cookpad news
コラム

これからの時期に怖いノロウイルス!意外と知らない「正しい手洗い」の方法

秋の終わりから冬にかけて猛威を振るう食中毒のひとつが、「ノロウイルス」によるものです。食中毒年間患者数のほぼ半数を占めるという、ノロウイルス食中毒を予防するにはどうしたらよいのでしょうか。

原因は二枚貝よりも、人!

ノロウイルスは人の腸管内でのみ増殖する、非常に小さなウイルスで、生命力、感染力が強く、少量でも発症させる力を持っているのが特徴です。大規模な食中毒事件の多くは、仕出し弁当などを原因食品とするノロウイルスによるものです。

ノロウイルスと聞いて、かきなどの二枚貝が原因と思う人は多いのではないでしょうか。確かにノロウイルスに汚染された二枚貝を食べたことで感染する場合もあるのですが、実際には、人から人への感染がほとんど

ノロウイルスは、海水を通してかきなどの二枚貝に蓄積され、それを食べた人に感染→感染者の便や嘔吐物から下水処理場をくぐり抜けて海へ→二枚貝に蓄積…というサイクルで生き延びています。しかし感染経路はそれだけではないのです。

汚染された貝を食べた人の腸内で増殖したノロウイルスは、便や嘔吐物から別の人へ飛沫感染したり、手指を介して接触感染したりして広まります。さらに、ウイルスが付着した手指で触れた食材から、別の人の口に入ります。ドアノブや水道の蛇口、水洗レバーや便座などの環境を汚染し、そこに触れた人の手指から口に入ることもありえます。

こうして、ノロウイルスは人から人へ、人から食材を介して人へ、人から環境を介して人へと移り、次の感染者の腸で増殖します。

ノロウイルスがさらにやっかいなのは、ノロウイルスに感染しても症状が出なかったり、下痢や嘔吐などの症状が治まった後でも、その人の便から感染することがあるということです。またノロウイルスは乾燥に強く、乾燥状態でも2ヵ月は生存するといわれています。感染者の便や嘔吐物の処理が不十分だと、それらが乾燥してちりやほこりとなって空気中に漂い、人に感染する場合もあります。

多様な感染経路で人に入り込むノロウイルス。日頃から十分に注意をしておくことが大切です。

ノロウイルスに感染してしまったら?

ノロウイルスに感染したときの症状は、腹痛、下痢、嘔吐、吐き気などで、2〜3日で症状は治まります。大きな後遺症もありません。死亡例も報告されていませんが、高齢者や乳幼児は、嘔吐物が気管に入ったりして窒息したり、誤嚥性肺炎などにより死に至る危険もありますから、注意が必要です。

症状がみられたら、水分と栄養補給を充分に行い、医師の指示を受けましょう。下痢止め薬は回復を遅らせる可能性がありますので、使用しない方がいいでしょう。

前述の通り、ノロウイルスは感染者の便や嘔吐物から感染が広がります。家族が感染したときは、しっかり処理しなければいけません。ノロウイルスは次亜塩素酸ナトリウム(ドラッグストアで購入可能)で死滅させることができます

アルコールはノロウイルスに対しての効果がはっきりとしておらず、有効とはいいきれません。家庭では塩素系の漂白剤も有効ですので活用しましょう。服やリネン類は、煮沸消毒などで、ウイルスの拡散を防ぎます。

しっかり「加熱」と正しい「手洗い」が予防の近道

少量でも発症し、思いも寄らない場所から人へと感染する可能性があるノロウイルスは、やはり予防が肝心です。

ノロウイルスは加熱することで死滅しますので、万が一ウイルスが蓄積、付着した食品であっても、しっかり加熱すれば安心です。中心部が85〜90℃で90秒以上になるような加熱をおすすめします。

ノロウイルスが付着した場所に手で触れたとしても、それが口に入らないようにすれば、感染は防げます。一番有効なのは「手洗い」です。しっかりとした手洗いを適切なタイミングで行っていれば、手に付着したウイルスは、洗い流すことができます。外出から帰ったとき、トイレのあと、食事の前、調理前や調理中など、衛生的な手洗いを行う習慣をつけましょう。調理をする人はもちろん、子どもたちを含む家族全員、こまめな手洗いを徹底させてください

ただ、手洗いとひと口に言っても、人それぞれ。自分では洗ったつもりでも、しっかり洗えていないこともあります。衛生的な手洗いの仕方もおさらいしておきましょう。

衛生的な手洗いの仕方

時計や指輪などはあらかじめはずしておきましょう。

【1】流水で洗う
水で落とせる汚れを除去します。

【2】ハンドソープを手に取る
十分に泡立たせます。泡立たせないと汚れは除去できません。

【3】順にこすり洗いする
手のひら、指の腹面→手の甲、指の背→指の間、つけ根→親指、親指のつけ根(拇指球)→指先の順で洗います。 指先を洗う際は、爪先を立てて爪周りは第一関節を曲げ、手のひらに円を描くように洗いましょう。

【4】十分な流水でハンドソープを洗い流す
ここまでを2回繰り返すとより効果的。

【5】手を拭き、乾燥させる
清潔なタオルかペーパータオルで。タオルの共用は避けましょう。時間にすると1分以上はかかります。洗い残しが多い箇所は、特に気をつけましょう。

注意!洗い残しが多い箇所

©公益社団法人 食品衛生協会

手は病原微生物の運び屋です。手洗いの習慣をつけておくと、ノロウイルスだけでなく、ほかの病原微生物にも有効です。

このほか、キッチン周りの調理器具も清潔にしておくことも忘れずに。これにも熱湯消毒や塩素系の漂白剤が有効です(熱湯の取扱には十分に注意しましょう)。

これから冬に向けてノロウイルスの流行期です。日頃からの衛生的な手洗い習慣を徹底して、家族をノロウイルスから守りましょう!

監修:公益社団法人日本食品衛生協会

飲食物が原因となって起こる食中毒などの健康被害を防止し、消費者の健康を守るため、食品等事業者に正しい食品衛生の知識を広めることを目的として、地域の保健所や食品製造業や飲食店等の人々と協力し、 食の安全を守るための活動を行っています。
・ホームページはこちら>>
・食中毒・食の安全Q&A「知ろう!防ごう!食中毒」

編集部おすすめ
クックパッドの本