセージ

私はこの本の企画を最初提案された時、「認知症を予防する食事なんてあるかな」と思ったのですが、色々と検討したり調べたりしてみると、そんなことはない、かなり有望な食事はたくさんあるということがわかってきました。また認知症予防として、やめた方がいいことを最低30個あげてくださいと言われた時も、「無理だ。そんなにない」と思ったのですが、出来上がったものは48個にもなりました。この中には日常の食事のレシピにも工夫できることがたくさん含まれていると思います。明日からでも日々の食事に取り入れていただければ、著者としてこれ以上の喜びはありません。

書籍紹介

この本に書いてあることは今すぐ全部やめましょう!!

誰もがなりたくない認知症。 本書は、「認知症を招く可能性が高い習慣」を挙げ、それぞれの対処法を紹介します。

たとえば……

・寝る直前に大量の水を飲む
・熱すぎるお風呂に入る
・早食い

一見関係なさそうなこれらの習慣も、実は認知症リスクを高めている可能性があります。
特別なことは一切なし。本書を読んで、生活習慣を見直すきっかけにしましょう!

著者紹介

岩瀬利郎(いわせ としお)
精神科医、認知症サポート医、博士(医学)。
東京国際大学医療健康学部准教授/日本医療科学大学兼任教授。埼玉石心会病院精神科部長、武蔵の森病院院長、東京国際大学人間社会学部専任教授、同大学教育研究推進機構専任教授を経て現職。精神科専門医、睡眠専門医、臨床心理士・公認心理師。
著書に『心理教科書 公認心理師 要点ブック+一問一答 第2版』、『心理教科書 公認心理師 完全合格テキスト 第2版』(ともに共著、翔泳社)、『発達障害の人が見ている世界』(アスコム)など。メディア出演に、テレビ東京「主治医が見つかる診療所~寝起きの悪い人と寝起きのいい人の体は何が違うの~」、 NHK BS プレミアム「偉人たちの健康診断~徳川家康 老眼知らずの秘密~」など。

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