【FoodClip 食卓トレンド】食ビジネス全般の動向やトレンド、食卓の最新データを発信するFood Clip編集部に、いま気になる食トレンドを教えてもらいました。今回お届けするのは「ネパール料理」。多民族文化が混ざり合う国ですが、全土に共通する料理もいくつかあるんですよ。ネクストスパイスカレーになるかも、と最近人気を集めています。
こんにちは!FoodClip編集部です。
ネパールは、中国チベット自治区とインドに挟まれた細長い国で、100以上の民族が暮らしていると言われています。
食文化や料理も民族によって異なるため、全土に共通する代表的な料理と言えるのは、定食のような「ダルバート」と「タルカリ」、餃子に近しい「モモ」くらいです。「ダルバート」にしても献立の構成要素は共通していますが、調理法も地域によって特徴があり、「モモ」のタレも民族によってさまざまです。
ネパールという国は、北側の国境沿いには世界最高峰のエベレストを擁するヒマラヤ山岳地帯が広がっていて、面積は北海道の約1.8倍。インド系、チベット系のほか、ネワール族やグルン族、タマン族、マガル族などさまざまな民族が暮らし、人口の8割以上がヒンドゥー教徒です。聖なる生きものとされる牛は基本的に食べず、国全体でよく食べられているのは山羊や鶏です。
国全体で共通する食文化がほとんどないネパールで、唯一共通で食べられている料理がダルバートです。ダルバートのダルは「豆のスープ」、バートは「白飯」を示し、ダルバートの基本構成要素はダルとバートです。このほかに野菜のおかずであるタルカリや、ピクルスのような箸休めのアチャール、肉や魚のカレーや青菜炒めのザークを盛り合わせます。日本でいう定食のようなメニューです。
庶民的なお店か、高級レストランか、によってメニューや品数が変わるのはもちろん、タカリ族やネワール族など、民族ごとでも内容が変わります。
ダール(ダル)はネパール語で挽き割り豆のことで「豆のスープ」という意味もあり、ダルバートには欠かせないメニューです。茹でた豆にスパイスや香味野菜(主にニンニクや玉ねぎ、クミンシードや唐辛子)にテンパリングしたオイルを混ぜ加えます。ダールは主に白飯にかけて食べます。
■おすすめレシピ
タルカリはもともと「野菜」という意味ですが、転じて「おかず」という意味でも使われ、肉や魚のカレーのことをタルカリと呼ぶこともあります。タルカリの調理法はとてもシンプルで、玉ねぎやニンニク、しょうが、トマトなどと一緒に炒めて、ネパール料理の基本スパイス4種(フェヌグリークシード、ターメリックパウダー、クミンパウダー、チリパウダー)を組み合わせ、塩で味付けします。
ネパールの野菜料理は、インド料理と比べてもスパイスの種類や量も少なく、野菜本来の味を楽しめる料理になっています。
■おすすめレシピ
ネパールでは肉や魚のカレーのこともタルカリと呼ぶことがあります。ノンベジ(肉や魚)のタルカリは、汁気の多いジョールというタイプと、どろっと濃厚なグレイビーが具材にからんだタイプがあります。
ネパール料理でもっとも使われる肉は水牛です。前述のとおり、ヒンドゥー教徒が多いので神聖な動物とされる牛は食べませんが、水牛は食べられています。ほかに全国的に食べられているのは山羊や鶏で、豚を食べるのは山間部の民族(ライ族やリンプー族の豚肉食文化は有名)のみと言われています。
ネパールでは魚も食べますが、国土が海に面していないため淡水魚が食卓にあがります。北部ではヒマラヤ地帯から周辺の清流でとれる小魚で作られることが多く、南部ではコイやナマズで作られることが多いそうです。
和食の漬物に似た存在がアチャール。ダルバートを食べ飽きないようにする味と食感のアクセントの役割を担います。アチャールにはいくつかタイプがあり、生野菜を和えたもの、浅漬けタイプ、石臼やミキサーでペーストするタイプ、スパイスとオイルに漬け込むタイプなどがあり、モモのタレなど液状のものもアチャールと呼びます。
クックパッドの年別の検索頻度をみると2015年以降、アチャールの人気は上昇中。スパイスカレーの添え物としても関心が高まってきています。
■おすすめレシピ
日本の餃子のようなモモは、噛みごたえのある生地に肉の餡を包み、蒸して食べる料理です。もともとはチベットからネパールへと伝わってきたとされ、ネパールでも全国区の定番料理として午後の間食時に食されています。
■おすすめレシピ
野菜と豆が中心のネパール料理は、ヴィーガンや健康志向の人たちからも共感を得やすく、スパイスカレーよりさらにマイルドな味付けであることも、近年の人気を集めている要因と言えます。
近頃は東京や関西でもネパール料理専門店も増えてきているので、スパイスカレーに続くトレンドとして、このまま日本に定着していくことになるのか今後に注目していきたいですね。
参考文献:「ダルバートとネパール料理」本田遼(柴田書店)