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インタビュー

“コレステロール”はなぜ上がる?健康的に「下げてくれる食材」を医師に聞きました

健康診断でコレステロール値が高いと言われて、ショックを受けた経験がある人もいるのではないでしょうか。でも実際のところ、「コレステロール」がどういったものなのか、なぜ数値が上がり、どうすれば下げることができるのかといったことを、きちんと理解している人は少ないはず。そこで今回は、三鷹駅前たなか糖尿病・内科クリニックの田中祐希先生に、コレステロールが上がる原因や下げてくれる食材などについて聞きました。

「コレステロール」が上がってしまう原因

――そもそも「コレステロール」とは、どういったものなのでしょうか?

脂質の一種で全身の細胞膜の構成成分です。ホルモンやビタミンD、胆汁酸の原料になり、脂質やビタミンの吸収を助けます。これらは生きていくために必要な物質で、細胞の働きの調節や栄養素の吸収にも関わります。コレステロールは、肝臓や腸、皮膚で作られる「内因性コレステロール」と、食事から吸収される「外因性コレステロール」に分けられます。内因性の比率が70~80%と高く、実は食事からの摂取よりも体内で作られている方が多いと考えられます。

――「悪玉コレステロール」とはどういったもの?

コレステロールはリポ蛋白という粒子に含まれ、血中で体内の隅々まで運ばれます。主に全身の組織や細胞は、血液中で最も数が多い粒子・LDL(低密度リポ蛋白)からコレステロールを取り込みます。LDLは動脈硬化の原因になるため、“悪玉コレステロール”と言われます。

――「善玉コレステロール」もあるのですよね?

HDL(高密度リポ蛋白)は体の細胞から使われなくなったコレステロールを肝臓に運ぶ粒子。HDLは動脈硬化を起こした血管からコレステロールを運び出すため、“善玉コレステロール”と言われます。つまりLDLコレステロールは動脈硬化の促進因子、HDLコレステロールは動脈硬化の抑制因子と考えられます。

――コレステロールが上がる理由は?

健常人のLDLコレステロール値は、肝臓で作られる量、食べ物からの吸収量、体内で利用される量、体外への排泄量のバランスが適切に取られ、一定に保たれています。このバランスは女性ホルモン、甲状腺ホルモンで保たれていますが、加齢による女性ホルモンの減少、甲状腺疾患による甲状腺ホルモンの減少などが起こるとLDLコレステロールが高値となります。また、家系的に血中LDLコレステロールが高くなってしまう、家族性高コレステロール血症という疾患もあります。

“動脈硬化”を進行させる危険性も…

――コレステロール値が高いと、どういったことが懸念されますか?

LDLコレステロール値が高くても、通常は自覚症状がありませんが、知らぬ間に動脈硬化が進行していくことも…。血管がどんどん狭くなっていくことで、血管が詰まる疾患である脳梗塞や心筋梗塞のリスクが高まります。

――理想的な数値はどのくらいですか?

日本動脈硬化学会では、LDLコレステロール値が140mg/dL以上である場合、HDLコレステロール値が40mg/dL未満である場合に、脂質異常症を疑います。LDLコレステロールの目標値は対象者の動脈硬化性疾患(脳卒中、心筋梗塞など)発症リスクに応じて、最も厳しいもので70未満(糖尿病、心筋梗塞、脳梗塞歴など複数ある)から、最も緩やかなもので160未満(喫煙もなく、他の生活習慣病や血縁者の動脈硬化疾患がいない)と幅があります。

――コレステロール値が高い場合、下げるためにやるべきことは?

まずは医療機関を受診して、運動や食事療法で自身の目標範囲が維持できるのかを確かめましょう。LDLコレステロールは食事からの摂取より体内で作られる量の方が多く、ホルモンや体質の影響が大きいと考えられるため、生活改善で目標数値に達しない場合は内服治療を検討します。

魚や大豆を積極的に摂ることが大事

――コレステロール値を健康的に保つために、食生活で気をつけるべき点を教えてください。

積極的に控えたいのはトランス脂肪酸の多い食品。マーガリンやショートニング、洋菓子、スナック菓子、揚げもの、即席麺(フライ系)などは注意が必要です。また、飽和脂肪酸も控えたいです。脂身の多い肉やひき肉、鶏肉の皮、バター、ラード、やし油、生クリーム、洋菓子に多く含まれます。コレステロールの多い食品自体も食べすぎないように要注意。動物性レバー、臓物類、魚卵は毎日の摂取にならないようにしましょう。

――逆に、コレステロール値を下げてくれる食材は?

食物繊維の多い食品です。玄米や全粒粉などの未精製穀類、麦飯、雑穀、納豆などの大豆製品、野菜やきのこ、海藻、こんにゃくなどに多く含まれます。他にも、n-3系多価不飽和脂肪酸の多い青魚(フライなどの揚げ物はNG)やアマニ油・エゴマ油(目安は1日小さじ1杯)、n-6系多価不飽和脂肪酸の多いオリーブ油(1日大さじ1~2杯)やナッツ類(1日20粒程度)、アボカド(1日1/2個)の摂取を心がけると良いでしょう。

――特に先生がオススメする食材はありますか?

特にn-3系多価不飽和脂肪酸は、LDLコレステロール値を下げてHDLコレステロール値を上げる作用があるため、採血データで指摘された場合にまず試したい食材。魚の摂取頻度が週4日以下で肉の摂取が多い場合は、魚の頻度を増やし、積極的に野菜や大豆製品を摂ることで変化が見られるでしょう。

――やはり年代が高い人の方が注意は必要ですか?

コレステロールは食事よりもホルモンや遺伝的な体質の影響が強いため、若年でも健診で高値を指摘される事があります。女性は更年期における女性ホルモンの減少によりLDLコレステロール値が高くなる傾向があるため、健診を定期的に受け、高値が出た際には医療機関に相談をしてください。

(TEXT:山田周平、メイン画像:Adobe Stock

田中祐希先生

三鷹駅前たなか糖尿病・内科クリニックの医師で、内科認定医、糖尿病専門医。日本内科学会、日本糖尿病学会、日本肥満学会に所属。2010年宮崎大学医学部卒業。上尾中央総合病院、東京女子医科大学病院糖尿病センターでの研修を経て、2020年に医学博士を修得。地域に愛されるクリニックを目指し、糖尿病専門医による糖尿病治療に力を入れる。患者さんひとりひとりに合ったオーダーメイドの栄養指導を行っている。

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