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コラム

30代女性「疲れているのに眠れない、朝早く目覚めてしまいます」熟睡を妨げる習慣って?

病院に行くほどではないけれど、なんだか感じる体の不調。薬剤師であり調理師、薬膳アドバイザーの資格も持つ道川佳苗さんと、中医学の視点で体を見つめ直し、健やかな暮らしをつくるための「食」を考えましょう。

このような質問をいただきました。36歳、女性からの質問です。

「疲れているのに、あまり眠れた気がしません。日中になるべく体を動すようにしているのですが、朝早く目覚めてしまい、眠れないことが多く疲労感が取れません。」

朝早く起きてしまう…熟睡できない原因は?

暑い季節が続く7月から、体や心が疲れやすく感じる方も多いかと思います。夜も暑さで寝苦しく、十分な睡眠をとれず早朝に目が覚めてしまうこともあるかもしれません。ただし、冷房を使用していても適切な温度調節が難しく、睡眠が浅くなることもあります。この季節は高温多湿の気候が続き、睡眠への影響が顕著に現れる時期です。

こうした状況を踏まえて、今回は暑い時期の不眠や疲労感を和らげるためのおすすめ食材やレシピをご紹介します。

暑い時期の不眠や疲労感…なぜ起こる?

中医学的には、以下の原因が考えられます。

1.冷房による冷えや冷たいものの食べ過ぎによる胃腸の弱り

胃腸が冷えることによって、その機能が低下し、胃もたれや食欲不振などが引き起こされます。胃腸の働きが低下すると、体内で必要な栄養素がうまく吸収されず、結果的に疲労感が増します。中医学の観点では、この状態は体のエネルギー不足を指す「気虚(ききょ)」と見なされます。エネルギーを補うためには、まず胃や腸を温めることが大切です。温かい飲み物を摂取したり、温かいスープやおかゆなどの温かい食事を取り入れましょう。

2.ストレスによる「肝」への負担、暑さによる「心」への負担

中医学では、「五臓」という概念があります。これは臓器とその働きを表すもので、中でも「心(しん)」は血液の循環を促進し、精神的な活動を管理する役割を担当しています。「肝(かん)」は精神の安定を助け、血液を貯蔵して体全体に栄養を供給する重要な役割があります。 特に夏の暑い時期は、「心」に負担がかかりやすいとされています。さらに、ストレスが加わると「肝」への負担も増えます。夏は暑さや湿気、気圧の変化などの気候変動が体にストレスをかけます。仕事や育児、介護などの日常的なストレスも加わることで、負担は一層増大します。 これらの季節的な変化と日常のストレスが重なると、「心」と「肝」に負担がかかり精神を安定させる血が不足して不安感、情緒不安定などを引き起こすことがあります。その結果、十分な質の高い睡眠が得られなくなる可能性があります。それが、「寝付きが悪い、朝早く起きてしまう」という症状を引き起こしているかもしれません。睡眠不足は体の回復を妨げ、疲労感を残す悪循環を引き起こします。

◯心が弱ると出やすい症状

動悸、焦燥感、精神不安、集中力の低下、不眠、情緒不安定など

◯肝が弱ると出やすい症状

神経過敏、イライラ、怒りやすい、頭痛、めまい、不眠、けいれん、眼精疲労など

暑い時期の不眠や疲労感の緩和におすすめの食材は?

まずは、冷房や冷たい飲食物によって冷えた胃腸を温め、その機能を活性化させることが重要です。温かい食べ物や飲み物を摂ることはもちろんのこと、さらに胃腸を元気にする食材を取り入れることがおすすめです。また、「心」や「肝」の働きを助ける食材や、ストレスや疲労で不足しがちな「血」を補う食材、そしてストレスを軽減し「気」の流れをスムーズにする食材も組み合わせて摂るようにしましょう。

▼胃腸を元気にする食材

鶏肉、きのこ、長芋(やまいも)、とうもろこし、かぼちゃ

▼心に良い食材(安神作用のある食材)

玄米、小麦、ローズマリー、なつめ、アーモンド、あさり、牡蠣、ほたて、卵など

▼肝に良い食材

トマト、レモン、お酢などの酸味のある食材

▼血を補う食材

さば、かつお、マグロ、しじみ、豚肉、牛肉などの動物性の食材

▼気の巡りを良くする食材

春菊、青梗菜、にらなどの青菜、紫蘇、ねぎなどの薬味類、グレープフルーツなどの柑橘類

クックパッドのおすすめレシピはこれ!

さば缶とねぎの和風パスタ

さばには胃の調子を整え、体力を増強し、血液循環を促進する効果があります。そして、香りの良いネギは気の流れを良くする作用があります。また、パスタの原料である小麦は精神を安定させてくれます。

鶏肉ときのこの酸辣湯スープ  

鶏肉ときのこを使って胃腸に優しく、心に良い食材であり血を補う卵を加えた、さっぱりとした味わいの酸辣湯スープです。お酢の酸味は肝臓の働きをサポートし、血や気の流れも促進してくれます。また、にらにも血や気の流れを助ける効果があり、疲労回復にも役立ちます。

トマトと卵の中華炒め

トマトと栄養豊富な卵を組み合わせた料理は、肝の働きをサポートし、心の働きを補うだけでなく、血を補う効果もあります。この組み合わせはストレスを軽減し、良い睡眠につながる助けとなるでしょう。さらにトマトは暑い時期に体にこもりがちな熱を冷ます作用があり、イライラを緩和する効果もあります。ただし、胃腸を冷やしすぎないように注意し、トマトを軽く炒めて摂るのがおすすめです。

暑さとストレス対策をしてぐっすり眠れる体へ

暑い日々が続く中、体力も気力も消耗しやすくなりますが、バランスの取れた食事でストレスや暑さに対処し、体調を保ちましょう。暑いからこそ、冷たい飲食物ばかりを摂取せず、胃腸を温めることにも気を配ることが大切です。 今回ご紹介した食材やレシピをぜひ取り入れて、心地よい睡眠を手に入れましょう。

体の「なんとなく不調」お悩み募集中

なんとなく感じる体の不調、もやもや。道川さんに相談してみませんか? こちらのフォームからあなたの声をお寄せください。

道川佳苗

薬剤師。調理師。薬膳アドバイザー。大学卒業後、薬局にて従事している時に、病気の予防、健康維持には食育が大切であると感じ、服部栄養専門学校に入学し卒業する。お料理好きの漢方マニア。

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