【お米ライターのコメバナシvol.7】私たちにとってお米はあって当たり前の存在ですが、実は意外と知らないことだらけ。そこで、巷でよく耳にするお米に関する「疑問」や気になる「噂」をお米ライター柏木智帆が検証します。おいしい白飯や米料理さえあれば食卓は豊かになる!をモットーにお米のおいしさを追究していきます。
「お米ライターのコメバナシvol.3」では、納豆ごはんに合うお米を探りました。今回は納豆ごはんと同じくらい愛されているであろう「たまごかけごはん」に合うお米を探ります。
まず、お米を選ぶときに大事なことは「粒立ち」。粘りすぎず、粒張りが良く、ごはん粒同士が離れやすく、ごはんの一粒一粒を口の中でしっかりと感じられるお米が合うと思います。簡単に言うと、粒がしっかりとしていて、口の中でごはん粒がほろほろほどけていくお米です。「粒が際立っている」というほうが分かりやすいでしょうか。パサパサではなく、米の肌がしっとりとしてなめらかであることは大前提です。
粒立ちが良いお米を選ぶと、ごはん粒に卵液が絡みやすいことに加え、どろりとした卵液の中でもごはん粒の存在をしっかりと感じることができます。
ひとくちに「粒立ちが良いお米」と言っても、粘りが強いのか、粘りが弱いのか、硬めなのか、軟らかめなのか、食べ心地はあっさりとしているのか、重ためなのか、その味わいはさまざまです。
また、ごはんにかける卵は、濃厚なものもあれば、さっぱりとしたものもあります。すると、お米と卵だけのシンプルなたまごかけごはんでも、「濃厚な卵×あっさりとしたお米」「濃厚な卵×粘りが強いお米」「さっぱりとした卵×あっさりとしたお米」「さっぱりとした卵×粘りが強いお米」など、幾通りもの組み合わせが考えられます。どれが「おいしい」と感じるかは好みによっても、気分や食べるシーンによっても変わります。
個人的には、「濃厚な卵」を食べようと思ったら「あっさりとしたお米」を選びます。生産者によって食味が違うことを前提に、実際に食べたお米の中からあえて品種を挙げると、「雪若丸」「天のつぶ」「亀の尾」「旭一号」などが合うと感じました。
一方で、「さっぱりとした卵」を食べる場合は、「つぶぞろい」「さがびより」「新之助」「実りつくし」「にこまる」など、粒が際立ちながらも少し食べ応えのあるお米の他、味が濃いお米も合うと感じました。そして、栽培地域や栽培方法によっては粘りが強めの「コシヒカリ」でも合うお米がありました。
また、程よい粘りがありながらも後味がすっきりとした「ななつぼし」「風さやか」「里山のつぶ」「つや姫」や、あっさりしながらも少し軟らかめの「ササシグレ」「ササニシキ」などは、「濃厚な卵」にも「さっぱりとした卵」にも合うと感じました。
ただし、同じ品種であっても粒立ちの有無をはじめとした食味は栽培地域や栽培方法によって変わりますので、品種はあくまで参考程度と考えてください。
同じ卵でも魚卵の“たまごかけごはん”の場合は、相性の良いお米がずいぶんと変わります。先日、「いくらの醤油漬け」をかけたごはんを食べるためにさっぱりとした粒立ちの良いお米を選んだところ、物足りなさを感じました。いくらの粒からあふれ出る卵液の舌触り、旨み、調味料の濃度をお米が受け止めきれなかったのです。
そこで、比較的粘りが強く、おねばが厚いお米に合わせてみたところ、お米のもちもちとした粘りと表面のおねばがいくらの卵液をしっかりと受け止めてくれました。
鶏卵でも魚卵でも“たまごかけごはん”は調味料を変えたりトッピングをしたりせずとも、お米を変えるだけで楽しみ方は幾通りにも広がります。いろいろなお米でお気に入りの“たまごかけごはん”を探してみてはいかがでしょうか。
お米ライター。元神奈川新聞記者。お米とお米文化の普及拡大を目指して取材するなか、お米農家になるために8年勤めた新聞社を退職。2年にわたってお米を作りながらケータリングおむすび屋を運営した。2014年秋からは田んぼを離れてフリーランスライターに。お米の魅力や可能性を追究し続ける、人呼んで「米ヘンタイ」。
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