揚げ物は揚げたてが格別!揚げたてのコロッケは衣がサクサクでとてもおいしいですが、家庭で揚げると、衣が破裂して中身が出てしまい、きれいに揚げるのは意外と難しいですよね。
そもそも、どうしてコロッケは破裂してしまうのでしょうか?
その原因と破裂を防ぐ方法を、長年、調理科学の研究をしている、東京家政大学大学院・客員教授の長尾慶子先生にお伺いしました。
おいしく揚げるコロッケのコツ・ポイントと合わせてご紹介します。
コロッケは衣と具材(マッシュポテトと炒めたひき肉や玉ねぎを合わせたもの)で作られていますが、コロッケの破裂には、薄い衣(厚さ約1mm)のときに起こる、表面に近い衣付近で起きる小さなピンホール状の破裂と、衣を厚く(厚さ約2-3mm)したときに具材全体が膨張して起こる大きな全体破裂の2種類があります。
どちらも破裂の原因は同じで、加熱中に衣の付近、あるいは具材の温度が上昇し、それに伴って圧力が高まり、衣の強度を上回ることで破裂してしまいます。
コロッケの破裂は、衣側と具材側の力のせめぎあいで起こります。衣部分の強度が大きく、具材側の圧力より上回っていると破裂しません。
破裂を防ぐには以下のような方法があげられます。
水分量が多いと、具材側から衣側への水分移動が起きやすくなります。特に薄い衣の破裂は衣のすぐ下の水分量の多少に大きく影響されるので、水分が多いと衣のすぐ下で蒸気圧が高まり、衣の弱い部分から小さい穴が開き中身が吹き出て、破裂しやすくなります。
具材に含まれる水分を少なくすると、水蒸気の発生も少なくなるので、破裂を防ぐことができます。
衣をつける前に具材を冷蔵したコロッケの方が、常温のままで調理したコロッケよりも破裂を抑制でき、さらに冷凍したコロッケは破裂しないことが ある実験でわかりました。
具材を低温にしておくことで、揚げた際の温度上昇を遅らせます。具材が高温になる前に、強度のある揚げ衣を作ることができれば破裂を防げるのです。
高温の油で揚げると、衣のすぐ下の水分が蒸気になって外に吹き出ようとする前に、それに負けないくらいの強度の揚げ衣が早くできあがるので、破裂は起きにくくなります。
厚い衣の場合も、加熱時間を短くすることで具材全体が膨張する前に揚げることができるので、同様に破裂が起きづらくなります。
180-200℃くらいの高温の油で、短時間でカリっとした揚げ衣にすることが破裂を防ぐことにつながります。
具材が常温のコロッケでは3分、冷蔵で3.5分、冷凍で5分位の加熱終了時に、中心部温度が低温であっても、その後の余熱3-5分で70~80℃と上昇していきます。コロッケを食卓に盛り付けて食べるときには、ちょうど良い食べ頃の温度になっていますよ。
最後に、おいしく揚げるポイントを4つご紹介します。
具材の水分が多く残っていると、揚げたとき、薄い衣のすぐ下の水分が高温の蒸気になり、外に吹き出る時に破裂して、具材が衣から出てしまいます。衣に強度があり、衣付近の破裂に耐えられても、加熱後半に具材全体の膨張による大きな破裂の原因になってしまうのです。
ひき肉や玉ねぎを炒めながらしっかりと水分を飛ばすことがポイント。じゃがいもを混ぜ合わせたあとは粗熱をきちんと取り、余分な水分を残さないようにしましょう。
具材を冷ますことで、揚げ始めの2〜3分は中身の温度がほとんど上がらず、具材の膨張も少なくなり大きな破裂が抑えられます。
また衣のすぐ下の水蒸気の発生も少なくなるので、加熱はじめに起こりやすい衣付近の小さな破裂を防ぐことができます。
衣の付きムラがあると、部分的に薄いところから破裂しやすくなるので、ムラなく付けましょう。
溶き卵にくぐらせる方法だとムラになりやすいので、小麦粉と水(卵)を混ぜ合わせたバッター液を使うと衣が均一になります。
もし具材の水分量が多い場合でも、バッター液に付ける前に小麦粉を薄くふるってかけておくと、一時的に衣の下の水分が少なくなり、加熱はじめの衣付近の破裂を防ぐことができます。
揚げる際にコロッケをあまり多く入れすぎると、油の温度が急激に下がって適温に戻るまでの時間がかかり、破裂の原因や、コロッケが油っぽくなる原因になります。家庭でつくる場合は、180度の温度でコロッケ3個くらいが適量です。
コロッケを油に入れたら、しばらく触らないことが大切。衣に傷がついて、破裂する原因になってしまいます。
コロッケの破裂の原因を理解すれば、おいしくきれいに揚げることができますね。ぜひ試してみてください。
長尾慶子
日本調理科学会会員、お茶の水女子大卒、博士(学術)、文教大学短大および東京家政大学教授を経て、現在、東京家政大学(院)客員教授。
主な著書:調理科学実験(編著)建帛社、 調理を学ぶ(編著)八千代出版