【お米ライターのオコメバナシvol.13】私たちにとってお米はあって当たり前の存在ですが、実は意外と知らないことだらけ。そこで、巷でよく耳にするお米に関する「疑問」や気になる「噂」をお米ライター柏木智帆が検証します。おいしい白飯や米料理さえあれば食卓は豊かになる!をモットーにお米のおいしさを追究していきます。
待ちに待った新米の季節!毎日お米を食べるという人も、たまにしか食べないという人も、やはり新米の季節は改めて「お米が食べたい!」という欲求にかられるのでは。普段は炊飯器でお米を炊くという人も、この機会に趣向を変えて直火で炊いてみるのはいかがでしょう。
今回は鍋でおいしく炊く手順についてお伝えしますが、正解は1つではないので、自分の炊飯流儀があるという人は参考程度にお目通しください。
お米の計量に使うのは、デジタルのキッチンスケール。計量カップでは多少の誤差が出るためです。1合につき数グラムの小さな誤差でも、お米の合数が増えるごとに大きな誤差になっていきますので、やはり正確に量るためにもキッチンスケールがおすすめ。
ボウルでお米を計測したら、一度キッチンスケールの目盛りを「0」にして、ボウルとお米の重さを引いておきます。すると、次の手順で水の重さだけを計測することができます。ちなみに1合は150gです。
洗米については「近年は精米技術が発達したのでお米は洗うだけでOK」とも言われ、私も以前はさっとすすぐ程度でした。しかし、うっすらと古米臭があるお米を研いでみると臭いがとれておいしく食べられたことがありました。そこで、精米の際に米の表面に再付着した粘着質のぬかは、やはり研がないと取れづらいのではないかと考えました。
ただし、ここで言う「研ぐ」というワードは人によって受け止め方がそれぞれであることに最近気がつきました。私がイメージする「研ぐ」は「なでるように洗う」ことでしたが、多くの場合は「強い力でギュッギュとお米をこする」というふうに受け取られているようです。お米は繊細で割れやすいので、強い力で研ぐのは禁物。とは言え、「洗うだけ」と言われると、さっとすすぐだけのイメージにむすびつくため、言葉選びに悩みました。
そこで、「なで洗い」(造語)という表現はどうだろうかと考えました。「研ぐ」まではいかないけど、「すすぐ(洗う)」よりはきっちりと。「なで洗い」の際、両方の手のひらでお米をはさんでなでる場合は、「ひたひた」よりも若干多めの水で。指を丸めた状態でボウルの底をさっとなで回す場合は、「ひたひた」よりも若干少なめの水で。水を切りすぎず、水を入れすぎないことで、お米に優しいソフトタッチで洗うことができると感じています。
古米臭がないお米も含め、いくつかのお米を「なで洗い」したり「すすぐ」だけにとどめたりして試したところ、「なで洗い」したほうが舌触りやふっくら感が良くなるお米が多く、旨みの大きな減少も感じませんでした。
果たしてぬかがとれているのかとれていないのか、お米の表面のうまみ層までとれているのかとれていないのかは、顕微鏡を持っていないのでわかりませんが、体感的に「なで洗い」をしたほうが好みの食味になったため、やはり「なで洗い」がベターだという結論に落ち着いています。
改めて手順を説明すると、
1.量ったお米は水を張った別のボウルに投入して、さっと片手で混ぜ、すぐに水を捨てます。
2.軽く「なで洗い」した後に、3〜4回ほど手早く水を替えたら、お米をザルに上げます。
3.ある程度水を切ったお米をキッチンスケールの上に置いておいたボウルに入れます(この時点でお米が吸った水やお米の周りに付着した水の重さが表示されます)。
4.計測しながら水を注いでいきます。
使う水は最初と最後だけは浄水がおすすめ。お米は最初に触れた水を重量の1割ほど吸いますが、洗米中はほぼ吸っていないため、最初と最後以外は水道水で大丈夫です。
私は基本的には1合につき200gの水を入れていますが、好みで調整してみてください。「新米は水分が多いので水を少なめに炊く」と言われていますが、現代では機械による乾燥調整が主流であるため、新米の水分量が多いということはありません。
たしかに1年経った古米は新米に比べると保管状況次第で水分値が減る場合もありますが、一般的には温度と湿度がしっかりと管理された環境で玄米のまま保存されているため、大幅に水分が飛んでしまうことはありません。
新米の魅力の一つは「みずみずしさ」ですが、その理由は、水分が多いからではなく、収穫したてのお米はタンパク質の組織構造がやわらかいからです。加えて、米粒の水分値が落ち着いていないという理由もあるように感じています(詳しくは、「お米ライターのコメバナシvol.1」)。
新米は水っぽく炊きあがりやすいため、「水を少なめに炊く」という方法自体は間違いとも言えません。とは言え、ひとくちに新米と言っても、組織のやわらかさも水分のばらつきもお米によって違うため、一律に水分を少なめにして炊くよりも、まずは通常通りに炊いてみて、2回目の炊飯からお好みに合わせて水の量を変えることをおすすめします。
水を量ったらラップなどでふたをしてから冷蔵庫へ。最低でも2時間、できれば6時間、余裕があれば12時間ほど水に浸けます(私は基本的には10〜15時間ですが、たまに3時間ほどになってしまうこともあります。ライフスタイルに合わせて無理のない浸水リズムを)。
低温でじっくりとお米に水を吸わせることで米粒のすみずみに水がしっかりと行き渡り、水が熱伝導の役割を果たして芯まで火が通ります。また、冷たい水から炊き始めてゆるやかに沸点に到達することで、ふっくらと炊き上げることができます。低温で水に浸ける時間をしっかりと設けると、甘さや旨みも増すと感じています。
お米を浸ける水量を量っておいたのは、水ごと火にかけるため。お米を浸けておいた水にはでんぷんが流れ出ているため、水は替えずにそのまま鍋に移します。
鍋によっても違いますが、私が使っている土鍋の場合は、最初は強火で、沸騰したら弱火10分、火を止めて蒸らし10分。沸騰までの時間は一般的に10分間が理想と言われているようですが、私はいつも8分〜8分30秒ほどで沸騰する火加減で炊飯しています。好みに合わせて火加減の調整を試してみるのも楽しいですよ
炊飯後に蒸らし終わったら、蓋を開けてしゃもじを入れて底から、そして側面から、ごはんをひっくり返して「めし切り」します。炊きムラを均一にして、余分な水分を飛ばすためです。
また、ごはんを茶碗によそうときにしゃもじに接した面が上から見える状態で盛ってしまうと、ごはんがのっぺりとしておいしそうに見えません(実際のおいしさも半減です)。よそうときは茶碗の上でしゃもじを茶碗と並行にスッと抜き取る方法がおすすめ。ふんわりと盛ることができ、おいしそうに見えるだけでなく、実際においしくなりますよ。
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お米ライター。元神奈川新聞記者。お米とお米文化の普及拡大を目指して取材するなか、お米農家になるために8年勤めた新聞社を退職。2年にわたってお米を作りながらケータリングおむすび屋を運営した。2014年秋からは田んぼを離れてフリーランスライターに。お米の魅力や可能性を追究し続ける、人呼んで「米ヘンタイ」。
【ブログ】柏木智帆のお米ときどきなんちゃら
【クックパッド】柏木智帆のキッチン