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コラム

私が“手作りクリスマスケーキ”にこだわるおかしな理由【おいしい思い出 vol.6】

クックパッド初代編集長であり、自他共に認める料理好き・小竹貴子のエッセイ連載。誰にでもある小さな料理の思い出たちを紹介していきます。日常の何でもないひとコマが、いつか忘れられない記憶となる。毎日の料理が楽しくなる、ほっこりエピソードをどうぞ♪

子どもの頃のクリスマスイブ

私の両親は、石川県金沢市で小さなお米屋を営んでいます。今は2人とも歳を取り、夫婦でこじんまりと商売をしていますが、私がまだ小さかった頃、つまり40年ほど前は、実家の店はとても賑わいを見せていました。

お客さんは業務用の調達がほとんどで、金沢にあるレストランやお寿司屋、小料理屋のほか、お惣菜に使う目的でスーパーマーケットなども多かったことから、師走である12月は秋の新米シーズン以上の忙しさでドタバタしていました。

商売繁盛で嬉しい話ではあるのですが、父親と母親で営むお店だったこともあり、父親は朝から夜中まで休みなく仕事をしていました。ということで、とても忙しすぎて、朝からやたら殺気立って機嫌が悪い日も多かったですし、夜も取引先との忘年会がある日は、たくさんのお酒を飲んで大声で歌いながら楽しそうに帰宅して、とにかく声がうるさかったり。ひどい時には、一緒に飲んだ友人を連れてきて夜中に麻雀を始めたりなどもありました。

今では笑っちゃうような話ではありますが、子どもの頃の師走というと、正直心温まるようないい思い出がありません(笑)。騒々しい家庭でしたが、そんな環境でも私はこうやって一応普通には育っているのですから、昨今の子育て論の中でよく聞く、子育てには”家族一緒の時間が大事”とか強く訴える論調には、正直そうなのかなーとか思ってしまいますね。

……と、話はずれてしまいましたが、今日のテーマはクリスマスの思い出です。そんなドタバタな時期の我が家のクリスマスイブは、食卓にはいつも大きなクリスマスケーキが3つ、いや4つくらい並んでいました。

ちなみに我が家は4人家族です。種類はさまざま、レストランのケーキ、スーパーのケーキなどなど……。今の時代では許されない話ですが、当時はお付き合いという名の軽いノルマ(?)で、取引先からケーキを買わなければいけないということがよくありました。

たくさん買ってきたケーキは美味しいものもあれば、それなりのものもあり……。そしてクリスマスの翌日やその翌日のおやつもケーキ。子どもの頃は、母親の手作りのケーキで迎えるクリスマスイブに、めちゃくちゃ憧れていました。

クリスマスケーキへの思い入れは異常に激しい

その反動からでしょうか。子どもを持つ母となった今は、クリスマスケーキはいつも手作りすることにしています。

しかしそう考えると、もしかしたら将来私の子どもたちは「いつもお店で買うクリスマスケーキが美味しそうで憧れだった」とか言って、彼女たちが家庭を持った時には、お店で買う派になっちゃうのかもしれませんね。

思い入れが激しいだけに、毎年クリスマスケーキのレシピには悩みます。普段それほどお菓子作りをするほうではないので、ケーキの腕前はかなり微妙。だけど、クリスマスの大事なこの日はどうしても失敗したくない。

クックパッドで「クリスマス ケーキ」で検索して出てくるレシピを片っ端から読み込み、つくれぽに書いてあるコメントもじっくり読み込み、どのケーキにするか考えます。さらに、書店に行ってレシピ本を探す。暇さえあればInstagramでまた探す。

それくらいこの時期の私の頭の中は、暇さえあれば「クリスマスケーキは何を作ろう?」でいっぱい。ちなみに、お料理はいつもローストチキンとハムとチーズと軽いサラダで毎年同じです。その理由は、ケーキ以外考える余裕がないだけなのですが。

夜中に1人、黙々とケーキ作り

去年は私のお菓子作りの師匠である、菓子研究家の福田淳子さんから直接教えてもらった「いちごのショートケーキ」を作りました。クリスマスイブの前日、子どもたちが寝静まってから、1人静かにスポンジケーキ作り

ふわふわでしっとりのきめ細やかなスポンジ生地を作るために、卵の温度から粉の扱い方、混ぜ方、焼き加減の確認の仕方まで、細心の注意を払って進めていきます。まさに“料理は科学”とばかりに、丁寧に説明してもらったその時のノートを見ながら。黙々と静かに作り、焼き上がった生地を一晩寝かせます。

そして仕上げのデコレーション。ここは私は一切口出しせず、娘たちにおまかせです。子どもたちはテンションマックス、2人で喧嘩しながらわいわいやっていました。

生クリームは3パック用意して、もうクリーム大放出。おうちケーキの醍醐味です。いちごもたっぷり使って、とても豪華なショートケーキが完成。もちろん味も最高でした。

ということで、今年もそんな季節がやってきました。昨日くらいから「ケーキ何にしよう?」で私の頭の中はいっぱい(今もまだ決定せず)。昼休みは常にクックパッドで検索しております。やっぱり今年注目のチョコテリーヌがいいですかね……いやー、悩みます。

小竹貴子

クックパッド株式会社ブランディング・編集部担当本部長。1972年、石川県金沢市生まれ。関西学院大学社会学部卒業。株式会社博報堂アイ・スタジオを経て、2004年に有限会社コイン(後のクックパッド株式会社)入社。編集部門長を経て執行役に就任し、2009年に『日経ウーマン・オブ・ザ・イヤー2010』を受賞。2012年、同社退社。2016年4月から再びクックパッド株式会社に復帰。現在、日経ビジネスオンラインにて『おいしい未来はここにある~突撃!食卓イノベーション』連載中。また、フードエディターとして個人でも活動を行っている。

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