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スシライス、バナナと合わせる…日本と全然違う!?世界の「お米」事情について調べてみました

クックパッドニュース編集部

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日本人の食生活に欠かせない「お米」。海外の方はどのように食べているのでしょう?今回はアメリカ、ブラジル、イタリアのお米事情を現地の方にインタビューしました。

リゾットが人気のイタリアのお米事情は?

イタリアの米料理といえば、日本でもリゾットが人気ですね。その他にもお米を食べる習慣はあるのでしょうか?

イタリア北部のロンバルディア州に本社を置くEURICOM社に勤務する西條功太郎さんに、イタリアの食文化とお米についてうかがいました。

EURICOM社プロフィール

イタリア随一の米どころである北部ロンバルディア州・ヴァッレロメッリーナに本社を構えるEURICOM社は、地元のイタリア米はじめアジア産米や米を原材料とする各種製品を取扱う欧州主要国に拠点を構える製造・販売会社。

イタリアの主食はパスタだけ?

−日本では、イタリアの主食で真っ先に思い浮かぶのはパスタという方が多いと思います。

西條さん:「イタリアの主食はパスタだけでなく、お米も主食の1つです。一般的にはイタリア南部はパスタを食べる機会が多く、北部はリゾット等のお米料理を食べることが多く、レストランのメニューも北部の方がお米料理のバリエーションが豊富です。やはりお米の主要産地が北部にあるせいかと思います」

−北部と南部で、メインとなる主食が異なるんですね。レストランや一般の家庭では、それぞれどんな時間帯やシチュエーションでお米を食べているのでしょうか。

西條さん:「イタリアでは、朝食はシンプルにブリオッシュやクロワッサンとカプチーノというのが一般的なので、お米やパスタは昼食や夕食に食べることが多いです。レストランでは、アンティパスト(前菜)の後のプリモピアット(第一の皿)として、お米料理あるいはパスタを食べるのが普通で、パスタかリゾットどちらかを選びます。昼食ならプリモピアットだけで済ますことも多いですが、夕食はさらにセコンドピアット(メイン料理)を注文して、肉か魚を食べます」

−朝からお米を食べる習慣はあまりないのですね。一般の家庭ではお米をどのように食べているのでしょうか?

西條さん:「日本ですとリゾットはレストランで食べるもので、家で作ることはあまりないと想像しますが、イタリアではリゾットもパスタと同じくらい家で普通に作ることが多いです。週末に家族親戚が集まって、大きな鍋で大量にリゾットを作って、皆で取り分けて食べるのもよく見られる光景なんです。リゾットもパスタ同様、各家庭で独自のレシピがあって、代々受け継がれたマンマ(おふくろ)の味を皆でワインと共に楽しみます」

−確かに、日本の家庭ではリゾットを作ることはあまりないかもしれませんね。イタリアの家庭で、パスタと同じくらいリゾットが作られるというのは驚きました。大きな鍋で作ったリゾットを家族や親戚と食べるのはとても楽しそうです!

日本米とイタリア米の特徴の違いとは

−次に、リゾットなどの料理に使うお米の種類について教えてください。

西條さん:「リゾット用の品種は、日本のお米と同じジャポニカ種(短粒種)やその亜種でジャバニカ種に分類されるお米です。代表的なイタリアの品種は、リゾット用で最もポピュラーなカルナローリ種はじめ、アルボリオ種、ローマ種、ヴィアローネナーノ種などがあり、それぞれ少しずつ大きさや歯ごたえが変わります。リゾットを作る時、お米に出汁を吸わせることが大切ですが、水分を含んでも形が崩れにくいように日本米よりも粒がやや大きめです」

−いくつもの品種のお米が使われているんですね。

イタリア米のリゾット(画像提供:Adobe Stock)

西條さん:「日本米と大きく異なるのはでんぷん質の部分で、日本米よりも粘り気が少なく、調理後も歯ごたえを残す(アルデンテに仕上げる)ことができます」

−パスタ同様、リゾットもアルデンテに仕上げるのですね!日本米と同じ短粒種に分類されているお米ですが、日本米と違う点もいろいろとあることがわかりました。日本のご飯とは、調理方法はどのように違うのでしょうか?

西條さん:「日本のお米の調理法との主な違いが3つあります。1つめは洗わずに直接炒めること。2つめは、炒めた後に『ブロード』という出汁を吸わせて調理・仕上げをしていくこと。3つめは歯ごたえよくアルデンテに仕上げるということです」

−日本の「炊く」調理方法とはだいぶ違うのですね。

西條さん:「イタリアのお米は日本のように『炊く』ことを想定していないので、今お話ししたでんぷん質の違いがイタリアの調理法にフィットします。日本では炊いた後のお米の粘り気が重要になってきますが、イタリアは出汁を含ませていくことが大切なので、お米自体は粘り気が少ない方が好ましいんです」

−お米に粘り気がないほうが、出汁の含みがよいということですね。イタリア米の特徴を活かす調理方法だということが、お話からよくわかりました。

地方ごとの名産を使ったリゾットがある

−イタリアのリゾットには、どのような種類がありますか?

西條さん:「シンプルにお米の歯ごたえを味わえるのは、サフランで香りを付けてチーズで和えた黄色いミラノ風リゾットや、パルメジャーノチーズで和えたリゾットです。それらに季節の食材を混ぜることもあります。各地方で名物リゾットも多く、例えばヴェネツィアではイカ墨のリゾット、南イタリアでは海老や貝の出汁をふんだんに使った魚介のリゾットがおすすめです。また赤ワインの産地では、赤ワインを加えたリゾットも地元のレストランで食べられます」

−チーズやワインなど、日本でイメージするイタリア食材を使ったリゾットがポピュラーなのですね。赤ワイン入りのリゾット、どのような味わいなのか興味があります。他にはどのようなリゾットをご存知ですか?

西條さん:「秋限定のメニューで、フレッシュポルチーニ茸のリゾットや白トリュフのリゾットは格別です。特に米の産地に近いピエモンテ州の赤ワイン(バローロやバルバレスコ等)と合わせるとすばらしいハーモニーとなります」

−秋限定のキノコのリゾット、おいしそうですね!リゾットについての面白いエピソードや豆知識があれば、教えていただけないでしょうか。

西條さん:「白トリュフの季節(9-12月)には、白トリュフを1グラムいくらの量り売りでリゾットに振りかけてくれるレストランが多くありますが、量り売りと知らずに、ストップをかけずにどんどんかけてもらうと会計の時にとんでもない値段になるということが起きます。最初に『何グラムかけて』と言って、足りなければ後から増やしてもらうのがおすすめです」

−白トリュフの量り売り!そんなシステムがあるんですね。知らずにレストランに入ったら、確かにたくさんかけてもらってしまいそうです。これからイタリアに行くことがあれば、ぜひおすすめの方法でオーダーしたいと思います。

リゾット以外にも色々。イタリアのお米料理

−お米を使った料理は、リゾット以外にどのようなものがあるのでしょうか。

西條さん:「夏はハムや野菜などと一緒に、さっぱりと冷たくした『Insalata di Riso(インサラータディリーゾ − お米のサラダ)』もレストランのメニューに載ってきます。お米のサラダが始まると、夏の到来を感じます。夏の日差しを浴びながら、テラスでキンキンに冷やしたロゼのスプマンテと合わせると最高です」

−サラダ仕立てのお米というのは日本では馴染みがないので、どんな味わいなのか興味深いです。イタリアの夏の風物詩なのですね。

西條さん:「また、シチリアやナポリではお米をトマト味で味付けし、チーズ等を包み込んで揚げた『Arancini(アランチーニ - ライスコロッケ)』も名物です」

−ライスコロッケは、日本でもレストランで提供している場所が多い印象です。熱々のコロッケの中からとろりと出てくるチーズがたまりませんね!

ライスコロッケ(画像提供:Adobe Stock)

イタリア国内、ヨーロッパ圏内の米の需要は増加している

イタリアの食生活に欠かせない存在となっているお米。西條さんによると、近年イタリアでは米の需要が増加傾向にあるとのこと。今後の増加予想を教えていただきました。

西條さん:「金額ベースで、イタリアの米市場規模は2024年に23億ドル、2029年までに30億ドルに達すると予測されています」

−どのようなことが理由で、増加していると考えられるでしょうか。

西條さん:「健康志向の高まりやグルテンフリー嗜好が重なったことが主な理由と考えられます。また、生のお米はもちろんのこと、リゾットをはじめさまざまなReady to cook商品(※)、冷凍食品が多くのブランドで製造されています。さらに、お米を原材料とした健康志向のスナックやお菓子も、イタリアのみならずヨーロッパ全体で人気が高まっているんです」

※下ごしらえが済んでいる半調理品、ミールキットのこと

−人々の健康志向の高まりが米の需要アップにつながっているんですね。ヨーロッパ全体のお話が出ましたが、ヨーロッパ圏での近年の米の需要について、傾向があれば教えてください。

西條さん:「自国の食文化や食の歴史に誇りを持ち、欧州の中でも相対的に食にコンサバなイタリアでも、食の多様化の波は来ています。お米もイタリア産のお米のみならず、インドやパキスタンからのバスマティ米や、タイ等からのジャスミン米等の長粒種や、日本食や寿司の市場拡大に合わせた日本米に近い短粒種の伸びが米の消費をけん引しています。そして、その動きはイタリアだけでなく欧州全体で見られる傾向で、お米を主食とする主にアジア諸国からの移民の増加もその要因の一つとされます」

−食の多様化や移民の影響で、ヨーロッパ圏内のお米の品種多様化と需要アップが起きているということですね。今後も世界のお米人気の行方が楽しみです!西條さん、ありがとうございました。

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クックパッドニュース編集部

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