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コラム

誰かと一緒に食べたくなる、「さつま芋と南瓜」のクリームシチュー【数字のないレシピたち Vol.14】

決められた材料、分量、調理法などない。何にも縛られず、自分だけの「美食」を味わうために作る料理があってもいい。それはきっと、心満たす色鮮やかな時間をくれるはず。出張料理人・ソウダルアが綴る、人と料理と時間と空間の物語。

じっくりことこと煮込みたい気分

寒い。

あんなにとっとと終わればいいと思っていた夏なのにこんなに急に寒くなると情緒がない。
それに加え、朝の服装をミスってしまい、ジャケットも着ずに出社してしまったので強めの夜風が身に染みる。

でも、食べるにはもってこいの季節だ。ご多分に漏れず、芋栗南瓜が大好きなわたしには。

少々めんどうだけど、じっくりことこと煮込みたい気分。
大したことをしなくても、ただ、じっくりことこと煮込めば美味しくなるから、シチューというやつは大好きだ。
そもそもが好きなものしか入っていない。

迷いもなく、かごにほうりこんでいく。
栗はさすがにめんどうなので南瓜とさつま芋。
紅あづまって初めて見たけど、良さげな名前だな。
それに比べて、南瓜はまんま“南瓜”。なんだかかわいそうなので、“ゆうやけ南瓜”と心の中で命名してみた。
あとは、いろいろ入ったキノコのパック。勘で選んだ良さげなシチューの素。

身を縮めながら、ようやく家にたどり着いた。
予想はできていたけれど部屋の中も寒い。
夏の西日が嫌いすぎて、選んだ部屋だったけど、こういうときはうらめしい。
物事はどうにもこうにも一長一短だ。
こうなりゃ、キッチンで暖をとろう。

まずは火の通りづらそうな、ゆうやけ南瓜から。
ちょっと大きめな方がほくほくしそうなので、ごろっと切って、フライパンに入れる。ちょっと水を入れ、蓋をして蒸し焼きにする。

大好きなメニューだから、お母さんがつくるのを小さい頃に見ておいて良かったな。こういうことはいつもちゃんと覚えているたちなのだ。

その間に芋も程よいサイズにカット。
ここまでやったら、ちょっと放置タイムなので、化粧を落として、冬用のパジャマに着替えて、と。

よしよし。
まさにゆうやけみたいな色になってきた。
ここで牛乳をどばっと。芋も入れて、またまた放置タイム。

ライブ以来、どはまりしているシンガーソングライターの動画をしばし観る。『東京』という歌を唄っていた彼女が、今度は『東京にて』という歌を唄っていた。
以前は一人、東京で生き抜く強さと寂しさをたずさえた歌だったけれど、東京の移り変わりを愛しく思い、そこで生きる様々な人に寄り添う、みんなの東京を表現していた。

『最初で最後 きみだけの きみだけの東京にて』(※1)

と結ばれるその歌は、長く東京で生きてきた彼女だからこそ持つ境地のように思えた。わたしもそんな風に思えたらいいな、とも。

六周目の間奏で家の中がふんわりとあまくてやわらかな空気になっていることに気づく。

さて、そろそろ仕上げにかかりますか。
遠くから唄っている声が聞こえると私を応援してくれているような気持ちがする。こういう聞き方もいいな。

シチューの素を一個ずつ入れては溶かして、味見する。
このだんだんと味が変わっていく感じが好きだ。
だんだん、わたし色に染まっていく感覚。

お母さんはこれしてる時、何を考えてたのかな。
料理をしながら、無心になるといつも考えないようなことを思い出す。

そういえば『東京にて』の彼女も、別の歌で『思い出すことは想うこと』(※2)って唄っていた。
思うと伝えたくもなるから、こういう時間は大事なんだろうな。
味もいい感じになってきたので、キノコをてきとうにほぐして、ばさっと入れる。

芋と南瓜がくずれないようにやさしく混ぜる。
キノコがくったりとしてきたら、バター。あと醤油をちょっと。
これが決め手なのよとドヤ顔のお母さんを思い出す。
顔まではっきりと思い出したのはひさしぶりかもしれないな。
ひどい娘でごめんね。でもね、がんばってるよ。東京にて。

一口、味見をするとあまりに美味しくて感傷的な気持ちが吹き飛んだ。
ふふっ。
やっぱり、ひどい娘だ。わたし。

お気に入りの器にシチューをよそう。
まず、ゆうやけみたいな南瓜を一口。ほっくほくであまくて、シチューが絡んでたまらない味だ。
次に紅あづまさん。こちらもふっくらとしてスウィートポテトみたいになっている。えのきのしゃっきりも、すこしこりっとしたしめじも、しゃくしゃくした舞茸も、みんなちがってみんないい。

ふう。
おいしかった。

ごちそうさま。

満腹に満足だけれど、すこし物足りない。
こういうのって、誰かと食べたいものなのかも。

近くのあのバーに行ってみようかな。
ハイボールの注文を遮ってやった時の彼のあの顔を思い出すと、なんだかにやけちゃった。

※1 『東京にて』(作詞・作曲: ヒグチアイ)より引用
※2 『ラブソング』(作詞・作曲: ヒグチアイ)より引用

ソウダルア(出張料理人/イートディレクター)

大阪生まれ。5歳の頃からの趣味である料理と寄り道がそのまま仕事に。“美味しいに国境なし”を掲げ、日本中でそこにある食材のみを扱い、これからの伝統食を主題に海抜と緯度を合わせることで古今東西が交差する料理をつくる。現在は和紙を大きな皿に見立てたフードパフォーマンスを携え、新たな食事のあり方を提案中。


【フードパフォーマンス映像】
https://vimeo.com/275505848

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