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コラム

暑すぎる夏のせい?50代女性の体に異変「謎の疲れ」専門家が解説

道川 佳苗

お料理と漢方・薬膳が好きな薬剤師

病院に行くほどではないけれど、なんだか感じる体の不調。薬剤師であり調理師、薬膳アドバイザーの資格も持つ道川佳苗さんと、中医学の視点で体を見つめ直し、健やかな暮らしをつくるための「食」を考えましょう。

このようなお悩みをいただきました。58歳女性からのお悩みです。

「胃下垂でもたれやすく、一人前の半分で満腹になります。夜遅く食べたり、ちょっと頑張って食べると翌日必ずもたれと腹痛と下痢になります。 食べる量が少ないためか、パンを主に食べるからか、疲れやすく、体重も減っています。 1日仕事をし、夕方から吐き気があり、19時くらいに仕事を終えても夕飯を作る気にもなれず、18歳の娘の夕飯も適当になってしまうのも悩みです。 内科では、過敏性腸症候群と言われました。 小食でも栄養が取れて、力がつくような食べ方はありますか。」

胃下垂で胃がもたれやすい人は、中医学の考えでは「気虚(ききょ)」タイプといえます。気虚とは、エネルギーや元気が不足した状態を指し、この状態になると疲れやすく、やる気が出ないといった症状が現れます。また、連日の猛暑による夏バテで、汗とともに気と津液(体液)が消耗され、疲労感が一層強くなりがちです。

今回は、こうしたお悩みに対する対策と、暑さに負けない体作りのポイントをご紹介します。

胃腸の調子が悪く疲れやすいのはなぜ?

中医学的には、以下の原因が考えられます。

(1)気が不足していることによるエネルギー不足

中医学では、健康は「気・血・水(津液)」が体内でバランスよく循環することで保たれると考えられています。「気」とは元気の源であるエネルギーを指し、「先天の気」と「後天の気」の2種類があります。先天の気は生まれ持った体質や体力を意味し、後天の気は食事や睡眠によって得られるエネルギーです。 気は胃腸で作られるため、胃腸の働きが低下すると気をうまく作り出せず、疲れやすくなります。そのため、まずは胃腸の調子を整えることが重要です。胃腸を温めることでその働きが良くなるため、胃腸を冷やさないようにすることが大切です。 具体的には、温かい飲み物やおかゆ、スープ料理などを取り入れることを心がけましょう。胃腸が元気になるまでは、消化に負担がかかりにくいおかゆやスープ、スムージーなどを食事に取り入れるのがおすすめです。 胃腸の調子が整うと、気をしっかり作り出せるようになり、元気を取り戻すことができます。これによって、日々の疲れを軽減し、より健康な生活を送ることができるでしょう。

(2)胃腸が弱っていることによる夏バテ状態

暑い夏は、つい冷たいものを食べたくなりますが、控えるようにしましょう。常温か温かい飲み物を摂るように心がけることが大切です。もし冷たい飲み物を飲んだら、一緒に白湯を飲んで胃腸が冷えすぎないようにしましょう。 また、暑い季節には、体の熱を冷ます食材を摂ることで、胃腸を冷やしすぎずに体の熱を取り除けます。さらに、中医学では、汗をかきすぎると気も一緒に流れ出ると考えられています。余分な汗を止める食材を摂ることもおすすめです。酸味のある食材は、汗の出過ぎを抑える働きがあります。

疲労感の軽減や夏バテ対策におすすめの食材は?

疲労感を緩和するには、胃腸の調子を整え、気の不足を補う食材を摂ることが大切です。また、夏は一年で最も体力を消耗する季節なので、夏バテ対策を意識した食材も摂るようにしましょう。体にこもった余分な熱を冷ます食材や、余分な汗を止める酸味のある食材がおすすめです。

おすすめ食材

▼胃腸の働きを高め、気を補うもの

米、小麦、山芋、豚肉、じゃがいも、かぼちゃ、枝豆、なつめ、モロヘイヤ、オクラ、しょうがなど

*羊肉、牛肉、鶏肉、エビ、もち米などは気を補う食材ですが、体を強く温める作用があるため、夏は余分な熱を体に溜めないように、食べすぎないようにしましょう。

▼体にこもった熱を冷ますもの

ゴーヤ、きゅうり、冬瓜、れんこん、トマト、レタス、セロリ、スイカ、バナナ、キウイフルーツ、豆腐など

▼余分な汗を止めるもの

マンゴー、梅、グレープフルーツ、レモン、杏、トマトなど                       

クックパッドのおすすめレシピはこれ!

モロヘイヤとオクラの豚しゃぶ

モロヘイヤやオクラは胃腸の働きを整え、ビタミンやミネラルが豊富なので、夏バテ対策や疲労感の軽減に役立ちます。さらに、体の余分な熱を冷ますトマトやナスなどの夏野菜を加えることで、夏バテ対策に効果的です。気力を補いスタミナをつけてくれる豚肉と合わせれば、一品で満足感のあるさっぱりとしたメイン料理になります。

鶏肉としょうがの中華粥

気を補う米と鶏肉を組み合わせた優しい味わいの中華粥です。すりおろしたしょうがを加えることで胃腸を温め、消化を助けます。ねぎも気の巡りを改善し、消化不良や食欲不振の改善に役立ちます。

バナナキウイスムージー

体にこもった熱を冷ますバナナとキウイ、豆乳を組み合わせた簡単にできるスムージーレシピです。キウイには消化を促進する効果もあります。朝ご飯や食欲がない時にもさっぱりとして飲みやすく、栄養も豊富です。スムージーは消化に負担がかかりにくいのも特徴です。

胃腸の負担のかからない食べ方を意識しよう

暑い夏は気力や体力を消耗しやすい季節です。消化に負担のかからない食べ物を摂ることで、胃腸の負担を軽減し、疲れや夏バテ対策につながります。 今回ご紹介したレシピはどれも簡単に作れるので、ぜひ試してみてください。

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執筆者情報

道川 佳苗

薬剤師。調理師。薬膳アドバイザー。夫と2歳の息子、犬(ビションフリーゼ)と暮らす。大学卒業後、薬局にて従事している時に、病気の予防、健康維持には食育が大切であると感じ、服部栄養専門学校で調理技術や栄養学を学ぶ。お料理と漢方・薬膳が好きな薬剤師。

webサイト・SNS情報

instagram:@oishi_yakuzen

資格

薬剤師、調理師、薬膳アドバイザー

実績・お仕事

cookpad news 体にやさしい「いたわりごはん」連載:2021.2〜2021.9
PharmaX株式会社 「YOJO LIFE」にて漢方・薬膳に関する記事執筆https://yojo.co.jp/media/

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