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新型コロナでバングラデシュの衛生観念はどうなった?イスラム教最大の祝祭で起きた変化とは【#コロナ禍で変わった世界の食卓】

新型コロナウイルスの影響で、私たちのライフスタイルは大きく変化しました。その中でも、とくに食生活が変わったと感じる方も少なくないでしょう。日本では自宅で料理を作る人が増え、家族で楽しめるホットプレート料理やお菓子作りの人気が高まりましたが、こういった現象は日本国内だけのものなのでしょうか。今回、クックパッドではコロナ禍による食の変化に注目。世界の食事情について各国を調査しました。

第6回は、総人口1億6650万人、そのうちの9割以上はイスラム教徒と言われる「バングラデシュ」。昨年と今年はイスラム教の最も神聖な月とされる「ラマダン」の月とロックダウンの時期が重なり、これまでにない経験をした人も多かったそう。今回はラマダン期間と、イスラム教の人々にとってラマダンに並んで重要な「イード・アル・アドハー」(犠牲祭)の行事食の変化に注目。現地在住の方々にお話を伺います。

衛生意識の高まりで、宗教の行事にも変化が

新型コロナウイルスの流行前は、こまめな手洗いや気軽にマスクを着けるといった習慣がなく、人々の衛生観念が日本とは異なっていたバングラデシュ。感染が拡大する現在ではどうなっているのでしょうか。現地在住の日本人ブロガー・ひばりさんに聞きました。

国民のほとんどがイスラム教徒であるバングラデシュでは、食事の際は基本的にはスプーンやフォークを使わず、右手を使って食べます。彼らに言わせると素手で食べたほうがおいしいらしいのです。しかし、富裕層は衛生に対する意識が高く、ショッピングモールで提供されるスプーンやフォークを使う人が増えてきました。以前は提供されていても使わない方が多かったので、ちょっとした驚きです。また、食前の手洗いをする人も増えましたし、ベアラーとよばれるお手伝いさんに自宅に来てもらった際は、仕事をする前にシャワーに入ってもらう家庭も多いです。我が家でも今は毎日、ウイルスを外部から持ち込まないよう、ベアラーさんには出勤後すぐにシャワーしてもらっています」

また、ひばりさんがコロナ禍の影響を強く感じたのは、バングラデシュでラマダン明けのお祭りと並んで重要視されている「イード・アル・アドハー」という宗教行事でのエピソード。イード・アル・アドハーは、家族や親戚が一同に集まり、イスラム教の神・アッラーに家畜を捧げるお祭りで、この期間は祝日になり多くの店は休みになります。交通量も減り、街は日本でいうお正月のような雰囲気に。そんな中に、突如として牛や羊などの家畜が現れます。

2020年のイード・アル・アドハーの期間、街中に牛が繋がれている様子。ただ、コロナ禍の影響もあり例年よりはだいぶ少ない数だったそうです(写真提供:ひばりさん)

イード・アル・アドハーの日は、アパートの前など、路上のいたるところで生きた牛や羊が人々によって解体されています。なかなか衝撃的な光景ですが、そのお肉は一片も無駄にせず、家族や友人、貧しい人たちに分け与えて食べるのが慣例です。例年ではイード・アル・アドハーが近づくと街中で牛が売られるのですが、昨年は新型コロナの影響で、オンラインでの牛の売買が多かったです。これもやはり衛生面を気にして、ということだと思います。今年も更に厳しいロックダウンを実施していますが、イード・アル・アドハーの時期だけは行動規制を緩めることになりました。ただ、昨年に引き続きオンラインの『デジタル牛市場』はオープンするようです」

人々の衛生意識の高まりが、食事の摂り方や宗教行事へも影響を及ぼしてきているのですね。路上での牛の売買が難しくなりそうなので、今年の「デジタル牛市場」はさらに賑わうのかもしれません。

揚げ物大好き!バングラデシュ人の「イフタール料理」

ロックダウン状態で迎えた、今年と去年のラマダン。ラマダンは日中断食をする決まりがありますが、日没後は飲食が許されています。家族で豪華な食事を摂る人も多く、意外にも食への関心が高まる時期です。このコロナ禍ではどのようになっているのでしょうか。

「いつものラマダンは市場や屋台が大賑わいですが、コロナ禍になってからは家で料理を作る人が多くなりました。以前のようにレストランに行ったり親戚の家を訪れたりしてお祭り気分を楽しめないのはもどかしいですが、そんな時でも安らぎを与えてくれるのが食事。揚げ物やチーズなど、大好きなものを料理することを娯楽として楽しむ人が増えています」 と、クックパッドの現地スタッフは言います。

現地スタッフも大好き! と言う「揚げ物」。実はバングラデシュのイフタール料理(ラマダンの時期、日没後の最初に食べる食事)は、揚げ物が多いことでも有名です。その理由について現地の主婦タスヌーバ・イスラム・テティ/Tasnuva Islam Tithiさん(30代)はこう語ります。

「バングラデシュ人は揚げ物が大好き。揚げ物を愛するのは、遺伝的なものだと思います。私自身、ヘルシーな油分の少ない食事をしようと何度も考えたことがありますが、揚げ物料理を目にした途端、食べずにはいられなくなります。だから、もう我慢するのはあきらめました(笑)」

ラマダン時期の日没後に食べる「イフタール」のプレート。揚げ物がずらりと並びます(写真提供:クックパッドバングラデシュ)

また、バングラデシュを知る日本の方々からは「生食はお腹を壊す可能性があるため、衛生面を考えて揚げるという手法が定着しているのでは」(クックパッド海外事業部スタッフ)、「早く大量に作れて、少量の材料で大家族がお腹いっぱいになれるのが揚げ物だから」(世界の台所探検家・岡根谷実里さん)という意見もありました。

ロックダウン中に作ったのは、やっぱり「揚げ物」

「ラマダン時期は気軽に外食に出かけることができなかったので、レストランスタイルの料理に多く挑戦しました。作ったのは、ビリヤニ(南アジア地域の炊き込みご飯)、ハリーム、ベルプリ、チキンシャシュリック(肉の串焼き)、餃子、ドイ・チラー・ショルボー(米を使った冷たいドリンク)など。あとは『ジャレビ』ですね」(タスヌーバさん)

バングラデシュの人が大好きな「ベルプリ」と呼ばれる料理。揚げた生地にマッシュポテトのフィリングを詰め、タマリンドのジュースをかけて食べます(写真提供:タスヌーバさん)

タスヌーバさんが最後に挙げた「ジャレビ」は、プレッツェルのような見た目でサクッとした食感の揚げ菓子で、日本の「かりんとう」に似ているのだそう。イフタールに食べる料理としてとてもポピュラーで、多くの人がこれを食べてお腹を満たしています。小麦粉で練った生地を油で揚げて作るのですが、仕上げに甘いシロップをたっぷり染み込ませるため、激甘スイーツとしても有名です。

昨年から今年にかけてはコロナの影響でレストランや屋台が閉鎖され、お店で気軽に食べることができなかったため、手作りをする人が急増したそうです。タスヌーバさんが実際に作ったレシピをご紹介。

激甘スイーツ!本場の「ジャレビ」レシピ

調理時間:約20分
<材料> 4人分
・薄力粉…2カップ
・コーンスターチ…大さじ1
・ベーキングパウダー…小さじ1
・食用色素(あれば黄色のクチナシ色素などでもOK)…小さじ1/2
・砂糖…2カップ
・水(シロップ用)…2カップ
・カルダモン…3粒

・揚げ油…適量

<作り方>
1. まずジャレビの生地を作ります。薄力粉、コーンスターチ、ベーキングパウダー、食用色素を入れ、少しずつ水を加えてもったりとした生地を作ります。細く垂らして文字が描ける程度の固さが良いです。

2. シロップの用意をします。砂糖、水、カルダモンをボウルに入れて、砂糖が溶けるまでよく混ぜておきます。

3. 1の生地を細い口金のついた絞り袋に詰めます(お好み焼きソースの容器やビニールの袋の先を切って穴を開けたものなど、中の生地を細く出せればOK)。

4. 揚げ油を熱し、生地を細く円を描くように落として、火が通るまで揚げます。

5. 油から引き揚げ、2のシロップの中に15分ほど浸す。たっぷりとシロップをしみこませたら出来上がり。

まだまだ厳しい感染状況が続きますが、人々の衛生面の意識や家庭での料理への取り組み方も変化し始めた様子のバングラデシュ。制限がある中でも、家でラマダンの料理に挑戦したり、行事にオンラインのツールを活用して乗り切っているようです。まだまだストレスを感じる事も多いですが、1日でも早く人々が日々の食事や伝統ある行事を楽しめる日が戻ってくることを祈るばかりです。

(TEXT:河野友美子、中山あこ、植木優帆)

#コロナ禍で変わった世界の食卓

本記事は、Yahoo!ニュースとの共同連携企画です。クックパッドニュースでは、コロナ禍で変わった世界の食事情をリサーチ。各国で高まったムーブメントや、人気になった料理を現地の方にお伺いしました。世界の食卓に、明日から取り入れられる食のヒントがあるかもしれませんよ。

取材協力

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