『家族のレシピ』は、いろんな国の文化が溶けあった料理みたいな映画【あのひとの「思い出レシピ」/斎藤工さん】

『家族のレシピ』は、いろんな国の文化が溶けあった料理みたいな映画【あのひとの「思い出レシピ」/斎藤工さん】

今話題の“あのひと”に、印象深い料理の思い出についてインタビュー。今回は、3月9日(土)に全国公開の映画『家族のレシピ』で主演を務める斎藤工さんにお話を伺いました。穏やかな口調で、料理や映画についての想いを語る斎藤さん。彼の言葉からは、“ものづくり”にかける情熱が伝わってきました。

食を大事にする教育を受けた、小学校時代

――『家族のレシピ』は「家庭の味」をテーマにした映画です。お料理は普段からよくされますか?

人並みくらいでしょうか。自分が食べるための料理は、本当に簡単に済ませます。だれかと一緒に食べるときは、手間暇をかけた料理をつくりますね。

――どんな料理をつくるんですか?

自分が過去に出会って感動した料理のレシピを、学んでつくることがあります。

たとえば、スペインで食べたパエリア。これは現地の方から習いました。その方が「サフランをケチるとダメだ」と話していたのを、大事に守っています。サフランは高いですけど、せっかく人のために調理するなら、おいしいものをつくりたい。

それから、バックパッカーでお金がなかった頃にパリの友人にごちそうしてもらったオニオングラタンスープなんか、忘れられません。タイのチェンマイで出会ったカオソーイというカレーラーメンも、1日3食そればかり食べていたくらい大好きでした。

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――『家族のレシピ』では、シンガポールの家庭料理である「バクテー(豚肉をスパイスやハーブで煮込んだ料理)」が物語のキーになります。斎藤さんはバクテーをつくることも?

(インタビューの)先週にもつくりました。クックパッドにもいろいろなバクテーの調理法が載っていて面白いですよね。僕が取り入れているのは、玉ねぎを入れるレシピです。玉ねぎがスープのうまみを吸ってくれるので、本当にバクテーによく合います。

それから食の思い出として印象的なのは、小学生の頃にシュタイナー教育を受けていて、食生活がマクロビだったこと。玄米などをよく食べていました。

シュタイナー教育では五感を通じて子どもの能力を引き出すことを目的にしているので、食はとても重要なテーマです。たとえば、小学校低学年の頃からお米づくりのカリキュラムを学ばせてもらいました。授業のなかで、お米農家と提携をして、田植えや収穫、お米をバザーで売るといった経験をしました。

映画づくりと料理は、とてもよく似ている

――料理と映画は、扱っている素材は違っても、“ものづくり”という意味で共通する部分がありそうですよね。

料理には、ものづくりの重要な要素が詰まっていますよね。いい材料を集めて、最終的には目指した形をつくり上げる。芸術性が高いという点も共通しています。誰かのためにものづくりをすることで、「喜んでもらいたい」「マズいものを出したくない」という感情が自然と湧き上がってくるのも同じです。

以前、ロバート・ロドリゲスという映画監督が、自宅のスタジオにカメラを入れていました。彼の家にはレストランのように料理のメニューが貼ってあって、その料理をゲストにふるまっていて。「映画づくりと料理はとてもよく似ている」と語っていたんです。「確かにそうだ」と強く思いました。

――『家族のレシピ』のなかで、“食”に関連したシーンで印象に残っているものはありますか?

おばあちゃんと料理をつくって食べるシーンです。あのシーンでは、事前に料理を用意したのではなく、その場で本当に調理をしました。食べたときの反応も、演技ではありません。舌から伝わった感覚がそのまま、感情や行動として表れました。

演技じゃなかったからこそ、あの映画のさまざまなシーンはもう2度と撮れないでしょうね。エリック・クー監督は、スープのうまみを掬(すく)っていくみたいに、素晴らしい瞬間の数々をこの映画に収めてくれました。

ラーメン・テーのように、各国の文化が混じりあった映画

――最後に、『家族のレシピ』の見どころについて教えてください!

シンガポールは、さまざまな国籍の人々や文化、宗教などが融合している国です。料理も同じで、シンガポール料理ではいろんな国の料理をいいとこ取りして、おいしいものを生み出していきます。『家族のレシピ』は、まさにそんな映画になりました。

この映画は日本とシンガポール、フランスの合作ですが、どの国の文化が欠けてもつくれませんでした。劇中ではラーメンとバクテーが融合したラーメン・テーという料理が出てきますが、それと同じ。各国のよさが映画のなかで混じり合っています。

それから、映画を通じて個人的に一番伝えたいのは、戦争の歴史。第二次世界大戦中に日本とシンガポールの間で起きた、悲惨な出来事についてです。僕らは学校教育で、ほとんどその歴史を教わりません。でもシンガポールの人々は、絶対に忘れてはいけない歴史として教わっています。

それを知ってもなお、彼らは日本人に対して好意的に接してくれているんです。その事実を知らなかったことを、僕はとても恥ずかしいと思いました。だからこそ、この映画を通じて多くの方に日本とシンガポールの間で起きたことを知ってほしいです。

『家族のレシピ』は一見するとファミリー映画、食にまつわる映画のようですが、裏側にある大切なメッセージも知ってもらえたら嬉しい。もちろんショッキングな部分もありますが、同時に大きな希望を与えてくれる作品に仕上がっています。

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(取材:植木優帆 TEXT:中薗昴)


『家族のレシピ』キュリナリーシネマイベント開催

『家族のレシピ』の日本公開を記念して、2月2日(土)に「キュリナリーシネマイベント」が開催されました。第1部では映画試写会が行われ、第2部ではエリック・クー監督、斎藤工さん、シシド・カフカさん、ジネット・アウさんが登壇。自身の思い出の料理を再現したレシピに加え、映画で登場したラーメン・テーをゲストとともに実食し、トークショーを行いました。

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「キュリナリーシネマ」とは、ベルリンやサン・セバスチャンなどの国際映画祭で食をテーマにした作品を扱う部門のことで、『家族のレシピ』はその両方に招待され、食事会つきの上映チケットは即日完売するほどの盛況ぶりでした。
今回はそれにならい、上映後に監督や出演者たちが、観客と一緒に作品にまつわる料理を楽しむイベントを開催。日本では初の試みとなりました。

「これも新しい形の映画の楽しみ方だと思います」と斎藤さん。客席を眺めながら、穏やかに微笑んでいました。

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再現されたラーメン・テーを口にした斎藤さんは、「美味しい。バクテーに麺を入れたらそれでラーメン・テーになるわけじゃなくて、バクテーが寄り添っていかないとダメなんです。日本の豚肉のクオリティも高いので、日本でさらにバクテーが進化しますね」と絶賛。

自身の「思い出のレシピ」を尋ねられると、撮影の最終日にエリック・クー監督が振る舞ってくれた“チキンスープ”を挙げ、「号泣してしまいました。あの味は忘れられません。家族を見つけた味でした」と語ってくれました。

クー監督も「この映画では、友情や慈愛を見つけることができました。撮影が終わってもそれらは膨らんで大きくなっています。本当に素晴らしい体験ができました。愛から生まれた映画なんだと思っています」とコメント。終始和やかな雰囲気で進み、お腹も心も満たされるイベントになりました。


映画『家族のレシピ』3月9日(土)全国ロードショー

■ストーリー:ラーメン屋を営む真人は、父の死をきっかけに、幼いころ亡くしたシンガポール人の母が書いた、料理のレシピや写真など様々な思い出が詰まった日記帳を見つける。両親の足跡を追ってシンガポールへ渡った真人は、叔父や祖母と出会い、初めて知る家族の過去と向き合うことに。日本料理の板前だった父と、街の食堂の娘だった母を結びつけたバクテーはどんな味だったのか?そして母が叶えたかった願いとは…?真人は、バラバラになった家族の想いを融合させたある料理を完成させていく…。
■出演:斎藤工、マーク・リー、ジネット・アウ、伊原剛志、別所哲也、ビートリス・チャン、松田聖子 ほか
■監督:エリック・クー
■公式サイト:https://www.ramenteh.com/

クックパッド編集部

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