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コラム

炊きあがりにムラが出やすい。「洗ったお米をザルにあげて吸水」はNGだった!?

【お米ライターのコメバナシvol.8】私たちにとってお米はあって当たり前の存在ですが、実は意外と知らないことだらけ。そこで、巷でよく耳にするお米に関する「疑問」や気になる「噂」をお米ライター柏木智帆が検証します。おいしい白飯や米料理さえあれば食卓は豊かになる!をモットーにお米のおいしさを追究していきます。

お米が乾燥…吸水にムラ…

本やweb記事で「洗った米をザルにあげることで米に吸水させてから炊飯する」という方法が紹介されています。お米は炊飯前に水に浸けて吸水させるのが一般的ですので、吸水のために水からザルにあげるという方法は言わばイレギュラーです。

ザルに上げる理由については、「米は1時間ほど水に浸けると発酵する」「(水に浸けて吸水させると)米の表面と芯の部分で吸水加減が違う」と書かれていました。

イレギュラーだから間違いというわけではないので、実際にザルにあげての吸水を試みてみました。ところが、この方法ではザルに濡れ布巾をかけてもやはり米が乾燥してしまいました。

また、説明に書かれていた吸水時間では「夏は30分、冬は1時間」と短く、お米に付着した水だけでお米の中心までしっかりと吸水させることは難しいと言えます。

そして、冬場は特に空気が乾燥しやすいので、お米がより乾燥しやすくなってしまう上、気密性が良く冷暖房完備された現代の住宅では、吸水時間を単純に夏と冬で分けることができるのか疑問です。使う水の温度によっても吸水速度は変わります。

季節に関係なく、「浸水15分、ザル上げ15分」と提唱している方法もありました。これも、気温、水温、お米の品種や質によって吸水度合いはまちまちになります。

吸水量を計測してみると、同じ季節であっても150gグラム(1合)のお米を洗った後にザルに上げて40分ほど吸水時間を設けたお米は、177グラムになることもあれば、180グラムになることもありました。小さな差ではありますが、お米の量が増えると、誤差はもっと大きくなりそうです。

また、使うザルの大きさや水温や気温などの条件によっても誤差が出てしまいます。説明によると、「ザルにあげると米全体が均一に吸水される」とのことですが、ザルにあげた上側の米は乾いていても、ザルの底のほうの米は濡れたままで、1粒1粒の米の吸水には明らかに差異があるように感じました。

「米は1時間ほど水に浸けると発酵する」とのことですが、常温で1時間ほど水に浸けても発酵しません。気温が高くなってくる季節や夏場など衛生面が心配な場合は、冷蔵庫の中で浸漬させれば数時間経っても発酵することもなく、年間通してほぼ一定の温度に保つことができます。

炊きあがりにムラが出やすい

実際に、洗ったお米をザルにあげて吸水させる方法で炊飯してみました。

季節は春。薄ら寒いので暖房を入れています。夏の吸水時間にすべきか冬の吸水時間にすべきか分からないため、夏と冬の間を取って吸水はひとまず40分。お米が少しでも乾きにくいようにザルには濡れ布巾をかぶせました。加水量は、炊飯前のお米と同量とのこと。本やweb記事によると、この方法ならば鍋や土鍋、炊飯器など、どんな炊飯道具でもおいしく炊けるということでした。

まずは、検証時のブレを少なくするために炊飯器の早炊きモードで炊いてみました。その後も、吸水時間を30分にしてみたり1時間にしてみたりと何度か炊飯してみました。

すると、普通の浸漬方法で炊いたごはんと比べると、炊きたての食感はほぼ変わりませんでしたが、甘さや旨みが薄く感じられました。そして、冷めると舌触りが悪くなったり、硬くなりやすかったりと、炊飯ごとにムラがあるように感じました

その後も同様の炊飯を重ねていくと、炊きたてでも炊飯ごとに炊きあがりが変わることもあり、噛んだときに少し粉っぽく感じる場合や、ふっくら感が足りない場合もありました。

炊きあがりの食感から推測できることは、米粒に付着した水だけでは吸水が足りないということ。その日の気温や湿度、米の質や精米、炊飯する米の量などによっても、炊きあがりはまちまちになりやすい方法だと感じました。

家庭のキッチンでできるレベルの私のつたない実験だけでは心もとないため、炊飯に関する研究もしている学術博士で兵庫県立大学環境人間学部の坂本薫教授(食物学)にも疑問を投げかけてみました。すると、「お米にひび割れができ、炊飯中にでんぷんが出やすくなるため、もちもちとした炊きあがりになる場合もありますが、条件によっては炊きあがりにムラが出やすい方法です」と教えていただき、納得しました。

一方で、酢飯には「ザルに上げて一定時間水を切ってから炊飯」という方法もあります。以前に都内の鮨屋にて、冷水で20分浸漬、20分ザル上げをして、少なめの水と強い火力で硬めに炊いたシャリを食べました。パリッとした粒張りと弾力があり、一粒一粒をしっかりと感じられました。シャリは炊飯後の熱々の状態に寿司酢を混ぜ込み、さらに酢飯が人肌ほどの温かさになって寿司酢がなじんだ時点で完成します。目指す食感も鮨店によって違い、白飯とは根本的に炊飯の考え方が違うようです。

お米にしっかりと吸水させたほうが良い理由は、水が熱伝導の役割を果たすからです。1粒1粒のすみずみまで水が入ることで、お米のでんぷんをしっかりとアルファー化させてくれます。家庭でふっくらと炊き上げた白飯を食べたい!という場合には、ザル上げよりも浸漬をおすすめします。

柏木智帆

お米ライター。元神奈川新聞記者。お米とお米文化の普及拡大を目指して取材するなか、お米農家になるために8年勤めた新聞社を退職。2年にわたってお米を作りながらケータリングおむすび屋を運営した。2014年秋からは田んぼを離れてフリーランスライターに。お米の魅力や可能性を追究し続ける、人呼んで「米ヘンタイ」。
【ブログ】柏木智帆のお米ときどきなんちゃら
【クックパッド】柏木智帆のキッチン

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