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インタビュー

減塩=健康は大間違い!?ソルトコーディネーターに聞く、免疫力を高める「塩」の使い方

ある程度の年齢になると、食生活の見直しをする人が増えてきます。最初に取り組むことのひとつに「減塩」があります。塩分の摂取はなるべく減らしたほうが良い…疑うことなく減塩生活をスタートさせている方たちに、「その減塩、ちょっと待った!」となるお話を、ソルトコーディネーターの青山志穂さんに聞きました。

今必要なのは、『減塩』ではなく『適塩(てきえん)』

――減塩についてのお話を聞く前に、青山さんがソルトコーディネーターとして活動することになった経緯を教えてください。

食品メーカーで開発担当として働いていたのですが、働き過ぎで体を壊したことを機に仕事を辞めて沖縄に移住しました。沖縄で仕事を探していて出会ったのが、お塩の専門店でした。もともとオタク気質なので、さまざまな塩を知り、味や形の違い、製造方法などを調べていくうち、塩の世界にすっかりハマってしまったんです。塩は本当に奥が深く、また理解されていないこと、誤解されていることが多いことも知りました。もっと塩を楽しめる世界を作りたい! という使命感を持ち、『日本ソルトコーディネーター協会』を立ち上げ、ソルトコーディネーターとしての活動をスタートしたのが始まりです。

――塩についての正しい知識を広めたいという思いもあるのですね。最新著書『免疫力を高める塩レシピ』の帯にも“「減塩=健康」は大間違い”という一文があります。この逸聞を見て驚く人は多いと思います。それは具体的にどういうことなのでしょうか。

数ある基礎調味料の中で、塩だけが生命維持に欠かせないものです。江戸時代には「塩抜きの刑」という刑罰があったくらい、人間が健やかに生きるためには塩が必要不可欠なんです。そして、現代人に増えている"ミネラル不足"の原因となっているものの一つに、過度な減塩が挙げられます。体内で作ることができないミネラルは、良質な塩から取り入れる必要があります。

――確かに、減塩することでミネラルが不足すると健康を維持することは難しいですよね。

塩はミネラルの塊です。よく、「塩を摂ると免疫力が上がる」と言われますが、それは、ミネラルが酵素をしっかり働かせてくれることで細胞が元気になるからなんです。結果として、代謝がよくなり、血流もサラサラになることで、臓器が正しく動いてくれます。また、塩には熱を発生させる働きがあるので、質の良い塩が摂れている人は体温が上がりやすくなります。平熱は36.5度くらいが理想ですが、今は男性でも平熱が35度台という人が増えているとか。体温が1度下がると、免疫力が60%落ちると言われていることを考えると、健康のために『減塩』するのではなく、健康のために質の良い塩を適度に摂る『適塩』をおすすめします。

パラパラ塩遣いで適塩を知る

――適塩とはどのくらいの量なのでしょうか。

適塩は人によって違いますが、ミネラルが足りているかを簡単にチェックする方法があります。500mlの水のペットボトルに塩4gを入れてよく振り、それをキャップ1杯程度飲んでみてください。甘かったり、おいしいと感じる場合は体内の塩分が不足しています。逆に、しょっぱいと感じる場合は塩分が足りています。不足していることがわかったら、ミネラルを多く含む食事を心がけてみてください。

――そんな風にチェックする方法があるんですね。もし塩分が足りていない場合は、どのような塩の摂り方がいいのでしょうか。

「パラパラ塩遣い」がおすすめです。薄味か無塩で調理し、食べるときに自分に必要な量の塩をパラパラふるというもの。この方法だと、同じ料理でも一人ひとり違う塩分量を調整できます。塩が足りている人は少しのパラパラでOK。足りていないという人は多めにパラパラするんです。例えば、3世代で住んでいたら、お年寄り向けの減塩食と育ちざかりの10代に合わせた料理をそれぞれ作るのは大変ですよね。このパラパラ塩にすると、1つの鍋で作ったものをみんなで食べられるんです。

あと、使うお塩を変えてみるのもおもしろいですよ。1つのトマトを3種類ほどの塩で食べ比べてみてください。うま味、甘味、酸味を引き出してくれる塩があると気づきます。塩を変えることによって、1つの食材を何度もおいしく食べることができるんです。これは会話のきっかけにもなるので、食卓が賑やかになります。

塩で食材が生かされる料理や食べ方

●塩納豆

材料(2人前)

納豆…2パック(100g)
長ネギ…10cm
塩…1g
白煎りごま…小さじ1

作り方

1.長ネギを小口切りにし、納豆、塩、白煎りごまと混ぜ合わせる。

●ハンバーグ

画像提供:『免疫力を高める塩レシピ』

材料(2人前)

合い挽き肉…300g
塩…4g
玉ねぎ…1/2個
オリーブオイル(炒め用2回分)…大さじ2
パン粉…20g

作り方

1.みじん切りした玉ねぎをオリーブオイルで炒め、冷ましておく(甘味を引き出したければキツネ色になるまで炒める)。
2.冷やした合い挽き肉に塩を入れ、粘りが出るまでこねる。炒めた玉ねぎとパン粉を混ぜ合わせ、形を整える。肉の食感を残したい場合は、あまりこねず、塩は形を整える直前に入れる。
3.フライパンにオリーブオイルを入れて中火で熱し、両面に焼き目がつくまで約3分ずつ焼く。弱火にし、さらに両面を焼く。15分ずつ焼いたらできあがり。

おうちで簡単! 「塩シャンプー」と「塩浴」

――食事で塩を摂取する以外に、おうちでできるおすすめの健康法などはありますか?

「塩シャンプー」がおすすめです。年を重ねると、頭皮が気になるという方がいますが、これは代謝が落ちたり、毛穴に詰まった老廃物が原因です。そういった時は、お湯で洗い流した髪にひとつかみの塩をのせ、頭頂部、側頭部、耳の後ろを指のはらで2~3分揉みこみます。指に油がついて、水をはじくくらいになったら洗い流して完了です。

塩シャンプ―をすると毛穴の老廃物が吸い取られ、気になるにおいが抑えられたり、毛穴が広くなって太い髪が生えてきたり、髪にコシやボリュームがでたりという嬉しい効果が期待できます。1〜2週間ほど続けてみてください。

――塩シャンプ―、簡単だしすぐに挑戦したくなります。それ以外になにかありますか?

浴槽に塩を入れる「塩浴」がおすすめです。38度ほどのお湯に塩70gを入れてみてください。血行が良くなり、疲労回復が期待できます。塩浴をした日は睡眠の質が向上したり、気持ちが落ちているときにはすっきりしますよ。

(TEXT:上原かほり)

画像提供:ピクスタ

 青山志穂さんの新刊著書(監修:白澤卓二)

免疫力を高める塩レシピ』(あさ出版

「本の見どころは、個人的には全部なのですが(笑)、まずは「適塩」(第2章)を理解していただけるといいかなと思います。そうすると、第3章でご紹介しているレシピが実践しやすくなります。毎日必ず食べるものって案外多くないのですが、塩は毎日欠かすことなく摂っています。当たり前すぎて注目する人も少ないかもしれませんが、毎日食べるものの“質”を見直すというのは重要じゃないでしょうか。日々の積み重ねで体が変わっていくことを、塩を通じて知っていただけると嬉しいです」

塩の世界がこんなに奥深いとは! と驚きながらも、ページをめくる手が止まらない一冊です。

青山志穂

一般社団法人日本ソルトコーディネーター協会代表理事
東京都出身。慶應義塾大学卒業後に総合食品メーカーに勤務。商品開発部門に従事していたが、激務で体調を崩したため退職。 療養のために移住した沖縄で塩の専門店「塩屋」を営む(株)パラダイスプランに出会い、転職。日々の業務の傍ら、産地を訪問したり塩の研究を進めていく中で、世間に広がる塩に対する誤解や不理解を改善したいという気持ちが強くなる。 2012年、想いが高じて、塩の正しい知識の啓蒙を目的とした(社)日本ソルトコーディネーター協会を立ち上げ、独立。国内外での講座やセミナーのほか、塩に関する商品開発や販売店の商品セレクト等のアドバイザーとしても活躍。地域と連携し、塩を基軸とした地域活性化も手がける。訪れた製塩所は国内外合わせて延べ400 カ所以上。自宅には1800 種類以上の塩コレクションが並ぶ。

(監修)白澤卓二
医学博士 白澤抗加齢医学研究所所長 お茶の水健康長寿クリニック院長
82年千葉大学医学部卒業後、東京都老人総合研究所老化ゲノムバイオマーカー研究チームリーダーなどを経て、2007 年より15 年まで順天堂大学大学院医学研究科・加齢制御医学講座教授。2020 年4月より千葉大学予防医学センター客員教授も務める。寿命制御遺伝子やアルツハイマー病などの研究が専門。テレビの健康番組や雑誌、書籍などでのわかりやすい健康解説が人気。

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