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コラム

お米、どのくらいでカビる?実験でわかった衝撃の変化 お米屋さんのカビ対策も紹介

お米のおいしさをキープする保存法や正しいお米の研ぎ方など、意外と知らない「お米のきほん」を、山形県の小さなお米屋さん(有)阿部ベイコクさんに教えていただきます。ちょっとした工夫や知恵で、いつものご飯をもっとおいしく。知って楽しいお米の情報を月に1回お届けします。

お米が変な色になってる!?これって食べられる?

結論から言うと、お米がピンクやオレンジ、青や緑、茶色や黒っぽく変色していたら、それはカビの可能性が高いので食べない方が良いです。お米はカビが生えやすい食べ物です。特に温度・湿度が上がる5月~10月ころはしっかりカビ対策する必要があります。この記事では「お米のカビ」について、山形県の小さなお米屋「阿部ベイコク」が詳しく解説します。

カビが増える条件3つ

カビが増殖する要因は「温度」「湿度」「栄養源」の3大条件が揃うときです。
温度:20~30℃が最適(0~60℃で生育するカビもいる)
湿度:70%以上(80%以上で活発に繁殖する)
栄養源:お米の栄養分

上記3つのうち、お米の栄養分を無くすることはできないので、カビの発生を抑えるには温度・湿度を管理して3大条件が揃わない環境を作ることが大切です。

カビが増えやすい時期

下のグラフは、東京都の平均最高気温と平均湿度になります。地域によって誤差はありますが、梅雨入りする6月から台風シーズンの9月までは、3大条件が揃うためカビが発生しやすくなります。 また、留守中の密閉された屋内は、外の気温以上に上がりやすく、湿気もたまりやすい環境となります。普段、お米を置いている「保管場所の温度・湿度」にも注意が必要です。

カビが生えたお米の見分け方

カビたお米は、普段のお米とは違った特徴が出ます。
見た目:白色や緑色、茶色など異なる色の斑点や粉状に変色する
におい:腐ったようなにおい、酸っぱいにおいがする
手触り:普段よりしっとりしている、お米の表面が粉っぽい

多くのカビは、エサとなるお米に菌糸を伸ばし栄養分を吸収し、十分に生育すると胞子を作って繁殖します。胞子には青・黒・緑・赤など様々な色があるので、胞子をたくさんつけたカビであれば肉眼で見つけることができます。

また、生米や炊き上がりにカビ臭がしたり、お米の手触りが普段のサラサラ感とは違ったり、お米のとぎ汁が黒や茶色に濁るときも、カビが発生している可能性が高いです。ただし、菌糸は白色や無色の場合が多いので、菌糸を伸ばしている段階(胞子を作る前)ではカビを見つけることは難しいです。

どれくらいでお米にカビが生えるか実験

実際にお米にカビが生えるとどうなるのか?実験してみます。

1日目:スプーン1杯の水を加える

お米を少量いれたお茶碗を2つ用意します。 右側のお茶碗にのみ、スプーン1杯分の水を加えます。 底面に水が溜まっています。 米袋での保管を想定して、ラップをかぶせておきます。

2日目:濡れたお米がかたまりになっている

今日は湿度80%超えのカビが生えやすい環境です。 水分を吸ったお米がかたまりになっています。

3日目:変化なし

本日も絶好の温度&湿度ですが、大きな変化はなし。

4日目:変化なし

ひさしぶりの快晴で、温度高め、湿度低め。お米は変化なしです。

5日目:変化なし

雨でジメジメ、お米は変化なし。

6日目:変化なし

今日も湿度がスゴイ、お米は変化なし。

7日目:ついにカビ発見!

左は変化なし。右もぱっと見、変化なさそうですが…よく見ると! 黒色のカビ発見。 オレンジ色っぽいカビ発見。

12日目:カビ大繁殖

しばらく放置していたらこんな状態に。 変色したお米。

カビが生えたお米は食べられない

お米を洗えば、カビは落ちたように見えますが、目には見えないカビや、内部に入り込んだカビは完全に取り除くことはできません。

さらに、カビの仲間には有害な「カビ毒」を作るものがいます。カビ毒は加熱調理の温度では分解することがなく、ごくわずかでも長いあいだ何度もカビ毒をとり続けると、人の健康に悪影響を及ぼす可能性があることがわかっています。

お米に生えるすべてのカビがカビ毒を作るわけではありませんが、日本にも発がん性のあるアフラトキシンを作るカビが環境中にいることが確認されています。

そのため、カビが生えてしまったお米は食べずに捨てましょう。また、カビたお米と一緒に保管していたお米も、菌糸や胞子が付着していることがあるので、もったいないですが食べない方が良いです。

農林水産省のホームページでもカビ毒に関する情報が公開されています。ご参考ください。

お米のカビ予防3つの対策

お米をカビから守るには、高温多湿を避けることが効果的です。次の3つを実践してみてください。
(1)冷蔵庫の野菜室で保存する
(2)密閉容器に移し替える
(3)できるだけ早く食べきる

(1)冷蔵庫の野菜室で保存する お米の保存に適した場所は「風通しの良い冷暗所」になります。冷暗所とは「温度が低く(1~15℃くらい)、一定に保たれた場所」のことを指します。さらに、湿気がこもらない風通しが良いことも条件になります。

しかし「一般的な住宅で、夏場でも15℃以下に保たれた場所なんてないでしょ!」と思います。

その場合は、冷蔵庫の野菜室で保存しましょう。冷蔵庫内は気温室温に左右されず、一定の低温で湿度も低く保つことができるので、お米保存に適切な環境です。

NGな保存場所

反対に、お米の保存場所としておすすめできない場所は下記になります。
シンク下:非常に湿気がたまりやすい場所
冷蔵庫・電子レンジ・ガスコンロなどのそば:電化製品や調理器部の放熱が影響する場所
床下収納・食器棚・押し入れなど:通気性が悪く、湿気がたまりやすい、結露もしやすい場所

お米にカビや虫が発生した経験をお持ちの人は、高温多湿になる場所になっていないか保存環境を確認してみてください。

(2)密閉容器に移し替える(米袋のまま保存はNG) 「未開封だから大丈夫!」という人も少なくないですが、お米袋には空気穴が空いているので、湿気も水分も通します。ジップロックのような保存袋や、キレイに洗浄してしっかり乾かしたペットボトルにお米を詰め替えて冷蔵庫で保存しましょう。カビ・湿気・虫の侵入を防げて、収納や使い勝手も良いです。

(3)できるだけ早く食べきる お米は生鮮食品なので長期保存に向きません。「夏は2~3週間、冬は2か月以内」を目安に食べきれる量を購入してください。また、お米を詰め替えたり、計量するときなどは、絶対に濡れた手でお米を触らないようにしましょう。

これはカビじゃないよ

一部、もしくは全部が白く濁ったお米

「シラタ、粉状質米、乳白粒、白未熟粒」などと呼ばれ、稲の段階で十分に成長できなかった未熟なお米です。デンプンが十分に蓄積できず、お米の中に空気が多く入ってしまい、光が乱反射して白く見えます。

「お米は古くなると白くなる」と思われがちですが、そうではありません。保存環境が悪くて白くなったわけでもありません。シラタは収穫した段階で白いです。

通常のお米と同じようにそのまま炊いて食べて大丈夫です。格安で売られているブレンド米などには、シラタが多めに含まれる場合がありますが、もちろん食べて大丈夫です。少し柔らかく炊き上がるので水量を少なめに調整しましょう。

一部が黒く変色しているお米

「斑点米」と呼ばれ、稲の生育中にカメムシなどの虫が食べたあとが黒くなります。一般的に食べても害はないとされていますが、気がついたら取り除きましょう。

黒色っぽいもの

植物の種や実です。風などで飛ばされ水田に入り、玄米に混じることがあります。精米工程で異物は除去されるので、製品に混じることは非常に稀です。気がついたら取り除きましょう。

茶色っぽいの謎のかたまり

お米を精米するさいに生じた粉末状の米ヌカが製造ライン内に付着し、蓄積するとかたまり(ヌカ玉)となることがございます。
ヌカ玉:米ヌカが固まったもの。主に茶色の塊、つぶしてみると粉っぽく崩れやすい。

精米工程には、石抜き機・色彩選別機・金属検出機などの異物除去装置がありますが、稀にポロリと崩れた「ヌカ玉」が製品に混入してしまうことあります。ヌカ玉はお米由来の成分ですので健康への影響は一切ありません。発見したら取り除きましょう。

「コメ虫」「臭い移り」にも注意

お米にカビが生える原因は「高温・多湿」でした。じつはこれ、コメ虫が発生する環境でもあります。

野菜に虫がつくのと同じように、お米にも虫がつきます。「虫がつく=美味しく安全なお米」とも言えますが、気分が良いものではありませんよね。

また、お米はニオイを吸収しやすい食品でもあります。他の食品のニオイ、洗剤のニオイ、灯油や下駄箱のニオイ…、強いニオイの近くにお米を保管していて、お米にニオイが移ってしまった事例も少なくありません。

お米は「高温・多湿・ニオイ」を避けて、おいしい保存を目指しましょう。

※本記事は、 (有)阿部ベイコクのwebコラムからの転載記事です。

画像提供:Adobe Stock

(有)阿部ベイコク

山形県庄内地方にある小さなお米屋「(有)阿部ベイコク」です。地元農家様との信頼、米屋ならではの精米技術を武器に、新鮮なお米を全国へ。県産ブランド米「つや姫・雪若丸・はえぬき」をはじめ、価格帯に合わせリーズナブルなオリジナルブレンド米も多数ラインナップ。米どころ山形から皆さまの食卓へ、美味しい笑顔をお届けします。

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