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コラム

昭和とは食べ方がここまで変わった!豆は「ヌードル」にして食べるのがトレンドに

阿古真理

作家・生活史研究家。食や食らし領域が専門。

【あの食トレンドを深掘り!Vol.36】90年代に流行した「ティラミス」、数年前に話題になった「おにぎらず」、直近では社会現象にもなった「タピオカ」など、日々生まれている食のトレンド。なぜブームになったのか、その理由を考えたことはありますか? 作家・生活史研究家の阿古真理さんに、その裏側を独自の視点で語っていただきました。

「豆」のヌードルが近年話題に

ここ3年ほど、SNSでやたらと回ってくるのが、ミツカンの「ZENBヌードル」の広告である。黄えんどう豆100パーセントの代替麺で、薄皮なども「ぜんぶ」使い食物繊維含有量が多いことから、食品ロスを防げる。常食することでお通じがよくなった人もいて、ダイエットにも向いているらしい。小麦粉が使われていないので、グルテンアレルギーの人も食べられる。また、黄えんどう豆は小麦や大豆と違い、遺伝子組み換え作物が開発されていないことから、遺伝子組み換え食品を避けたい人でも安心して食べられる。そもそもゼンブブランド自体が、SDGsの観点から「人と社会と地球の健康に貢献する、新しい食生活を提案する」コンセプトで開発された。

インターネットで検索すると、実食レポートが次々に出てくる。「マメ臭さを感じた」という人もいれば、「ほとんど感じない」という人、「パスタソースをかければ、気にならなくなる」、「豆の味は感じるけど好み」という人などさまざま。公式サイトによれば、ラーメン、焼きそば、フォーなど、あらゆる麺類の代用になるようだ。

公式サイトによれば、2020年9月30日に発売されたゼンブヌードルは、シリーズ累計販売数1000万食を超えた(2022年10月の販売実績から算出)。

豆ヌードルは、他にもいろいろある。レンズマメを使った赤いパスタもあれば、大豆やヒヨコ豆を使ったものもあるらしく、流行の兆しが見える食をピックアップしたクックパッドの「食トレンド予測2023」にラインナップされている。確かに、豆ヌードルは今を象徴する食べものと言える。小麦粉を使わないもしくは控えることで、糖質制限を求める人に向く。豆類はもともと食物繊維が豊富だが、そうした食品を主食にすれば、コメや小麦を主食にするよりカロリーを抑えられそうだ。

コロナ禍で大ヒットしたオートミールも、ご飯替わりに食べてダイエットに成功した人たちがいる。しかし、そうした食物繊維が多い食品が流行するのは、食物繊維が豊富な野菜や果物を、日常的にたくさん摂らない人が増えているからでもある。

昭和とは異なる「豆料理」の姿

そもそも豆は、存在感が薄くなってきていたように思う。昭和時代までは和食が中心の家庭が多く、煮豆や豆ご飯は日常食で大豆入りひじき煮なども常食されていた。豆腐や納豆を毎日食べる家庭も珍しくなかった。しかし、グルメ化が進んで海外発祥の料理を日常的に食べるようになり、和食の出番があまりない食生活を送る人が珍しくなくなった。もうすぐ節分だが、節分でしか煎り大豆など豆のおやつを食べない人は多いのではないか。私が子どもの頃でも、煎り豆や甘納豆は「おばあちゃんちのおやつ」というイメージだったので、豆のおやつが定番だったのは、おそらく昭和半ばぐらいまでだ。

しかし、以前の記事「肉以外で“タンパク質”を摂る時代!『プロテイン』や『豆』がダイエットやSDGsで話題に」でも書いたように、近年は豆料理が注目されている。といっても和食の大豆料理が復活したわけではなく、ヒヨコ豆のファラフェルやレンズ豆のスープやサラダなどが人気になっているのだ。さらに豆ヌードルの流行でも豆が食べられる、というわけだ。豆料理の姿は昔と違う。

豆の消費量について推移を見てみると、農林水産省の『食料・農業・農村白書』(2010年)で、1980年以降のデータを発見。1980年は1人当たり1年間の消費量は5.3キロだったのに、1990年は6.5キロでむしろ増えていることがわかった。その後も「国民栄養調査」(厚生労働省)のデータを見ると、多少の増減がある程度でだいたい6キロ前後である。もしかすると食べる量はここ数十年、あまり変わらないのかもしれない。

考えてみれば、これまで豆に関してはさまざまな流行があった。総務省統計局の「大豆加工食品への支出」(「家計調査通信432号」2010年)を見ると、醤油や豆腐、味噌、油揚げやがんもどきは2000年以降消費支出金額は減少を続けているが、納豆は2002年に2000年の1.15倍に急増してその後2008年まで安定している。この頃、テレビの情報番組などの影響で、納豆はブームになっていた。

つまり、昭和のような食べられ方はしなくなってきているが、豆類や大豆はくり返しスポットライトが当てられ、流行してある程度食べる量が保たれてきたのかもしれない。ただし、「豆の消費」によると、厚生労働省「国民栄養調査(令和元年)」で、豆類の年齢階層別摂取量は、40代までの若手世代で少なく、50代以上が多い傾向が明確に表れている。男女差はほとんどない。豆類の1日の摂取量は、厚生労働省によると100グラム以上が望ましいとされているが、シニアで最も多い60~69歳の女性が80グラム程度で、10代後半が男女とも約40グラムなので、もっと食べたほうがいいのは事実だ。

豆類は、SDGsの観点からも近年見直されている食品である。ヴィーガンなど動物性たんぱく質を避けたい人たちにとっては、主要タンパク源でもある。豆ヌードルはさらに普及する可能性が高いし、豆を使った加工食品はこれからもどんどん登場するだろう。レシピも充実して、食べ方のバラエティも増えるかもしれない。これからの定番食になるかどうか、しばらく見守っていたい。

画像提供:Adobe Stock

阿古真理(あこ・まり)

©植田真紗美
1968(昭和43)年、兵庫県生まれ。作家・生活史研究家。神戸女学院大学卒業。食や暮らし、女性の生き方などをテーマに執筆。著書に『昭和育ちのおいしい記憶』『昭和の洋食 平成のカフェ飯』『小林カツ代と栗原はるみ』『なぜ日本のフランスパンは世界一になったのか』『パクチーとアジア飯』、『母と娘はなぜ対立するのか』、『平成・令和食ブーム総ざらい』、『日本外食全史』、『料理に対する「ねばならない」を捨てたら、うつの自分を受け入れられた。』、『ラクしておいしい令和のごはん革命』、『家事は大変って気づきましたか?』など。

執筆者情報

阿古真理

作家・生活史研究家。1968年、兵庫県生まれ。食や暮らし、女性の生き方を中心に生活史と現在のトレンドを執筆する。主な著書に『大胆推理!ケンミン食のなぜ』・『家事は大変って気づきましたか?』(共に亜紀書房)、『ラクしておいしい令和のごはん革命』(主婦の友社)、『日本外食全史』(亜紀書房)、『料理に対する「ねばならない」を捨てたら、うつの自分を受け入れられた。』(幻冬舎)、『料理は女の義務ですか』・『小林カツ代と栗原はるみ』(共に新潮新書)など。

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