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コラム

ご飯の保温、◯時間以上は危険!お米屋さんに聞く炊飯器「保温機能」の注意点

お米のおいしさをキープする保存法や正しいお米の研ぎ方など、意外と知らない「お米のきほん」を、山形県の小さなお米屋さん(有)阿部ベイコクさんに教えていただきます。ちょっとした工夫や知恵で、いつものご飯をもっとおいしく。知って楽しいお米の情報を月に1回お届けします。

ご飯の保温は何時間まで大丈夫なのでしょうか?

結論から言うと、長くても5~6時間、おいしさを保ちたいなら1時間以内をオススメします。6時間を超える保温は、ご飯の水分が抜けてしまうため、食感はかたくなり、風味は損なわれ、黄ばみや臭いも出やすくなります。さらにメーカーが推奨する保温時間をオーバーすれば、ご飯が腐ってしまうことまであります。

炊いたご飯は一度の食事で食べきるか、余ったときはすぐに冷凍保存するのがベストです。 この記事ではご飯の保温について、山形県の小さなお米屋「阿部ベイコク」が解説します。

ご飯は何時間まで保温できるの?

一般的な炊飯器の保温時間は、

・マイコン式「12時間まで」
・IH式「24時間まで」

と、説明書に記載されていることが多いようです。

ただ実際のところ、炊き立ての美味しさをキープしつつ保温するには「5~6時間くらい」が限界といえます。それより長い時間保温すると、ご飯の「乾燥・黄ばみ・におい」の原因となるため、おすすめできません。

ご飯が乾燥する

お米は、水分と熱を加えることで、やわらかく粘りがあるご飯になります。この変化を「デンプンの糊化(こか)」といい、お米の中心部にまで水が行きわたり、糊化がしっかり進んだご飯が良食味とされています。

裏を返せば、炊き上がったご飯から水分が抜けると、味は落ち、食感は悪くなるということです。

保温しているあいだは、ご飯の水分が徐々に抜けていきます。つまり、保温時間が長ければ長いほど、美味しくなくなってしまいます。パサつく、かたくなった、ツヤがないという場合は、保温時間を短くすると改善します。

ご飯が黄ばむ

ご飯が黄色くなるのは、お米に含まれる糖とアミノ酸が反応して、褐色物質が生じる「メイラード反応」という現象です。お肉を焼いたり、パンを焼いたりするとキツネ色に色づくのも、ご飯のおこげも同じメイラード反応です。簡単に言えば「食品の色が茶色に変わる」ということです。

メイラード反応は温度が高いほど起こるので、何時間も保温を続けることで反応が進みます。黄色っぽく変色したご飯は、見た目的にもおいしく感じることができなくなり、副反応でニオイ成分がでてしまうため、ご飯の香りも損なわれてしまいます。

ご飯がにおう

腐敗によって嫌なニオイが発生する場合もあります。お米にはもともと「バチルス菌(枯草菌)」という菌が存在しています。空気中や土壌など、自然界のどこにでも存在する細菌の一種です。納豆菌もその仲間です。

このバチルス菌は、保温時間が長くなるにつれ増殖し、ご飯を変敗させます。(変敗=炭水化物や脂肪が分解されて風味が悪くなり食用に適さなくなること)保温中の炊飯器は、ご飯に含まれる豊富な水分と栄養素があり、バチルス菌が活動しやすい環境なのです。

さらに、バチルス菌は高温にも耐えることができるので、100℃に達する炊飯工程でも死滅することはありません。一般的な炊飯器の保温は、細菌が繁殖しにくい約60~75℃に設定されていますが、あくまで「繁殖しにくい」ということで繁殖しないわけではありません。

そのため、メーカーが推奨する時間を超えてもなお保温し続けると、ご飯が腐ってしまうこともあります。見た目には問題がなくとも、異常なニオイを感じたときは食べるのを避けた方がよいでしょう。

保温はなぜ「約60~75℃」なの?

黄ばみの原因「メイラード反応」は、80℃以上で反応が進み、70℃以下だと穏やかになります。ニオイの原因「バチルス菌」は、10℃~65℃くらいが活動範囲です。温度が高いと黄ばみやすく、温度が低いとニオイが発生しやすい、ということで炊飯器の保温は約60~75℃に設定されているのです。

ただし適温に保たれていても、黄ばみ・ニオイ・乾燥は進行するため、やはり時間が経てば経つほど保温ご飯は美味しくなくなります。

【基本】保温の注意点3つ

炊飯器の保温機能を使うときは次の3つに注意しましょう。

①白ごはん以外の保温はNG

一般的な炊飯器で保温できるのは「白ごはん」だけです。次のような白ごはん以外の料理は、変質・におい・べたつきの原因になるため保温してはいけません。
炊き込みごはん
おこわ
赤飯
おかゆ

もちろん、おかず・みそ汁・スープなどの保温もNGです。また、しゃもじを入れたまま保温すると、しゃもじについた雑菌が繁殖してしまう場合があるので、これもNG。

②温度が下がる行動はNG

炊飯器内の温度が低下すると雑菌が繁殖しやすくなります。フタの開けっ放しや、開け閉めしすぎに注意しましょう。

また、冷やご飯の継ぎ足しもやってはいけない行動です。一度炊飯器の外に出したご飯を戻すと、乾燥や腐敗が進みやすくなります。

保温スイッチを切った炊飯器内でご飯を放置するのも良くありません。冷えたご飯を再保温するのもやめましょう。

③常に清潔に保つ

炊飯器に汚れが残っていると、保温中に雑菌が繁殖しやすくなります。内なべだけでなく、内ぶたも毎回洗浄して、蒸気口なども小まめに清掃しましょう。

目に見えないカビや雑菌が繁殖すると、炊きたてのごはんから嫌な臭いがしたり、味が落ちたりすることもあります。説明書にあるお手入れ方法で常に清潔に保ちましょう。

【応用】美味しく保温するには

ご飯の美味しさを保つには、とにかく水分を逃がさないことが大切です。なべ肌に触れているご飯や、上面にあるご飯は乾燥しやすいため、ときどきほぐして、ムラを無くしましょう。

ポイントは、釜内部が冷えないように手早く作業することです。

(1)ご飯がつぶれないように1/4ずつほぐす
(2)なべ肌にそって大きく起こし、かたまりを切るように
(3)ご飯がなるべく内がまに触れないように、中央に寄せる

保温に優れた炊飯器を検討するのもあり 最近の炊飯器には、次のような機能で30時間から40時間の保温に対応するハイテク機種もあります。

▶︎真空保温:内なべの中の空気を抜き、ご飯の酸化や水分の蒸発を抑える
▶︎スチーム保温:数時間おきにスチームを送り込んで乾燥を防ぐ
▶︎2重内ぶた:蒸気を逃がさず、ごはんの乾燥を抑える
▶︎断熱フレーム:ふたと本体とのすき間をなくし、水分と熱を逃がしにくく、保温中の温度ムラを抑える
▶︎おひつ保温:過剰な蒸気を取り除いて、余分な水分をコントロール。温度を細かく調整
▶︎低め・高め:ご飯の劣化を抑える「低め保温」と、においの発生を抑える「高め保温」
▶︎保温見張り番:人工知能AⅠとセンサーが釜内のごはん量を推測し適切な保温温度にコントロール


ご飯の乾燥を防ぐ工夫や、変色・ニオイを抑えるための温度コントロールが組み込まれているので、普通の炊飯器の保温よりは美味しい状態が長持ちします。ただ、上位機種に搭載される機能のため、本体価格が高めなのがデメリット。また、ご飯の乾燥・変色・ニオイを完全に防げるわけではない、という点には注意が必要です。

「保温・冷蔵・冷凍」で食べ比べ

ご飯を「保温・冷蔵・冷凍」で保存した場合、時間の経過とともに美味しさがどのように変化するか試してみました。実験に使用したお米は「山形県産つや姫」。炊飯器は、普通の保温機能しかない9千円ほどのリーズナブルな製品です。

それぞれ時間の経過ごとに、スタッフ6名が試食し「〇・△・×」で判定しています。 (保温はそのまま、冷蔵・冷凍は電子レンジで加熱してから試食)

【結論】3時間以内は「保温」、3時間以上は「冷凍」がおすすめ

結果は次の通りです。

3時間程度の「保温」であれば、おいしさに影響なく食べることができました。家族の帰宅時間が異なる夜ご飯などは、保温しておくのが便利です。

朝から昼、昼から晩のように「保温」する場合は、5~6時間経ってしまうので乾燥が進み、若干かたくなります。ただ、これくらいなら許容範囲だよ、という人ならOKだと思います。

ご飯を「保温」した場合

保温で3時間経過したご飯は、柔らかく粘りもあり、十分おいしいです。しかし6時間が経過すると、ツヤがなくなり、少々かたくなったと感じます。しゃもじを入れる感触でも違いがわかります。(ちなみに保温中の温度は約63℃でした)

9時間経過では、さらにかたさが気になり、炊き立てと比べあまり美味しくありません。12時間が経過すると、若干の黄ばみが出てきました。

メーカー説明書には「12時間以上は保温せず、ラップに包んで冷凍庫で保存し、電子レンジなどで温めてお召し上がりください」と記載がありますが、このまま続行。

24時間経過で保温機能は自動でOFFとなりました。異臭はないもののご飯の香りも感じられません。黄ばみはさらに進み、ボソボソ食感。なべ肌に触れているご飯はカッチカチに乾燥しています。

ご飯を「冷蔵」した場合

ご飯の「冷蔵」は一番おすすめできない方法です。

家庭用冷蔵庫の温度は2~6℃で、保存しているつもりが、むしろ「デンプンの老化(ろうか)」を速めていることになります。お寿司を冷蔵庫に入れていたら、美味しくなくなるのと同じです。

今回の実験でも冷蔵保存は、老化と乾燥が進み、3時間経過でイマイチという結果となりました。3時間程度ならそのまま保温するか、常温保存の方が良いです。

ご飯を冷凍した場合

炊き立てをすぐに「冷凍」しておけば、食べたいときに解凍して、3時間後でも24時間後でもほぼ変わらず、おいしく食べることができます。※保存期間は長くても「約1カ月」を目安に早めに食べましょう

ただし冷凍するにも小分けの手間があるので、3時間以内に食べるなら「保温」。3時間以上なら「冷凍」というのがベストではないでしょうか。あらかじめ多めに炊いて冷凍ご飯を作っておくと便利です。

保温は節電になる?

保温中の電気代は1時間当たり約0.38~0.51円です。※機種や電力料金によって異なります

炊飯1回あたり約4~6円なので、「保温10時間」と「炊飯1回」は同じくらいと覚えましょう。例えば、朝炊いたご飯を夜まで保温している人は、2回に分けて炊くことで毎回炊き立てを味わえて、なおかつ節電にもなるかもしれません。時間や手間がかかるので炊く回数は増やしたくないという人は、冷凍保存を上手に活用しましょう。

※本記事は、 (有)阿部ベイコクのwebコラムからの転載記事です。

画像提供:Adobe Stock

(有)阿部ベイコク

山形県庄内地方にある小さなお米屋「(有)阿部ベイコク」です。地元農家様との信頼、米屋ならではの精米技術を武器に、新鮮なお米を全国へ。県産ブランド米「つや姫・雪若丸・はえぬき」をはじめ、価格帯に合わせリーズナブルなオリジナルブレンド米も多数ラインナップ。米どころ山形から皆さまの食卓へ、美味しい笑顔をお届けします。

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