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コラム

飲み方次第で"睡眠"に悪影響も… コーヒー「飲む時間」の正解は

ぐっすり眠れない、寝つきが悪い…意外と多くの人が抱える、睡眠に関するお悩み。スウェーデン発、睡眠のスペシャリスト2人による"最強の睡眠本"として大ヒット中の書籍『熟睡者』(サンマーク出版)から、食と睡眠に関するヒントを少しだけ紹介します。

「食べたもの」で眠りが変わる

「玉ねぎ」は腸でガスを発生、睡眠の邪魔に

深夜勤務やそのほかの理由によって、夜遅くに食事をとらなければならない人は、せめて食事のバランスに注意しよう。肉類や脂っこい食べ物は胃の中に長くとどまるため、体は遅くまで働きつづけ、長く起きることを強いられる。玉ねぎや食物繊維を多く摂取する人も、睡眠が妨げられる可能性がある。これらの食材は腸内にガスを発生させ、腸の夜間の休息が奪われることになる。

バターやチーズの「飽和脂肪酸」は入眠を妨げる

バター、赤身肉、チーズなどに含まれる「飽和脂肪酸」の過剰摂取は入眠を妨げ、睡眠が断片化する調査結果もある。それに対し、多価不飽和脂肪酸と一価不飽和脂肪酸(合わせて「不飽和脂肪酸」という)は比較的消化されやすい。地中海地域の人が、夜遅い時間に食事するにもかかわらずよく眠れる理由は、不飽和脂肪酸を多く摂取するためかもしれない。

「牛乳」でスムーズに眠れる

入眠に役立つ食べ物も存在する。子どもの頃、就寝前に、もしくはなかなか寝つけないとき、親から「ホットミルク」を飲むよう言われた経験はないだろうか。これはけっして根拠がないわけではない。牛乳に含まれる「トリプトファン」といアミノ酸が、睡眠ホルモンであるメラトニンの生成をうながすため、入眠しやすくなるのだ。

もし当日の夕方に搾られた牛乳を飲めば、牛乳そのものにメラトニンが含まれている可能性もある。牛も夕方にメラトニンを分泌し、これを、ミルクを介して子牛に与えるためだ。同じことは人の母乳にもいえる。夕方の母乳にはより多くのメラトニンが含まれていて、乳児がよく眠れるように作用すると考えられる。

以上の理由から、コップ1杯の牛乳は、実際に睡眠に役立つ。ただし、乳糖不耐性の人、または牛乳に含まれる特定のタンパク質にアレルギーをもつ人も多い。その場合、牛乳は膨満感や下痢、消化管内にガスが溜まる鼓腸などを引き起こしかねず、睡眠にも悪影響だ。

「サワーチェリー」は入眠効果のある果物

メラトニンを多く含み、睡眠導入効果をもつ果物もある。「サワーチェリー」(酸味の強いサクランボ)だ。研究によれば、果汁のほうが、新鮮なチェリーよりもメラトニンの濃度が高いという。もし入眠に問題があるが牛乳が好きでない、もしくはアレルギーがあるという人は、就寝前にサワーチェリーのジュースを試してみてはどうだろうか。

「カフェイン」は体内時計を遅らせる

コーヒーは強い抗酸化作用をもつだけでなく、コーヒーに含まれる「カフェイン」のおかげで眠気や疲労に対しても効果を発揮する。以前は、カフェインが脳の中の睡眠導入物質(アデノシンなど)の作用を阻害するからだと説明されていた。しかし最近の研究により、カフェインが私たちの体内時計にも影響を与えることが判明している。就寝時間の数時間前にカフェインを摂取すると、眠気をつかさどる体内時計に顕著な遅れが生じるのだ。

同研究では被験者に、就寝予定時刻の3時間前に、強いエスプレッソのカフェイン含有量に相当するカフェイン錠剤を服用してもらった。(夕方、外が暗くなってくると分泌量が増加し、体に就寝時刻がきたことを知らせる)

メラトニンの値を測定するために、研究者たちは30分おきに被験者の唾液サンプルを採取。その結果、カフェイン錠剤の服用によって、被験者のメラトニン値がピークを迎える時間が通常より約40分遅くなることが確認された。その後の研究では、被験者は就寝前に3時間、日中の光に相当する量の)明るい光を浴びた。すると、光の影響でメラトニン分泌のピークに約55分の遅れが見られた。

なお、光とカフェインを組み合わせた実験では、光だけを照射した場合と比べて、メラトニン分泌に特段の遅延は生じなかった。研究者たちはこれについて、光を浴びることですでにメラトニン分泌のタイミングに最大限のずれが生じたためと推測している。

「朝コーヒー」で肝臓のリズムが整う

睡眠と覚醒のリズムは、夕方に強い光を浴びることで遅れ、朝に強い光を受けることで安定するのみならず、お茶やコーヒーの摂取によっても影響を受ける。

朝、カフェイン入りの飲み物を摂取すると、目が覚め、元気になるだけでなく、体内時計のスイッチが入る効果があると考えられている。たとえば、朝のコーヒー1杯に含まれるカフェインは全身の代謝に非常に重要な役割を果たす肝臓の1日のリズムを整えるのに役立つようなのだ。

この点から、朝一番に1杯ないし2杯のコーヒーを飲むことは、体によいといえる。だが、午後の遅い時間にコーヒーなどカフェインが含まれる飲料を味わうと、間もなく日が暮れ、夜も近いということを体が理解できず、心身ともに長くさえた状態になってしまう。

以上の理由によって、コーヒーは敵にも味方にもなりうる。朝は最高の相棒となるが、夜は睡眠泥棒として時計をくるわせる悪役になるのだ。ただし、飛行機に乗り西へ向かう場合(時間が戻る場合)は、そのかぎりではない。このときばかりは遅い時間の1杯のコーヒーが、到着地での時差ぼけを和らげるうえで役立つかもしれない。

本文は「熟睡者」(サンマーク出版)より一部抜粋・編集しています。

画像提供:Adobe Stock

書籍紹介

熟睡者(サンマーク出版) 世界の睡眠研究を知り尽くす最強の2人がついにタッグを組んだ—— スウェーデン発 最高峰・最高密度の「睡眠本」 日本上陸!

◼️睡眠研究者が「今、知っていること」全部をまとめた 今・世界で最も詳しくて役に立つ本!
◼️「眠っている間に起きていること」がわかる! ぐっすり眠るティップスの数々!

読めば「眠り」がたちまち変わり、脳から足先まで、自分史上最大に回復できる!

「Sleep Science Lab」を率いるスウェーデン・ウプサラ大学の神経学者と健康問題を20年追ったヘルスジャーナリストが睡眠の質を高める熟眠術を伝授!
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ストレス緩和、体重減◎ がん、糖尿病予防にも◎

◎眠ると脳に「記憶スペース」ができる
◎体内時計は「季節の変わり目」に調節がいる
◎体の目覚めに必要な「太陽の光」
◎睡眠に合った「体温」にする方法
◎食事は「7〜19時」の間にすませる
◎「玉ねぎ」は腸でガスを発生させ、眠りを妨げる
◎寝室の「ドア」をオープンにする
◎「目を閉じる」だけですごい効果がある
◎寝不足で「食事のサイズ」がビッグになる
◎寝ない子が眠たくなる「ホワイトノイズ」
◎「クマ」は目の下に溜まった体液
◎「眠りが続かない人」へのアドバイス

著者紹介

クリスティアン・ベネディクト(Christian Benedict) 1976年、ドイツ・ハンブルク生まれ。スウェーデン・ウプサラ大学准教授、神経科学者、睡眠研究者。キール大学の栄養科学修士課程を修了。リューベック医科大学で神経内分泌学を研究、博士号を取得。2013年よりウプサラ大学の教壇に立つとともに、同大学の睡眠研究を牽引。

ミンナ・トゥーンベリエル(Minna Tunberger) ジャーナリスト、作家。約20年にわたり、スウェーデン通信(TT)や日刊紙「スヴェンスカ・ダーグブラーデット」等の主要メディアに健康をテーマにした記事を執筆。

鈴木ファストアーベント理恵(すずき・ふぁすとあーべんと・りえ) 翻訳者。学習院大学法学部政治学科卒業、ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス(LSE)国際関係学修士課程修了。外資系企業、政策調査組織等での勤務を経て、ビジネス・政治経済分野を中心としたリサーチと翻訳に従事。

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